スズメの巣 第35話

第35話 私が話す理由

※この物語はフィクションです。

ついに、決断の日。
スタッフとは共有してある。
あの3人は、どんなリアクションをするのだろう。
橋口は、唇を噛み締めていた。

「それでは。チームミーティングを始めます。」
今シーズンの反省点を共有し、1時間ほど流れた。
「最後に決議を1つ取らせて下さい。日ノ出さんお願いします。」
「はい。」
日ノ出が話し出した。
「この度。私はチーム退団をスタッフの皆様とご相談させて頂きました。」

三者三様のリアクション。
「な、何でですか!!」
「そうなんだね。」
「・・・えっ?」

「私は、リーグ・ザ・スクエアに参戦できたのは誇りに思います。しかし、仕事や様々な都合により、出場の機会が少ないです。かつ、先のジャッジメントトーナメント当日。私は、2日目をドタキャンしました。それでチームは、みくちゃんのリードこそあったものの。急遽ドタキャンしたことで。チームに、多大なご迷惑をおかけしました。そのケジメをつけるべく橋口GMに退団の申し出をさせて頂いた次第です。」

「別にいいじゃないですか!」

そう言い放ったのは、沖村だ。
「チーム戦の麻雀ですもん。ゆっくりだっていいじゃないです?」
「その気持ちは、もちろんうれしい。ただ、社会人として考えたらこんな人間いるべきでないと思ってね。引き際かなと。」
「もう1年で優勝して、有終の美を飾るのでも遅くないはずです!」
「いや、これ以上迷惑はかけられない。」
「何で?迷惑なんて思ってませんよ!」
「自分が感じてるんだ。」
「何が迷惑なんですか!!」
「だから・・・。」

沖村と日ノ出の言い合いは、ヒートアップする一方。
布崎・太平は黙って聞いていた。
その問答は、5分ほど続いたという。

そして。
「日ノ出さんの意見を聞いて、承認していただける方挙手をお願いします。」

鳳・麻田・布崎・太平。
そして、橋口が挙手した。
「賛成多数と認め・・・」

「イヤです!」
沖村が粘る。
「このチームにいてほしいです!」
「気持ちは分かりますけど・・・。」
橋口が、困っていた。

「みくちゃんだってそうでしょ!」
「そ、そうですけど・・・。」
太平はおどおどしながら話した。
「私なんかが、日ノ出さんの人生を決めるべきじゃないなって・・・。」
「私なんか?意見したっていいんだよ!?」
「は、はい・・・。」
太平は、落ち込んでいく。

「もういいです!埒が明かない!私もチームを辞めます!」
「えぇ!?」
橋口が、驚いた。
「ちょっちょっと!」
「日ノ出さんが残留しない限り、私もやめる覚悟はあります!」
沖村は強気だ。
そして、こう続ける。

「これは、ボイコットです。日ノ出さんの残留を交渉すること。スタッフさんに求めます。そしたら私もチームに残ります。」
「そ、それは・・・。」

「分かりました。」
「さくちゃん!?」
スタッフ唯一の残留派の金洗がこう反応した。

「交渉しましょう。」
「そんな話出てないだろ!」
「じゃあ私だけでも進めます。」
「おい金洗!いい加減にしろよ。」
「ほっといてください。」
「さすがに看過できないぞ。」
「別にいいです。」
愛田も鳳も、厳しい目を向ける。

とある人間が、プチッと何かが切れた。
「いい加減にしなさい!!」
怒号の主は、布崎だった。

「布崎さん?」
橋口は、恐る恐る顔を向ける。

「なんで決めたことを覆そうとしてるんだ!!」
一喝した。
そして、深呼吸した。

「私は、日ノ出さんが残ったら残ります。」
「じゃあ自分の人生。人任せにするのか?」
「そ、それは・・・。」
「まずは、自分が強くなる。強くなったら、自分が日ノ出さんみたくなれるかもしれない。憧れんじゃない!自分を強く持ちなさい。」
布崎が、激しく怒る。
そして、冷静になってこう付け足した。

「凛ちゃん。その気持ちもわかるが日ノ出くんの気持ちも汲んであげな。」
布崎が、語り掛ける。
「それで、本人が決めたんだ。周りがとやかく言う話じゃない。自分の人生は、自分に決めさせるべきだと思うんだ。」
「んんん・・・。分かりました。」
沖村も納得した。

「さくちゃんだってそう。日ノ出さんはオンリーワンだ。けどね。その穴を埋めるんじゃない。新たな道を進むべき時だってあるんだよ。分かってあげな。」

「わ、分かりました・・・。」
金洗は、うなだれる。

「では、賛成多数と認め、承認とします。」
日ノ出の退団が決まった。
橋口が、話を紡ぐ。

「ただ、このチームは日ノ出さんが帰ってくるのを待ってます。推しチームでいてくれますか?」
「もちろんです。」
「場所は、違えどもお互い頑張っていきましょう!」

明るく送り出すことにした。


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