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「コスパが良い」方がいいって簡単に言えなくない?

よく聞く言葉「コスパ」

コスパが良い銘柄、という売り文句も聞いたことがあるかもしれません。
日本酒で言うと、「安くておいしい」お酒に対して言われます。

飲む側からすると、コスパが高い・良いものってとても素晴らしいもののように感じますよね。


でもこれって飲む人「以外」からするとどうなんでしょう。

飲む人にとってうれしい要素が、商売をしていく上ではそこまでうれしい商品ではない場合もあるのではないでしょうか。

安くて満足できるならそれで十分なのでは?

それはごもっとも。

では目線を変えてみるとどうでしょうか。


例えば飲食店目線のとき。

飲食店の「コスパが良い」とは
安く仕入れられて高く売れる銘柄
に他ならないのですが、これを実現できるとするならば
十四代 本丸、磯自慢 特別本醸造、飛露喜 特別純米など、定価は意外と安価(2500円前後)ではあるけれどプレミア扱いされている銘柄くらいでしょう。グラス1000円くらいで売れれば、日本酒としてはかなり「コスパが高い」仕入れになりますね。
下手すればぼったくりとも言われる可能性もありますが、それでも購入する・飲んでくれる人がいるならばお店としてはかなり良い商品です。


また例えば蔵元目線のとき。

商品の価格は高いけれど原価が低めな場合が当てはまるでしょう。
原価を落とす場合、価格の高い酒造好適米ではなくコシヒカリなどの飯米を使う、または精米歩合を高精米にするなど。
商品の価格を上げる場合は、相応の付加価値を与えたものを。
ブランドストーリーやコンセプトを明確にした商品では、たとえ地元産コシヒカリ90%精米でも高価に設定できる可能性はありますよね。最近では「シン・ツチダ」が近い例ですね。


飲む側からすると、コストが低いのであれば販売価格も低くあるべきだ。といった主張がほとんどでしょう。
「おいしい」というものが人それぞれの比較的曖昧なものに関わらず、です。

しかし製造や仕入れの「コスト」に対して「利益」の効率が良いものは商売をする上では素晴らしいことです。
この目線での「コスパが良い」ものは、「利益」という明確な数字が出るので実はかなり重要です。むしろ企業としての生命線になり得ます。

飲む側以外の目線を意識すると、今まで「コスパが良い」商品を有難がっていたことは本当に良かったことなのか、少し考えてしまいますよね。自分が頻繁に求めていたものが、実は案外その製造元のためになっていない可能性だってあるわけですから。


「日本酒は安すぎる」という意見も確かにあります。

自転車操業であったり給料が皆さんの想像以上に安かったり。
蔵元も飲食店も、日本酒の業界はかなり厳しい状況です。

コロナによる需要の激減によって、消費の応援の名目で通常より安価な商品も多く出回りました。

それが良かったことなのか、はたまた悪手だったのか。

少し裏側を覗いてみると、「コスパが良い」ことがいいって、そう簡単には言えなくなってくると思いません?


「推しは推せるときに推せ」

いい言葉ですよね。ではまた。

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