スズメの巣 第19話

第19話 若葉マークをもって謙虚に行きましょ

布崎が控室に戻る。
「ごめんなぁ。」
「まだ、始まったばかりですし。」
「そうですよ。2着じゃないですか。」
橋口と金洗が、言葉を紡ぐ。

一方、乃木坂アイロンマレッツの控室は盛り上がっていた。
「お帰りなさい!金村さん!!」
高屋が出迎える。
「もっと取りたかったけどね。」
「スタートダッシュには申し分ないです!」
「藤坂さんどうでした?」
GM補佐の梅田が問いかける。
「文句ないです!この調子でいきましょう。」
「はい。」
「では第2試合ですが・・・。」

JOY V-deersの控室に戻る。
「じゃあ次の第2試合ですが、どうしましょう。」
橋口が聞く。
「先に、緊張をほぐすべきではありますね。」
布崎が言う。
「そうですか。」
「あのフィールド。かなり緊張感があります。」
「なるほど・・・。」

鳳が言葉を発する。
「どうするんだ橋口。」
「うーん・・・。みくちゃん行ってみる?」
「えっ?あたしですか・・・?」
「布崎さんの言う通りなら初めに打って損はないと思うよ。」
「分かりました。行ってきます。」
「じゃあ、オーダー出してきますね。」
今度は橋口が向かった。

布崎が声をかける。
「太平ちゃん。あそこは緊張する。でも、自分を信じてな。」
「分かりました。」

そう言って準備に取り掛かる。
橋口が戻ってきた。
「戻りました。みくちゃん東スタートだって。もう行っていいみたいよ。」
「分かりました。じゃあ行ってきます。」
「頑張ってね!」
「自分の麻雀を打って。」

5分後。対戦カードが公表された。

東 JOY V-deers 太平 みく
南 神保町ブラックタートルズ 三田 真司
西 乃木坂アイロンマレッツ 田村 あすか
北 キャピタル麻雀部 山崎 七瀬

中継が再開された。
「第2試合も実況は矢面淳。解説は鳴沢雄二さんです。改めてよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「それでは第2試合の対戦カードをご覧いただきます。このようになります。注目の選手いらっしゃいますか?」
「そうですね。やはり太平さんでしょうか。あまり情報もないので、各選手がどう攻略するかがポイントになってきそうです。」
「そうですね。あと、若手の女流選手が多いですからね。おそらく三田さんの立ち回りにどう対応するかがポイントになりそうですね。」
「その通りです。」
「ありがとうございます。試合開始はお知らせの後です。」

一方控室では、さっきの話の続きが始まっていた。
「そういえば、みくちゃんってなんで振興会所属なんですかね?大手なら競技とかでもいいはずのに。」
沖村が聞いた。
「それは振興会の代表が、イベントに来てて褒められたって聞いたことがあります。」
橋口が答える。
「なるほど・・・。」
「どうかしたんですか?」
「いや。ちょっと・・・。」
「沖村ちゃん。さっきすごいこと言ってたよね。」
布崎が笑いながら答える。
「あっ!ちょっと!」
「言うならスタッフさんには言っていいんじゃない?本人はまだ話さなくても。」
「そうですかね?じゃあ・・・。」
「何でも言ってください。」
「じゃあ言いますね。みくちゃんは振興会にいるべきじゃないなって。」
「なるほど。」
鳳は納得した。

「試合を見ても一発勝負のトーナメント戦のほうが力を出せる気がして。」
「確かに言う通りですね。」
鳳は話す。
「ですが、本人の意思は確認しないと・・・。」
愛田は割り込んだ。
「あくまで個人的な意見です。最後に決めるのは本人ですから。」
沖村は、笑いながら言った。

「ちなみにいいですか?」
金洗は、訪ねる。
「何でしょう?」
「仮にみくちゃんが移籍ってなった場合。どの団体とかあるんですか?」
「やっぱ競技じゃないかなとは思ってますね。だから布崎さんに聞いたんですよ。」
「なるほどですね・・・。あっ始まりますよ。」

第2試合。
選手入場と国歌斉唱を終えたのち、審判のホイッスルで試合がスタート。
「始まりました。第2試合であります。」

「みくちゃん大丈夫かな・・・?」
「金洗。大丈夫だと思うぞ。どっちかつうと田村さんを見てみろ。」

田村がカメラに抜かれた。
とんでもないド緊張が顔だけで伝わる。
「あっ大丈夫そうですね。」

東3局までまさかの全員ノーテン。

最初に試合が動いたのは、東4局3本場。
最初に田村が満貫確定リーチを突っ込む。ツモれば跳満。裏次第で倍満も見える。
太平・山崎が下りる中、三田だけはとんでもない手を模索していた。

