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あなたのコンプレックスはどこから?私は性格の悪い美女に出会った所から。

以前勤めていた職場にて。

「今度新しい人が入ります。女性の方です。このフロアには女性が少ないので、仲良くしてあげてください。」

上司からそう告げられた。

今思えば「いい大人なんだし男女関係なくぶつかり合い無く過ごすよう努力すべきなのに、何故同性だからって仲良くする事を強要されるんだ」とかうがった考えも過ぎるが

まぁ、何も考えていなかった当時の私は素直に仲良くなろうと努めようとした。

新入社員の彼女こそが、私に大きなトラウマを作らせる地雷女だとは、まだ知らない。

昼食時

普段は仲良くしていた先輩女性と共に食堂で昼食を取っていた私。

もしかしたら先輩も、上司から私と仲良くするよう言われていたのかもしれない。

そこに、新入社員の彼女も同じ卓で食べる事になった。

以下、新入社員の彼女の事はSと呼ぶ。

Sに対する初対面の印象は、「美人」の一言だった。

AKBや乃木坂にいそうな大きなネコ目に困り眉、
ショートカットだったのがより顔の美しさを際立たせていた。

スタイルも良く、ノースリーブのシャツに細身のスキニーパンツという体のラインを強調しまくる格好で出社していた。

果たして露出も多いこの格好が
オフィスカジュアルとして認めて良いのか疑問に思ったが
誰も注意する人は居なかったらしい。

入社初日にも関わらず、エラく攻めたこの服装には理由があった。


「私、前職ではアパレル店員だったんです。」

自己紹介でこう告げた彼女は、価格帯5~6桁の元アパレルショップ勤めだった。

その時着ていた服も、アパレル店員時代に自店舗で購入した服だと言う。

「私、価格が4ケタの服って今まで買ったことないので
この転職を機に低価格帯のブランドの服にも挑戦したいと思ってるんです!」

全身を価格帯5000円以下の衣服でかためていた私は、住む世界が違いすぎて圧倒された。

それと同時に、若干の不快感に近い違和感を覚えた。

元接客業という派閥から漏れた私

一緒に昼食を取る回数を重ねる度に、最初に感じた違和感は不快感だと確信し、さらにその感情は大きくなっていった。

接客業出身だった先輩とSは接客業トークで盛り上がることが多かった。

接客業を経験してなかった私はもちろん、蚊帳の外だ。

話に入っていけない事を暗に示そうものなら
「まぁ接客業経験してないと分からないこと多いから。ですよね、先輩?」
と、話題を変えることすらSに阻まれる。

内容は過去に対応した客への愚痴だったり、バックヤードでのあるある等
専門用語多く使われていたり、当事者じゃないと内容がさっぱり分からないことが多く

全く話題に入れない私は昼食の時間が苦痛だった。

「だったら1人で食べたら良いのでは?」

と思う方も居るかもしれないが

1人で食べる文化が無かった当時の社内で
ひっそりデスクで昼食を取るのは浮いてしまうのでそれも避けたかった。

しかし

「接客業出身の方だと気が使えていいですよね。私接客業経験してない人と仲良くなれる気がしない。」

と、私が接客業未経験だと知っている癖に何のデリカシーも無く言ってくるSの前で食べる食事程不味いものは無かった。

「接客業経験していても、あなたは私に対して一切気が使えていないですよ。それでも本当に接客業経験してたんですか?」とでも言える位強いメンタルが欲しかった。

美女Sの姉

ある日、一緒に食べていた先輩が有給で休みだったので
Sと2人で昼食を取る事になった。

流石にSも接客業あるあるを私と一体一で語るのは不毛だと分かっていたようで

自分の身の上話をしてきた。

どうやらSには歳の近い姉が居るらしい。

姉は自分の事をやたら心配してくるが、その態度がウザイから仲が悪いとの事らしい。

長女である私は、Sよりもそのお姉さんに同情してしまった。

Sはそう言いながら1枚の写真を見せてきた。

「こっちがお姉ちゃんでこっちが私なんだけど、全然お姉ちゃん可愛く無いでしょ?」

確かにSと並ぶと劣って見えてしまうかもしれないが、そこまで言う程散らかった顔面ではなかった。

「私とも似てないし、ウザくて可愛くもないから隣に並ばないで欲しいと思ってる。」

元々思っていたが、「この人はどうしようも無いくらい性格が悪い」と確信した。

