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”地域 × eスポーツを科学する” file02:群馬県eスポーツ連合 倉林亜希子さん

今回は、群馬県eスポーツ連合(gespo)常務理事兼事務局長の倉林亜希子さんにインタビューをさせていただきました。群馬県は県庁に「eスポーツ・新コンテンツ創出課」があり、eスポーツの番組を配信したりと行政が積極的にeスポーツを推進している県でもあります。

一方、群馬県eスポーツ連合(通称:gespo)では、ファミリーも楽しめるLANパーティ「LANらん♪群馬」やコミュニティ大会のサポートなどを中心に、ゲーマーに寄り添った活動を行っています。

2児の母でもある倉林さんは「ゲーミングおかん」と呼ばれていて、母親目線でeスポーツとも向き合っていらっしゃいます。世間から「ゲームは良くない」という見られ方がある一方で、eスポーツを通じた子どもたちの可能性を信じ、活動をされています。

そんな倉林さんに、子どもたちが胸を張ってeスポーツができる環境づくりをどのように行っているのかをお聞きし、地域に普及するヒントを探っていきたいと思います。

倉林亜希子さんのプロフィール

倉林 note

写真の右が倉林さん。左は、事務局のパートナーである専務理事の平井さん。倉林さんはクラロワ、シャドウバース、パズドラ、パズルゲームなど家事の合間でも楽しめるスマホゲームにハマっているそう。


各々がゲームを楽しむ自由な世界を群馬にも

---群馬県eスポーツ連合では、どのような取り組みをしていますか?

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県内にeスポーツを根付かせることを目的として活動をしていて、まず初めに取り組んだことが「LANらん♪群馬」というLANパーティのイベントでした。もともと私たちはeスポーツ業界については素人だったので、発足した1年目は全国のeスポーツにまつわる大会や施設を視察することにしたんです。

初めて視察にいったイベントが2019年5月の「C4LAN 2019 SPRING」で、その時にゲーマー各々が自由に楽しむ姿やイベントの世界観に感動したことを覚えています。こんな世界観をいつか群馬でもやりたいなぁと思っていたところ、C4LANの小林さんに「群馬でもやってみたら」と言っていただき、「LANらん♪群馬」を開催することにしました。

でも当時、組織が立ち上がったばかりということもあり、すぐにはできないだろうと思い活動を続けていました。すると同じ年の冬、「C4LAN 2019 WINTER」の最終日に次回開催の会場が群馬県である発表があったり、仲良くなった群馬県のゲーマーの方たちと「忘年会をやりたいね」なんて話をして、未成年の子もいるから「お酒じゃなくてゲームを持ち寄って遊ぼうよ」となったことがきっかけで、「LANらん♪群馬」を開催することになったんです。

「LANらん♪群馬」の特徴は、駅前にあるガラス張りで吹き抜けになった建物など、開放的な場所で開催していることです。2世代3世代でも気軽に楽しめるよう敷居を下げていて、実際に親子で楽しんでいただいています。

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コミュニティと共にeスポーツシーンを創る

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私たちが活動していくうえで大切にしていることが、コミュニティとのつながりです。私たち自身がコアなゲーマーではないので、コミュニティの人たちに実際に会いに行ってお話させていただくことを丹念に取り組んでいます。

各ゲームタイトルによって、それぞれ悩みや困りごとって違ってくるじゃないですか。それらをヒアリングして、解決してあげられるようなサポートを行っていきたいと考えています。そうして取り入れた意見などを元に、開催しているのがコミュニティ大会の「gespo杯」です。

告知や配信に使用する画像やゲームの使用許諾などは私たちがサポートし、そのほかの企画運営や配信、実況などはプレイヤーたちが中心に行っています。運営費用はgespoの賛助会員からの会費でまかなっていて、配信画面に社名ロゴを掲載したり、会員企業の商品を大会賞品にしてPRしたりと、賛助会員にもメリットのあるような仕組みで取り組んでいます。群馬県の特産品なんかを賞品にすると、地域のPRにもなりますしね。

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「群馬県のゲーマーを地元の企業が応援する」。

この形がeスポーツを群馬に根付かせるための理想形だと考えていて、今後も企業や自治体に協力を呼びかけながら、群馬にeスポーツシーンを創っていきたいと思っています。


頑張る姿を応援したい。胸を張って帰ろう

---倉林さんがeスポーツに関する活動を始めたきっかけを教えてください。

実は私、もともと「ゲーム」に前向きな印象がなかったんです。子育ても、木のオモチャを与えたり、たくさんの絵本を読み聞かせたりして、デジタルツールはなるべく避けていました。

ゲームの印象が変わったのは先ほどもお話ししたC4LANを視察した時で、ゲーマーの方々が何も分からない私にもほんと親切で。肩書や立場も関係なく、それぞれが自由に好きなことをする特別な空気は、若いに頃に親しんだ音楽シーンとも似ていて、見え方が変わったんです。

それと合わせてもう一つ大きなきっかけがありまして。

2019年の8月に視察に行った高校生の全国大会でもある「STAGE:0」での出来事なのですが、その大会の決勝戦に群馬県の高校生チームが出場し、惜しくも準優勝だったんです。彼らがメディアから取材を受けた後に声を掛けたら「やばい、もうこれ学校にバレますよね」って言って焦っていたんですよ。

話を聞くと、「どうせゲームの大会だから」と出場することを学校に伝えていなかったり、家族にも大会直前に伝えていたりしていたそうなんです。そのとき思わず「全国大会で準優勝ってすごいことなんだから胸を張って帰ろうよ!」って叫んでました。私自身それまで「ゲーム」をちゃんと理解しようとしていなかったと気がつかされたんですよね。

結局、自分が学生時代に打ち込んだ習い事や部活でやってきたことと、この子たちが優勝を目指して取り組んできた時間や価値観は同じであって、それを応援しないって大人としてどうなの?と思うようになり、そこからはゲームに対するスタンスが変わり始めました。今は真逆。理解も応援もできる大人でありたいと思っています。

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親世代のゲームへの理解を深めていきたい

---今後の活動で力を入れていきたい取り組みは何ですか?

