寺山シオン

恥の多い生涯を送っています。|労働者 / ミレニアルズ / ADHD / 東大修士 (…

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恥の多い生涯を送っています。|労働者 / ミレニアルズ / ADHD / 東大修士 (生命科学系)|文化的雪かきのご依頼はTwitter DMまたはページ最下部にある「クリエイターへのお問い合わせ」まで🙏

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多様性のあるシステムは脆い

ISILにシャルリー・エブド、BrexitにTrump政権、#MeToo。21世紀のテーマの1つが「多様性」なのだろう。国家や企業、学校といった様々なレベルで多様性は喧伝されている。その裏には様々な思想があるわけだけど、その1つに「多様で複雑なシステムは安定で持続可能だ」というアイデアがある。 でも実はその認識は甘く、真逆の結論をもたらしてしまうことになる。今回は、本当に安定なシステムと多様性の関係について、生態学の研究でわかってきていることを紹介させて頂きたい。 すべて

    • ミーハーが世界を変えていく 〜ネットワーク科学からみたミーハー〜

      シリコンバレーは一見のどかな田舎だが、世界を変えるスタートアップを次々と生み出すカンブリア紀の海のような土地だ。なぜシリコンバレーがそのようになったかという考察は多くされている。Stanford大学があるからとか、周りの成功者の率が高いから自分もという錯覚を起こからとか。これらは正しいだろうけど、別にそれだけというわけではない。 ネットワーク科学少し前に流行った『群衆の英知もしくは狂気』というゲームをご存知だろうか。ネットワーク科学を一般の人でもわかるようにと、@ncase

      • 長続きしないのは解像度が低いから

        「長く続かない」。これは人生にずっとつきまとう問題だ。周りから価値のある人間として認められたり、恋人との幸せな関係が長く続けばいいのにと願う。そのためには長続きが大切なのはわかっているけど難しい。長続きさせるための秘訣は本もたくさん出ているし、ググってもいくらでも出てくる。だけど、少なくとも1つ語られていないものがある。 感じ方は人それぞれ同じものに出会っても、わたしたちの感じ方はそれぞれ異なる。 どこで読んだのか思い出せないのだけど、印象派のクロード・モネは(たしか)友

        • 手づくりの本質

          18世紀に産業革命が起きてからの人類史は、自動化の歴史と捉えられる。21世紀はソフトウェアが猛威を奮い、Osborne氏の『雇用の未来』によれば多くの知的労働もなくなるとされている。こんな時代の手作りの意味とはなんなのだろう。 手づくりのエモさまず1つ考えられるのは、手作りが生む「物語」の価値だ。いま風に言えば「エモさ」なんだろう。「手づくり」という言葉を見聞きすると、田舎で、職人さんが時間をかけて、丁寧につくってくれた光景が自然に浮かんできたりする。 人はいつの時代も物

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        多様性のあるシステムは脆い

          量子的人間 ―個人、分人主義、猫―

          これは分人主義を批判するものでも、先に進めたものでもない。ただ、分人主義をある比喩で捉え直してみたら、よりしっくりきたという自己満足感を書いた娯楽だ。 個人という幻想個人主義の世界は、わたしたちに矛盾のない、1本の芯の通った個人であることを求める。言動に矛盾があればとがめられる。酷いときには「多重人格」と揶揄される。そして、わたしたちは自分の矛盾に悩んだりする。でも人間ってそんなにシンプルだろうか。 家族に対する自分、恋人に対する自分、親友に対する自分、同僚に対する自分。

          量子的人間 ―個人、分人主義、猫―

          専門化は脆さを高める

          前回、安定したシステムに必要な多様性について書いたところ、想像を超える反響をいただけた。そこで今回は、個人の職業のレベルに視点を変えて、「専門化は脆さを高める」ということについて書いてみた。 崇拝される専門性現代は、専門性が尊敬される時代だ。欧米ではPh.Dを持っていると、飛行機やホテルをはじめ、いろいろな待遇が変わるらしい。 専門性のある職業として古くから崇められてきたのは、医者と弁護士だ。ときに親は、子どもがどちらかになることを夢見、その素晴らしさを子どもに刷り込む。

