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”創りもの””幻想”が構築する世界                ~宝塚歌劇の男役について~

宝塚歌劇の男役が好きだ。いや、男役が好きというより、男役が演じる男性像が好きだ。理由はと言われたら、とりあえず言っとく。
「かっこいいから」と…。
ただ、大学生になって中学生、高校生の時よりも宝塚歌劇ばかりの生活になり、気付いたことがある。
宝塚歌劇の男役が演じる「男性」は、完全な幻想の存在であって、歌劇団もまた、その幻想性を最大限に生かして作品を制作・上演しているということだ。
宝塚歌劇の男役が演じる「男性」は完全な幻想で、創りものである。
今まではそこまでそのことを意識せずに宝塚歌劇を観てきたが、いったんそのことに気付くと、宝塚歌劇の舞台が以前よりもますます興味深いものに感じられてきた。
宝塚をBlu-rayやDVD、または実際に観劇をしに行った際、宝塚歌劇の舞台に登場する男、つまり男役が演じる男性に、私はめちゃくちゃときめく。
めっちゃかっこいいー!好きー!きゃあああー!を心の中で繰り返す。
恋に落ちたような感覚と似ていて、ひたすらキュンキュンしている。
宝塚を観終わって、夢から醒めた余韻に浸っていると、次はスカイステージ(宝塚歌劇に関する番組、公演を365日放送している)でナウオンステージ(公演の出演者によるトーク番組)が観てみたくなり、観る。
もしくは、その公演の出演者たちの素顔が気になって、グーグルでその人たちの芸名をひたすら検索にかける。(ググる)
私は、この瞬間がとてつもなく好きなのだ。
さっきまで私の胸を打ち、ときめかせ、夢中にさせ、キュンキュンさせ、恋に落ちたような感覚にした、舞台上の最高にかっこいいあの男性…は、居ない。どこにも居ない。
ただただ、髪を綺麗にショートカットに整えた、色の白い、浮世離れするほど美しい女性が、目の前の画面の中に、にこやかに佇むだけである。
先ほどの男の人さながらの声色はどこかに消え、柔らかな女性の声がする。
笑顔はとっても可愛くて、先ほどの舞台上の男性が浮かべていた笑みとは違って、赤ちゃんのように愛くるしい笑顔を浮かべている。
そのあまりの美しさと可愛らしさに、こんな綺麗なお姉さんいるのー!?と思いながら、私はあのかっこいい男性が、この女性の魅せた幻想であり、完全な創りものであったことを知る。幻想であって創りものである男性の姿を私に魅せて、私を虜にする人。それが、宝塚歌劇の男役、である。
宝塚歌劇の舞台に登場する男性が、幻想であり創りものであるということ、それを思い知らされる瞬間が、私はとてつもなく好きなのだ。
たまに、男役さんがあまりにも女性らしい一面を見ると幻滅してしまうという方もいらっしゃるそうだが、私は逆だ。
その男役さんがあまり私たちと変わらない(もちろん容姿などは別として)、普通の女性なのだと感じれば感じるほど、その男役さんが演じる男の幻想性と、神秘性は増す。「宝塚歌劇の舞台に出てくる男性」の魅力に、ますます取りつかれる。
幻想であればあるほど、創りものであればあるほど、その巧妙さと芸の深さ斐に感銘を受ける。胸が打たれる。タカラジェンヌたちの凄まじい努力と、芸にかける思いはあまりにも真っすぐで純粋であることが伝わってくる。
自分の中で、男役という稀有な芸術に対する愛情は増す一方だ。
生まれ変わっても、どうか宝塚歌劇が存在していている世界線で、そのうえ、宝塚歌劇が大好きな人間でいたい、と私は最近思う。
もしも生まれ変わるとして、もっとお金持ちの家に生まれて才能にも恵まれて、そのうえ美人に生まれるけど、宝塚歌劇に興味もなく、熱中できるものが何一つない人生を生きるか、今と同レベルの経済状況と才能と容姿で、宝塚歌劇が大好きな人間としての人生を生きるかと言われたら、私は絶対に後者を選ぶ。
それほど、宝塚歌劇が大好きな人間として生きるのは毎日が楽しい。
存在するはずもない幻想の男に心をときめかせながら、チケット争奪戦に喜怒哀楽がせわしく、集合日(退団者が発表される日)には落ち着かず、意味深なタイトルの公演タイトルが発表されたらトップスターの退団を感じて涙目になる、そんな日々は本当に愛おしい。
大げさかもしれないが、自分がとても人間としての生活を満喫していることが分かって、この世に生まれてきて、それなりに現世を楽しんでいるという実感が湧いてくる。生きる力が湧いてくる…。
どうかどうか、宝塚歌劇200周年まで生きられますように。
そして、死んでしまって生まれ変わっても、宝塚歌劇が大好きな人間になれますように。
他に沢山は望まないから、せめてこれだけは叶えてほしいものである。
(いや待った、月城かなとさんと海乃美月さんの退団公演が沢山観れますように!特別な20歳の誕生日に、宝塚歌劇が、しかも大好きな月城さんと海乃さんの退団公演が観れますように…!お願いします)




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