スズメの巣 第26話

第26話 始まれば終わるよね

覇者が消えるかもしれない。
衝撃が広がっていった。

グランプリ予選では、上位勢はホビーウォーリアーズがトップなし。
麻雀カルテットは、役満成就。
これらの大荒れかつ大混戦を残ったのは、パールズ、麻雀カルテット、ゴールドバンディッツがグランプリだった。
この3チーム+通過済みの横浜シティドラゴの4チームで、シーズン優勝をかけたジャパングランプリの本戦に挑む。

1部リーグのジャパングランプリ予選の終了。
つまり、2部リーグの最終戦を意味した。
2部リーグは最終節初日を終え、eレインボーズ・神保町ブラックタートルズ・キャピタル麻雀部・幕張麻雀闘宴団。
以上の、4チームがポイントを確定させた。

最終節1日目終了時点の結果は、こうだ。
1位 キャピタル麻雀部 +342.4ポイント
2位 JOY V-deers +290.6ポイント
3位 乃木坂アイロンマレッツ +103.6ポイント
4位 大阪ラフミカエルス +29.1ポイント
5位 夕暮れポセイドンズ -49.2ポイント
6位 神保町ブラックタートルズ -176.0ポイント
7位 オダイバeレインボーズ   -329.7ポイント
8位 幕張麻雀闘宴団       -631.5ポイント

まず、特例の1部自動昇格はキャピタルとV-deers、アイロンマレッツの3チームに可能性がある。
本日V-deers・アイロンマレッツがどちらかのデイリーダブルで順位入れ替えの可能性がある。
つまり、どうなるのか分からない。

最終日。
V-deers陣営は、とんでもないピンチであった。
「なんで寄りによって今日なの・・・。」
橋口は、頭を抱えていた。

「まぁそう言わずに・・・。」
チームの大黒柱。
そして精神的支柱の布崎が、天下統一戦の1回戦であった。
つまり、試合会場にいない。
かつ、爆発中の日ノ出も重大な仕事がありいなかった。
太平と沖村は、とんでもないプレッシャーに押しつぶされそうであった。
「沖村さん・・・。どうしましょう・・・。」
「まっ・・・まぁ大丈夫でしょう・・・。」
沖村が励ます。
「橋口さん・・・。」
太平が、橋口の方を見る。
「みくちゃん。大丈夫よ・・・。」
太平はもうすぐ泣くかもしれない。

そんな2人を見て、金洗も鳳も困り切っていた。
「どうする橋口。2人ともまともに戦えないぞ。」
コソコソと話した。
「布崎さんがいたら、どっちかは出てもらうつもりだったんですけど・・・。」
「他はエース全員いるよ?!うーみんどうする?」
「うーん・・・。」

橋口は、熟考した。
1部昇格をかけた千載一遇のチャンスだ。
もし2人が、バチーンとハマれば強い。

ただ、リスクも大きい。
もし、逆デイリーダブルなんてなったら・・・。
※逆デイリーダブル・・・2試合連続で4着を取ってしまうこと。
ジャッジメントトーナメントすら危うい・・・。
2人への、非難集中は免れない。
考えろ。考えろ私・・・。

「あっ。」
橋口は、ふと思いついた。

「あっそうだ。さくちゃん、鳳さんちょっといいですか。」
「どうした。」
橋口は、思いついたことを2人に話す。
「そうだね・・・。そうするしかないかもね。」
「まぁ、天地社長の目標はジャパングランプリ制覇だからな。」
「それに、ファンの目はジャッジメントトーナメントに向けてシビアになっています。下手にミスれば袋叩きの可能性があります。選手のメンタルを守るためにもその方法で行きます。」
「その方がいい。」
鳳が、納得した。

橋口が呼び掛けた。
「みくちゃん。沖村さん。今日の方針ですが・・・。」
宣言した。

この宣言は、2人を驚かせた。
が。

「分かりました。考えて下さってありがとうございます。」
「それなら私も精一杯頑張らせて頂きます。」
決意を固めた。
「よかった・・・。ぜひお願いします!」
橋口は一息ついた。
あとは信じるだけだ。

先発が、発表された。

第1試合は、沖村が出場する。
東 アイロンマレッツ 金村ゆかり
南 V-deers      沖村凛
西 ポセイドンズ   木幡治
北 ラフミカエルス  岡田波奈

生中継が始まる。

「ついに、運命の1日です。ジャンプアップか涙かついにきまります。」
ナレーションがお台場のヘリ映像が差し込まれた。
「みなさんこんにちは!本日は実況は北条ちか。解説は、鳴沢雄二さんです。よろしくお願いいたします。」
「はい。お願いします。」

「さあ。2部リーグ最終日です。初めての昇格という歴史の1ページに残るのはどのチームか。気になるところです。鳴沢さんどうご覧になりますか?」
「そうですね・・・。先ほど取材したんですけど。V-deersが布崎さんが不在なんだそうです。そこがどうなるのか気になります。」

テレビを見ていた橋口が、こうつぶやく。
「黙ってよ・・・。」

運命の試合が始まった。

まず、沖村は、何とか2着を持ち帰る。

最終戦の太平は、1着も見えたが、1500点差。
オーラスのテンパイ料が雌雄を決し惜しくも2着となった。

ただ結論を言えば、JOY V-deersはジャッジメントトーナメントに進出することになった。
1部自動昇格まではいかないが、猛者たちによくかいくぐった。

これに伴い、ジャッジメントトーナメント出場の4チームが出揃った。
1部昇格は、キャピタル麻雀部となった。
1部最下位 六本木桜花隊
2部2位  JOY V-deers
2部3位  乃木坂ヴィーナスアイロンマレッツ
2部4位  夕暮れポセイドンズ

「橋口さん!ありがとうございます!」
太平は、そう言いながら泣き始めた。
「いやいや。お2人のおかげですよ!」
「ああいう風に言ってもらって楽になりました!」
沖村も同調する。
「たしかにそうですよ!!ああ言われなければラスラスだったかも。だよね?」
「はい!」
2人は、橋口を見る。

「そ、そんなわけ・・・。」

というのも、試合前。
「今日の方針ですが・・・。」
橋口の言葉を待つ沖村と太平は、息をのむ。

「3着でもいいです!というかどこでもいいです!」
「えっ!?」
2人は混乱した。
「でっ、でも昇格が1枠決まるんですよ!決めときたいです!」
沖村がこう言った。
橋口は、言葉を足す。
「自分の力を見せられる。その方が大切です。ましてや2部リーグのMVP争いも決まるので、周りは焦っています。いつも通りゆっくり行きましょう!」
「でも負けたら・・・。」
「まぁいいじゃないですか。最終的な目標達成まではまだあるわけですし。」

結果オーライ。二人とも2着フィニッシュ。
チームスタッフである橋口GMの采配が、チームの方針を固めた1日であった。

つづく。





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