「三田さん降りないですね。」
橋口が話し出す。
「そりゃそうだよ。役満ねらいでしょ。」
「いきなり出ますか?」
金洗が不思議そうに尋ねる。
「出るんでない?」
「守備型ですけど。」
愛田が問いかける。
「守りながら相手を陥落させるのも得意だからな。」
そんな話をしていると、テレビから絶叫が聞こえた。

「国士無双テンパったー!!」
「田村が危険すぎますね。」
「岸本さんいかがですか?」
「アイロンマレッツベンチでは祈るようなしぐさが見て取れます。」

「北だー!!!」
「ロン。32000は32900。」
「うっ・・・。はい・・・。」
田村は涙目であった。

このまま三田が独走態勢に入り、南1局は三田が500・1000のツモ上がり。
南2局は太平が先行リーチをかけるも、山崎が3900点を太平から打ち取る。
南3局は田村の親番で倍満確定のテンパイを打つも、太平がリーチ。

「みくちゃん上がれますかね?」
「正直いけるかもだな。」
鳳が話す。

「ツモ・・・。2000・4000。」
この勝負で完全に心が折れてしまった田村である。

オーラス。
現在の得点。
東 太平みく  27,100点
南 三田真司  57,900点
西 田村あすか -12,400点
北 山崎七瀬  27,400点

田村は、素点回復を目指す。なるべく高打点をつくろうとする。
しかし、2着争いに巻き込まれる形に。
田村がテンパイ。うまくいけば跳満も見える。
太平が中のみ1000点のテンパイを黙テンした。
しかし、三田がその後ドラ2+赤ドラ2のテンパイ。

山崎が下りる。
つまり、3つ巴になる。
「ツモ。2000・4000」
三田のあがりで田村はあえなく散った。
ここで試合終了のホイッスル。

試合順位が、確定した。
1着 三田真司(タートルズ)
 65,900点 +75.9ポイント
2着 太平みく(V-deers)
 25,100点 + 5.1ポイント
3着 山崎七瀬(キャピタル)
 23,400点 -16.6ポイント
4着 田村あすか(アイロンマレッツ)
-14,400点 -74.4ポイント

このようになった。
「田村さん。なんかかわいそうですね・・・。」
橋口がつぶやく。
「1回の役満でこんだけの威力があるってことだな。」
愛田がそれにこたえるように話す。
「じゃああの時のみくちゃんって、相当すごかったんですね・・・。」
「天下統一戦のか?あれは、バケモン級の上がりだよ。」

太平が帰ってきた。
「戻りました。」
「ナイスファイト!」
「よかったよぉ。」
「すみません。もっと伸ばしたかったのですが・・・。」
「いいのいいの。役満にふらなかったのもすごいから。」
選手二人が褒めたたえる。

スタッフも拍手を送る。
「大丈夫だよ。まだ1戦目だし。」

愛田のスマホが鳴った。
「ちょっと出るわ。」
「分かりました。」

トイレのそばのスペースで電話に出る。
「はい。愛田です。」
「あぁ愛田君か。実は頼みたいことがある。」
「なんでしょう?」
「実はな・・・。」
驚きを隠せない。
「でも、どうして今なんですか?」
「待っていると時間がないんだ。頼む。天地社長には私から言っておく。」
「ですが、専任という形なので・・・。」
「分かっている。ただ急で申し訳ないんだが、これは決定事項になりそうだ。申し訳ないがよろしくね。」
「ちょ・・・。」
電話が切れた。
「どうしよう・・・。」
愛田は考えてしまった。

2部リーグ2日目終了時順位
1位 大阪ラフミカエルス +70.3ポイント
2位 幕張麻雀闘宴団 +30.2ポイント
3位 神保町ブラックタートルズ +29.2ポイント
4位 乃木坂アイロンマレッツ +4.9ポイント
5位 JOY V-deers +4.5ポイント
6位 夕暮れポセイドンズ - 5.1ポイント
7位 オダイバeレインボーズ  -74.4ポイント
8位 キャピタル麻雀部 -79.5ポイント

第20話へ続く。


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