私が過去にそうだったように、ゲームに対してマイナスイメージを持っている親御さんがいるのであれば、少しでもeスポーツの理解を深めてもらえるような活動をしていきたいと思っています。

私自身、母親視点から「ゲーム」に対して何がひっかかっていたんだろうと思い返すと「目が悪くなるんじゃないか」とか「オンラインでのつながりが怖い、危険なんじゃないか」とか漠然と不安を感じていて。同じような心配事や相談を何度かgespoの事務所で親御さんから聞いていました。

ゲームはサッカーや野球と違って、親の目線から子どもの取り組んでいる姿が見えにくいですからね。ずっとゲームをやっていたら子どもにどんな影響があるのかってことが、親にとってわからなくて不安だったりもするんです。

幸いにも、理事や賛助会員の中にさまざまな分野の専門家がいらっしゃるので、親御さんのゲームに対する不安や心配に思っていることを解消できたらと「保護者のためのeスポーツセミナー」を開講しました。

第1回目のテーマは「eスポーツを通じた身体的効果」「ネットゲームで気を付けたいこと」「ゲーム依存にまつわる心理について」の3本でした。

今後は、これらのセミナーの内容をたくさんの親御さんに知ってもらうために動画を制作してgespoの公式Youtubeで公開したり、ZOOMを使ったWebセミナーを開催できたらと考えています。


”地域 × eスポーツを科学する” file02:群馬県eスポーツ連合 倉林亜希子さん

2児の母でもある「ゲーミングおかん」こと倉林さんにお話を伺いましたが、目線が一貫しておかんでした。
eスポーツ業界に対して素人であり、イベント視察などを1年目は行っていたとのことでしたが、まさにその2019年のC4LANで初めてお会いした懐かしい記憶もあります。(その当時は、"eスポーツに対してよく分からない胡散臭そうな人"を嗅ぎ分ける流行があったかと思いますが、)倉林さんは、その場の雰囲気や会場にいる人からどんなことでも吸収しよう、したいという気持ちを感じたのを今でも覚えています。まさにそういったイベントの視察を通して"コミュニティ"というこれまで触れたことのない存在から熱量や魅力的なインパクトを感じられて、後の群馬県内での活動における、地域のプレイヤーたちを応援したいと実施している「gespo杯」などに繋がられたことと思います。

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群馬県には、県庁内に「eスポーツ・新コンテンツ創出課」があったりと、全国的にも県が主体となり前のめりにeスポーツに対して取り組んでいる地域でもあります。

日本各地で、市や県がeスポーツに対して可能性を感じて取り組んでいるケースは2019年頃から一気に増えた印象がありますが、県庁内にeスポーツという名前を含む課が設立されたということは大変インパクトあることでした。

どうしても県や市が関わると「予算」という数字に "変に" 注目が集まり、その予算を少しでも得ようという民間の動きなど、本質的ではないあまりに表面的すぎる事例が起きがちであると感じております。分野問わずに沢山ある訳ではありますが、実際にカタチにしていくためには自治体だけでは難しいことも沢山あるなかで、民間と上手く連携をして産業としての仕組みづくりなどとも向き合って継続性のある形を模索して検証していく必要があります。自治体が参画することにより民間側の主体性が失われることは避けなければなりません。

そういう背景も想像しながら客観的に群馬県を見てみると、倉林さんたちのボトムアップ思想な取り組みと、群馬県庁におけるインパクトのある取り組みは嚙み合っているようにも見受けられ、改めて地方自治体と民間の役割と動き方について考えさせられることとなりました。

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群馬県では様々な面白い動きもありますが、2020年春に新設されたコンベンション「Gメッセ群馬」を活用した取り組みもあります。コロナ禍による影響により残念ながら中止になってしまいましたが、2020年にはGメッセ群馬にて「C4 LAN 2020 SUMMER」の開催が予定されていたり、今年の2021年にはレッドブル主催のe​スポーツ大会「Red Bull 5G」が5年ぶりに開催されるなど、イベント誘致という広がりも見せております。

そういったインパクトのある動きもあるなかでの、群馬県eスポーツ連合の取り組んでおられるような地域に根差した土台作りのような活動があります。他県(外部)の企業や団体との有益な接点の作り方を今一度見直す必要もあるなかで、積極的にそういった取り組みを群馬県はされているようにも見受けられるので、今後どのように発展していくのか注目の地域であると感じております。

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最後に、倉林さんもお話されておりましたが、実際に高校で活動している学校に伺うとeスポーツに対して肯定的な学校もあれば、まだまだ否定的な学校もあり、その温度差は激しいように感じております。(ゲーミングおかんはもっと強く感じておられることと思いますが...!)
今後の業界を担う若い世代が胸を張って活動できる環境を作るためにも、親世代も含めてeスポーツに対しての理解を上げていくことは私たちにとっての重要なミッションでもあり、向き合っていかなければいけないことだと常々感じております。

倉林さん、ありがとうございました。

//関連リンク
・Twitter - gespo/群馬県eスポーツ連合
・Twitter - 倉林さん

(ZORGE note 編集部 http://zorge.jp/)


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