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思い出のカルピスゼリー

元気をもらったあの食事、というテーマを見た時、ふと昔食べたカルピスゼリーのことを思いだした。
遠方に住んでいるおばあちゃんが作ってくれた、濃くてゼラチンが多めの固いカルピスゼリー。材料はカルピスとゼラチンだけなのだろうけど、とてもおいしかったことを覚えている。

おばあちゃんは私が小学生の頃に熱中症で亡くなった。
だから今はもうそのカルピスゼリーを食べる機会はない。
私の母が再現してくれようとしたが、あの味にはならなかった。
おばあちゃんの死は突然だったので、母や母の姉は色々なレシピを聞かずじまいになってしまったそう。あのカリカリとしたきんぴらごぼうも、柔らかくてハムがたくさん入っている冷やし中華、切り餅を焼いて納豆をかけた納豆お餅も、きっとそんなこだわりがあったわけではないと思うが、もうあの時の味は再現できない。

カルピスゼリーは私の母も、従兄弟もみんなが好きだった。
おばあちゃんが亡くなった時期は真夏の暑い日で、亡くなってから数日たっていたが冷蔵庫内にいくつか残っていた。きっと私たちに食べさせようとしてくれたんだと思う。時間は経ってしまったが、最後のゼリーも変わらず美味しかったのを覚えている。

私はおばあちゃんの最期の「行ってくるか」と言う声を聞いた。ちょうど昼寝している時だった。
その時、私もついて行こうと思ったけど、眠気に負けてしまい、2度寝をしてしまった。起きたのは、おじいちゃんが救急隊員を「こっちだ!」と呼んでいる時だった。
あの時、大人たちはみんな病院へ向かった。私や妹、従姉妹の妹は近所の家で一晩過ごした。おばあちゃんの様子を見に病院に行きたかったのを覚えている。近所の人は、私たちのために周りに味噌を塗ったおにぎりを作ってくれた。これも従姉妹の家に行くと良く食べていたもので、友人に言うとびっくりされるが、今でも時々自分で作って食べることもある。

結局、おばあちゃんは意識が戻らぬまま帰らぬ人になったが、私はあの時の食事のことは色々覚えている。
火葬中に食べたおつまみのココアピーナッツを初めてたべたこと。
葬儀の後に食べたオートブルのエビフライを妹たちにあげようとしたら、親戚のおばさんに全て取られてしまったこと。
お寿司が出ると聞いて出て来たのが巻き寿司と稲荷ずしでがっかりしたこと。(不謹慎と思うかもしれないが、小学生だったので許して欲しい)
オートブルのエビフライやお寿司のことは、今では家族や親戚の中で笑い話になっている。

今こうやって文章を書いていると、色々な食べ物の思い出がよみがえってくる。遊びに行くたびに外で食べた焼肉もおいしかった。
おばあちゃんが亡くなった時は悲しくて悲しくて仕方なかったが、一つひとつの食事で確かに元気をもらっていた。おばあちゃんの作ってくれた料理は最高だった。
何度も言うが、その中でも一番好きだったのがカルピスゼリーだった。今でもまたあの味を食べたいと思うことがある。
おばあちゃんのあの味の再現はもうできないが、それでいいのかもしれない。私もきっと母にレシピを教えてもらっても、同じように再現できないと思う。
だから、自分も誰かを元気づけられるような、そんな思い出になる食事が作れたらいいなと思う。


#元気をもらったあの食事

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