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5月の読書記録(とラジオの話)

現実逃避のため、とにかく知識かじり虫になっていた5月。頭の中を言葉や思想でいっぱいに埋め尽くしたひと月に。

成瀬は天下を取りにいく/宮島未奈

久しぶりに実家に泊まりに行くと、父が珍しくじっと本を読んでいた。聞くと、母から「本屋大賞をとった本、前に読んだから家にあるよ」と言われ借りたらしい。翌日、読み終わったらしい父が「ねえねえ、2巻があるらしいよ。2巻があるらしいよ。」と仕切りに言うので、一緒に本屋へ行って2巻を買ってあげた。そして1巻と交換してもらった。家に帰って机の上に置いておくと、いつも難しい本とばかり格闘しているパートナーが珍しく手に取っていた。「寝ないの?」「うーん、寝るけどね」と寝る前も読んでいて、その日は読書灯が消える前に私が先に眠ってしまった。そうしてようやく成瀬は私の手元にやってきた。成瀬に出会うということは、こういう小さなつながりをなんとなく書き残しておこうかな、と思ってしまう、そういうことなのかもしれないなあ、と思うのだった。

この世の喜びよ/井戸川射子

毎日なんとなく目をそらしているところを、あぶり出していくような一冊。目に見える大きな悲劇じゃない、小さいけど人に言ったりはしない、心の奥にあるきれいじゃない気持ちというのかな…。日常の暗い部分を諦めずに、人生に飽きずに生きていくことは難しいけど、大事だなと思う。井戸川さんは初めて読んだけれど、論理的で現実的な鋭い視点をもちながら、詩を紡いでいくような人で、ロジカル思考好きとして嬉しい出会いだった。他の作品も読んでみたい。

日本近代小説史/安藤宏

そういえば、家中が本だらけの状態で、そもそも私は文学系の出身じゃないか。それなのに全く近代文学史を理解していないのはまずいのでは?と危機感をいだき、ちょっとずつ勉強を始めてみることに。安藤先生が実際に大学で授業していた内容をまとめた著書になっていて、授業を受けている気分。
たまたまポッドキャストでコテンラジオを聞いていて(※後述)、「流れや文脈で理解すると面白いな!?覚えられるかも?!」という感覚があったので、時代/人物/著者を流れで抑えながらエピソードで深堀していく、というやり方をしてみることに。自分に合うやり方から考える大人の勉強、面白い。(とぎれとぎれでもOK、ゆるくやるのが目標。)

(ラジオの話)コテンラジオ

衣替えをしている最中、何かラジオを聞きたくてポットキャストの1位をぽち。そうして偶然出会ったラジオ番組「コテンラジオ」。お、面白い…!

縦軸になりがちな歴史を横(流れ)でつないで、「テーマ」ごとに視点を変えて編んでいく手法も面白いし、トーク形式(しかもトークといえどある程度整理されている!)も分かりやすい。先月のヒロアカ読破がきっかけで「民主主義」と「資本主義」にゆるい興味があったので「民主主義の歴史」と「資本主義」は特に夢中になって聞いてしまった。

メタ認知とは、異なる価値観を知り、異なるレンズで自分自身や社会を見つめ直すこと。一つの価値観に縛られて悩んでいる人が、全く違う価値観に触れて戸惑っている人が、メタ認知をすることで、気づき、変わる、かもしれない。

https://coten.co.jp/philosophy/より

コテンラジオさんが大事にしている「メタ認知」の考え方。「異なるレンズを持つ」は私が本を読んだりする動機、いろんな考え方が知りたいなという気持ちとすごくリンクするな~と感じて嬉しかった。これからの新作も、山ほどあるアーカイブをたどるのも楽しみである。


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