Sのお姉さんのような人が報われる世の中であって欲しい。

フロア内で噂になる程の美女は誰も放っておかない


「フロア内に最近美女が入った」

と、社内の男性陣も注目していたようで

下は20代、上は50代まで
どの未婚男性もSに近付きたくて仕方が無かったらしい。

頻繁に飲み会に誘おうとしたがSは「面倒臭いから」という理由で断っていた。

そこで痺れを切らした男性陣に「Sが飲み会に参加してくれないからずみほさんから誘ってくれ」
という頼み事をされる事が増えた。

どうして顔面しか見ていない男性陣の為に
私が動かなければならないのかと不満だったが
社内の人間関係を円滑にしたかった私はその役を買って出てしまった。


嫌々ながらもSに参加するよう頼んだ所

40・50代男性から誘われるのが嫌だったらしく、30代までにメンバーを絞ってくれたら参加しても良いとの事だった。

確かに、20代半ばの彼女からしたらほぼ親父と同じ年齢の社員から誘われるのが怖かったのもわかる気がする。

この事を若手社員の1人に伝えた所、普段の仕事の処理速度では考えられない程手際よく飲み会の日取りが決められた。

「やれば出来る集団」という言葉が脳裏を過ったのと同時に、この事案の処理速度に引いた。

当時、私は社内に彼氏が居たので
引いた旨を伝えたら「まぁ、皆楽しみにしてるしいいんじゃない?」となだめられてしまった。

飲み会代金の顔面格差

飲み会の案内が社内メールにて私にも回って来た。

「Sの参加確率を少しでも上げるためにもずみほさんは参加して欲しい」と頼まれていたので、嫌々だったが参加するつもりでいた。

送り先を見ると、未婚男性陣、S、私。

既婚者である上司の名前はもちろん無い。

上司抜きの完全プライベート飲み会の案内を社内メールで行って良いものなのか些か疑問だったが

まぁ主催がバレた時に怒られるだけだと思うのでそこには触れないでおいた。

しかし、そのメールは私の社会人生活最大級のトラウマとなる。


件名:Sさん歓迎会
本文:○月○日 仕事終わり
○○駅近くの飲み屋で遅ればせながらもSさん歓迎会を行います。
料金…Sさん 無料、その他の参加者5000円~6000円
Sさんの料金を他の参加者で折半するので、当日の参加人数によって値段が変動します。1人の負担が減るよう皆さん参加してください!


ツッコミどころが多すぎるので一つ一つ整理していく。

まず、Sの分の飲み代を折半するなんて話

私は聞いてない。

文面にもある通り、Sが入社して半年は経つ。
歓迎会なんて今更すぎるにも程がある。


こんなの、Sをタダにして参加確率を上げるためだけの手法ではないか。

それに、「参加して欲しい」と頼まれている私がどうしてSの分まで折半する事になっているのか。

歓迎会を行う文化がある社風と言うなら分かるが

私が入った時に歓迎会を開いてもらった記憶は無い。

それなのにSにだけタダ酒を奢るなんて、都合が良すぎないか?


煮え切らない思いの丈を、当時の彼氏に再度愚痴る。

すると、この返答だ。

まぁ、Sさん美人だから仕方ないよね。オレも飲み会楽しみにしてるよ。


信じられなかった。

自分の彼女の前で他の女性を美人と言う事。

そして、私が扱いの差に悩んでいるという事を全く考慮しないこの態度に。


本当は、「それは酷い、主催に申し立ててくる」のという怒りの一言だったり
一緒に飲み会不参加を表明して欲しかったが
何も考えていないのんきな彼にそこまで期待するのは間違っていたらしい。

彼は飲み会に参加していたが、私は飲み会不参加を表明した。

その後2週間、彼とは口を聞かなかった。

次の恋人は、こういった事が起きた時に私に寄り添って対応してくれる人であって欲しい。

恋人ができるかも分からないけど。

社外の友人に愚痴りもした

この件にて自分で自分が余りにもいたたまれなく、惨めに感じた私は
社外の友人に事のあらましを説明し
どう感じたのかを聞いた。

やはり、彼女の容姿関係なく
私からの視点からのみ見ると

「それは酷い会社」
「可哀想」
「相手が10割悪い」

と同情してくれた。
愚痴った時に一緒に怒りを露わにしてくれる友人の存在は本当に有り難く
この言葉に当時は大変救われた。


しかし、それまた別の美人の友達Aに相談したところ

「そうなんだぁ…。私は飲み会代金自分だけ払わされる目に会ったことなんてないから
余程特殊な会社なんじゃない?


