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ボードゲームはめんどくさくて、ヘルシーなエンタメである

ボードゲームって、遊ぶのめんどくさいんですよね。でもそれが逆にヘルシーでいいかも、という話です。

ボードゲームは遊ぶまでに、座って落ち着ける場所が必要で、一緒に遊ぶ人が必要で、箱から取り出して中身を並べる必要があります。

遊ぶときも、説明書をきちんと読んで理解しなくちゃいけなくて、コマやカードは自分で移動させなくちゃいけなくて、常にルールを破っていないか確認しなくちゃいけません。

あと、遊び終わったらまた箱に入れて片付けなくちゃいけません。実に、めんどくさい!

だから、毎日遊ぼうという人は、かなり稀かと思います。

ちなみに僕はボードゲームを作っていて、ボードゲームのnoteを書いているボードゲーム好きですが、実際に遊ぶのは2週間に1回あれば多いほうです。

これは現代的なエンタメのあり方としては、かなり厳しいと思います。

ちょっと違う話かも知れませんが、以前あるベンチャーキャピタリストの方とお会いして投資先の基準をお聞きしたとき、「提供しているサービスがユーザーに毎日使われるものか」は見ているとおっしゃっていました。

多くのコンテンツやサービスがしのぎを削るなか、継続的に注意を引けるという要素が、成功に大きく影響するということなのでしょう。

しかしボードゲームは、それができません。基本的に忘れられていて、条件が揃った(あるいは、揃えた)とき限定で遊ばれるものなのです。

でもそれは良く言えば、「依存させない」エンタメであるということではないでしょうか。

良い映画は”腕のいい結婚詐欺師”である

話が変わりますが、押井守監督の著書である『ひとまず、信じない』によれば、良い映画とは、“腕のいい結婚詐欺師” だそうです。

なんでも腕のいい結婚詐欺師は、騙した相手から恨まれないのだとか。それは、お金は取られてしまったものの、その詐欺師と過ごした時間が本当に良いものだったからだそうです。

その満足度にお金を払ったと思えば、許せる。ということなのですね。それと同様に、観てる最中は夢中になるけど、観終わったあと「嘘だった、でも、良かった」と思われたら良い映画である、ということなのでしょう。

これはエンタメ全般にも通じる話だと思います。

楽しんでいるときは夢中になれるけど、終わった後はサラッと現実に戻ることができる。ちょっとの間だけ、良い時間を過ごすための期間限定の装置。良い余韻や気づきを残して、あとはサヨナラです。観た人を、依存させません。

余分に時間を取られたり、常に気になっちゃったり、思ったよりお金をつかっちゃったり、しません。ヘルシーです。

ボードゲームも、そんな感じなのです。遊んでいるときは良い時間を過ごせるけれど、それが現実の生活に浸食しては来ない仕組みになっているから、純粋にエンタメとして楽しめる安心感があります。

ボード”ゲーム”なので、同ジャンルの他のエンタメは電子ゲーム等なのかと思っていましたが、もしかしたらバスケなどのプレイに複数人を必要とするスポーツの方が、その本質には近いのかもしれませんね。

ナイスプレー!