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きみのおめめ あたらしいお友達 #5

9月末、職場で人事異動の発表があった。
その日の保育園からの帰り道、10月になったらかかの席の隣にあたらしく一緒に働く人が来るんだよ、と娘に伝えた。娘は、えっ、と驚いて、
「娘ちゃんのクラスにも10月になったらあたらしいこが入ってくるんだよ。先生が教えてくれたんだ」
そうなんだ、一緒だねえ、というと、娘も、一緒だねえ、と繰り返した。
知らない人とお話するの、かかは少しだけどきどきするんだけど、娘ちゃんはどう?と聞く。
うーん、と首をわずかに傾け、
「娘ちゃんは、あんまりどきどきしないかあ」
そういって、とん、と一歩跳ねてこちらを見る。
「そしたら、一緒にあそぼうよって言ったらいいんじゃない?」
そうでしょう、と顔を覗いてくる。
「ちょっとずつでいいんだよ」
そう言って私の手を引いて前へと進む。

何かを手繰り寄せながら話をする。
今の質問は大丈夫だったかな。今この話をして大丈夫かな。そこで謝らないでいいから、と上司に言われたことも多い。
「ほんとだね、あんまり難しく考えないでおこうかな」
そういうと、娘は満足そうにほほえんだ。

後日、娘が寝たあとに開いた保育園のお便り帳には、
「新しいお友達に話しかけようとして近づいて、でも緊張するのかもじもじしていました。それでも最後には勇気を出してお名前を伝えて、よろしくね、と言っていました。頑張ったね、娘ちゃん!」
と書いてあった。
先生へのお返事を書いてノートを閉じる。
ベッドですうすうと寝息を立てる娘の手をにぎる。ちょっとずつでいいんだよね、そう思いながら、頑張ったね、と娘の頭を撫でた。

すごくすごく喜びます!うれしいです!