          専門化は脆さを高める

          孤独を受け入れ立ち上がる|『ヘッセ詩集』

          Hermann Hesse『ヘッセ詩集』新潮社(1950) 人は誰しも生まれながらに孤独だ。どんなに共感してみせたって真に他者と同じ心理状態になることはできない。わかるのは自分という檻の中だけで、あとは想像する他ない。他人の痛みだって、もし自分があの人と同じ体験をしたらこう感じるだろう、だからあの人もこう感じてるに違いない、と自分を拠り所に想像するしかない。けれど、自分とその人が同じであるということは何者も保証してくれない。 独り 地上には 大小の道がたくさん通じている

          孤独を受け入れ立ち上がる|『ヘッセ詩集』

          ウェルビーイング時代の陰翳礼讃デザイン|『陰翳礼讃』

          谷崎潤一郎『陰翳礼讃』1933 短い間だがAirbnbでホストしていた時期がある。いまは例の恥ずべき自滅的な法規制によって撤退を余儀なくされ止めている。これについての怒りは別の機会に書くとして、その記念すべき1人目のゲストがWisconsinからきた写真家であり、バーテンダーであり、クリエイターのあるコミュニティのWisconsinのホストという方だった。 仮にPaulとしよう。Paulはアメリカ人のイメージに対してはひどく落ち着いていて、物静かな大人らしい大人だった。生

          ウェルビーイング時代の陰翳礼讃デザイン|『陰翳礼讃』

          Bauhausへ受け継がれた色|ゲーテ『色彩論』

          Johann Wolfgang von Goethe『色彩論』1810 この本をはじめて知ったのは、たしかダリ展かオットーネーベル展でだったと思う。Goetheといえば『ファウスト』や『若きウェルテルの悩み』など大文豪のイメージが勝手につくられていたので、Goetheが色についてこんな分厚くなる文章を書いていたことに驚いた。でも手には取らなかった。 それから1,2年後デザインをするようになり、色について学ぼうと思ったとき、本書を思い出した。これまで、Josef Alber

          Bauhausへ受け継がれた色|ゲーテ『色彩論』

          生き方に理由なんて|『二十億光年の孤独』

          谷川俊太郎『二十億光年の孤独』1952 残念ながら生まれてこの方、詩というものをほとんど読んだことがなかった。意図せず目にした詩と呼ばれるものは、ある種の絵画のようになんともいえない感じを与えた。詩というものがどんな言葉の集まりなのか、まるで掴めなかった。 この本は近所の古本屋で偶然みつけた。谷川俊太郎という名前を見て、よく知らないなりに大詩人だろうと思って手に取った。しばらく寝かせてしまったけれど、こないだ代々木公園にリラックスしに行くことになったとき、ふと手にとった。

          生き方に理由なんて|『二十億光年の孤独』

          姿は似せ難く、意は似せ易し|『考えるヒント』

          たしか代々木上原の古本屋で出会った、小林秀雄『考えるヒント』文春文庫(1974)を読み終わった。 散文ってこんなに味わい深いものになるものなのか。これが小林秀雄か。岡潔との対談『人間の建設』なら読んだことはあるけれど、小林秀雄が書く散文はまた全然違った。こんな散文、インターネットではそうそうお目にかかれない。 『考えるヒント』というのは編集者がつけたタイトルらしい。実際、小林秀雄は世の中で当たり前に使われている言葉や概念から蝶のように軽やかに飛び立っていく。その様を文字で

          姿は似せ難く、意は似せ易し|『考えるヒント』

          イノベーションの目的について語るときに我々の語ること

          イノベーションを定義、方法、目的の観点からみるとき、もっとも語られていないのが目的だと思う。たぶんそれは、目的なんかについて考え議論してもすぐには役立たないからだ。 世の中でイノベーションが叫ばれるとき、ほとんどの理由は次のどちらかだ。「経済成長」または「企業存続のための利益増大」。国家がイノベーションを語るとき、その目的は国の経済成長なのではないだろうか。企業がイノベーションを語るとき、それは利益増大が目的であることがほとんどなのではないだろうか。利益増大の目的は当然、企

          イノベーションの目的について語るときに我々の語ること