本人は思った事を思った通り言っただけだろう。

しかし、「美人のAが同じ目に遭ったことが無い」という事実は、私の心をグリグリと抉った。

と、同時に私がこんな思いをしてその言葉を聞いている事すら気が付かない程恵まれているAを羨ましくも思った。

己の経験則だけで他者に意見する事は、相手を傷付ける事になりかねない。

自分も気を付けていきたい。

Sから絶縁を申し出される

私、あなたみたいな接客業経験してない気が使えない人と一緒にお昼食べるの苦痛だから
今度から食堂来ないでもらえる?

もうあなたとは縁を切りたいの。

ある日突然Sからこう申し立てをされた。

確かに、私には分からない接客業の話ばかりをしていて私も苦痛だったので
相手から来ないで欲しいと言われたら「分かりました」以外の返答は無かったが

どうしてこうも彼女は上から目線なのだろうか?

接客業やっていたからといって何が偉いんだろうか。

そんなに接客業経験で気遣いが売りだと言うのなら、私に対する気遣いも見せて欲しい。


助けを求める為に、一緒に昼食を食べていた先輩に一部始終を話したが

まぁ、あの子は美人だし仕方が無いよ

と、また相も変わらず美人だから許される理論を展開してきた。

私はSより容姿が劣っているから、美人な彼女に何を言われても耐えなければならないのか?

もう筋道の通っていない理論は沢山だ。

その日から、私は1人で昼食を食べるようになった。

ヒートアップする美女


私って芸能人だとAKBの○○とか乃木坂の○○に似てるとか言われるけど、あなたって何の芸能人にも似てないよね

昼食を1人で食べるようになった後
Sからから突然、すれ違いざまに言われた言葉だ。

私と縁を切りたかったんじゃないのか。

その発言を仕事中にする必要はあったのか。

意味が分からない。

行動の意図が読めなすぎる。

「何故そんな事言うのか」「もう話しかけないで欲しい」「傷付いた」


と、自分の意思をその場で表明出来れば良かったが

突然仕掛けられた攻撃に反射的に対応出来るはずも無く

何も言えずに固まることしか出来なかった。

私の訴えは顔面格差によって届かない

気にしなければ良いと言えばそれまでだが

人生のあらゆる節目において既に自分の顔面に対するコンプレックスに満ちていた私は

美女からの攻撃は精神的にキツかった。

だが、私の味方は社内にはいない。

「Sからこんな事を言われて傷付いている」
という話を仲の良い男性社員に言おうものなら

あの子は美人だから仕方が無いよ。
彼女はそういう子だからあなたが我慢した方がいいと思うよ。
あなたの方も何か非があったんじゃないの?

Sから言われた言葉よりも傷付く、美人擁護。

美人だからって自分よりも顔が整っていない人になら何を言っても許されるのか?
そういう子って何?
私の非は具体的に何?

仕舞いにはこう言ってくる人も居た。

そんな事よりまた飲み会にSさん連れてきてよ。じゃないと盛り上がらないから。

この状況で彼女を飲み会に誘えると思われる神経がどうかしていると思う。

美人は性格が良い?

こんな性格の悪い美女と出会ってしまった私は

それ以降、顔立ちの整った人が近付いて来た時には自然と警戒するようになってしまった。

もちろん、顔立ちに関わらず性格の良い人も居れば悪い人も居る。

気の合う人も居ればそうでない人も居る。

冷静に考えたらSの事例はサンプル数1でしかない。


しかし、彼女から受けたトラウマは私の心の奥底で根を張って絡みついており事ある事に思い起させる。

また、Sだけに関わらず
私が苦しんでいる時に助けてくれる所か「美人だから仕方が無い」と、理屈の通っていない理論を展開して私の悩みに同情さえしてくれなかった人達の存在はトラウマにはなってしまったが

同時に
「自分が同じような訴えを受けた時は、その人の容姿に惑わされずに判断する」という教訓を得た。

この文面を書いたことで少しでもこのトラウマが供養できる事を願う。


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