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日本酒のドメーヌとテロワール。より「地酒」らしく。

美味しい日本酒

美味しい地酒

どちらも同じ意味のように感じるかもしれません。

特に全国のお酒が集まる首都圏にいると、日本酒と地酒は同義として扱われている事が多く、そういうものだと思われるのも仕方がない部分は確かにあります

ただ
同じようなものを指しているけれど、そのほんの些細な言葉の違い、それが表す意味が重要になってくる
これからはそういう時代になってくるのでは。

今回はそんな、noteを始めた頃にも書いたテーマについて、ちょっと深掘りしていこうかと思いますよ

そんな前の記事はこちら↓


そもそもこれらはどういう意味なのか

最近日本酒でもこれらの単語を見る機会が増えてきた、と思います。
ドメーヌ貴、仙禽のテロワール……

もともとはワインの世界で用いられてきた単語ですね

ドメーヌ・・・所有地、区画、領域を指す単語。ブドウ畑を所有しており、ブドウの栽培や瓶詰めに至るまでワインの製造を行う生産者のこと。

テロワール・・・土地や風土の個性、ブドウ樹を取り巻く環境全てを表す単語。国レベルの大きな意味から地区レベルの狭い領域まで表すことも。

世界中で古くから造られてきたワインだからこそ生まれてきたような単語かもしれませんね


日本酒に当てはめるとどうなる?

さて、これらの単語をそのまま当てはめると恐らくこういうことになるでしょう。

ドメーヌ・・・酒米を自社で栽培して使用している蔵元さん。(恐らく契約栽培は当てはまらない)

ドメーヌと書かれていなくても、 自社栽培米使用 と書いているお酒があります。そのことですね。
契約栽培を外すのは、厳密には自分の畑ではない事、栽培地域が蔵元と離れている場合があるためですね(菊姫さんなど)


テロワール・・・その都道府県や蔵元周辺の風土や個性、その環境を表す。

県独自の酒米や酵母を使用したお酒、蔵元さんと同じ県で栽培されたお米を使用して造られたお酒、蔵で使用する水と同じ水脈で栽培されたお米を使用して造られたお酒、など。
その都道府県・地域らしさを押し出した日本酒が当てはまるのではないでしょうか。

自社栽培をされている場合、大体は同じ県で栽培されている場合がほとんどかと思います。
なので、テロワールの枠の中にドメーヌの小さな枠が内包されているといってもいいでしょう

まあ、日本酒の成分の半分以上は水だから、水道水を使わない限りはすべてテロワールを表している!
とか言われたらこの話は全て終わってしまいますが。

今回は置いておきましょう。


「美味しい日本酒」と「美味しい地酒」

美味しい日本酒。
今や全国で人気のお米を使ったお酒が溢れています
播州山田錦、特A地区山田錦、備前雄町、愛山、などなど・・・

オマチストだアイヤマニアだとかの酒米ファンもいるように、その酒米を愛して止まない方々も大勢います。

またそれぞれの蔵元さんが意図をもってより美味しい日本酒を造ろうと多くの努力をなさっていると思います。

それは売れる味。
ブームだと持て囃されている今、飲み手に選んでもらいやすい商品を優先して開発・製造している状況。

それはある意味では正しい判断でしょう。

資金ショートして造れなくなってしまっては元も子もないですし、その蔵の事を知ってもらわないと買い手はつきません。

でも
ただ「美味しいだけ」のものって
追い風になっているかも怪しいこのブームのようなものが途絶えたときに何をウリにできるのでしょう

美味しいことは最早当たり前のことになってきていますし

久保田や越乃寒梅のように、かつてのプレミア銘柄がそのネームバリューだけで今後数十年は生き残っていくのか

獺祭のように、ハイブランドを意識した造りに振り切ってしまって、より市場の大きい海外へと舵を切るのか

その「美味しい」を引き上げる付加価値を模索する必要があるように思います

純米大吟醸しか造らない
全量生酛造り
高価格帯への挑戦  など・・・

その中の一つとして。
ドメーヌとテロワールがあるのでは。

選択肢の一つとして挙げるようですが
最終的には比重が大きくなってくるだろうと予想してます。

海外ではまだ愛飲家は極少数派の日本酒
世界的なスタンダードなお酒はワイン。
そのワインの価値観に寄せていかないと、海外市場で生き残れず市場の縮小が進んでいる国内だけではいずれ立ち行かなくなる
農業と酒造りが結びついていれば文化的な象徴たりえたものが、海外市場の飲み手への説得力の不足からただの工業製品と同じ扱いにされるとしても不思議ではないでしょう
その地方らしさ、その県や町らしさのあるお酒。日本人だけでなく、意外と海外の方は見ていると思います

農業の面からも
ドメーヌのように農協を通さないことで中間マージンが無くなり、生産者はより高値で売り、蔵はより安値で仕入れることができることも。農家の収入増は大変重要。蔵元自身が取り組むことで新たな雇用などが生まれたりも。
また田んぼからその行き先が見えることでその周辺にお酒への愛着が湧く・・・?かもしれない・・・

そういえば茨城の武勇さんがこんな取り組みもしていましたね
親子で米作りの手伝いをして、そのお子さんが成人する際にその時のお米で造ったお酒を贈る、というもの。


そうして地域に根差した蔵元さんのお酒が「日本酒」から「地酒」になり、新しい飲み手や価値を生んでいくのではないかな、と思っています。


偉そうなこと言ってますし、半分以上は自分の好みではあるのですけどね。

美味しいこと以上の価値というもの。
個人的にではありますが追い求めていきたいかなと。

長くなりましたが今日はこれで。


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