スズメの巣 第29話

※この物語はフィクションです。

第29話 決壊した瞬間

ジャッジメントトーナメント第3試合が始まる。
対局メンバーは、未だ無傷の太平以外の3チームはこんな感じだ。
桜花隊 次鋒 寅野 西家スタート
乃木坂 中堅 金城 東家スタート
夕暮れ 次鋒 鯵沢 北家スタート

第3試合の対局開始直後。
鳳がとある異変を見つけた。
「おい。橋口。」
「何ですか?」
「太平さんの様子がおかしくないか?」
「どういうことです?変わらないですよ?」
「いや違う。笑ってないか?」
「あー。確かに。あのみくちゃんが珍しいわ。」

確かに、画面を見るとカメラで抜かれる度に口角が微々たるものだが、上がっている。
いつも、真剣そのものの顔だ。

「でも、いいじゃないですか!本人も意気込んでるってことでしょう。」
橋口は、うんうんと頷いた。
ただ、鳳は解せない顔をしている。
「これは・・・。違うな。」
「違う?何が?」
橋口が問いかける。

「太平さんは、連対のプレッシャーにやられてるかもしれない。」
「そんなわけないじゃないですか。」
「じゃあ、あの口角のピクピクは何だ?」
太平の長考が映っている。
確かに、口元がピクピクしている。

「これ。連対のそれじゃねぇな。連闘のプレッシャーだな。」
「マジですか!?あ・・・。」
橋口も、察した。

「これは、まずいですね・・・。ただ、2連チャンは好成績でしょう。」
「ただ、明日もあるんだぞ。いくらプロとは言えなぁ。」
「分かってます。」
そう考えながら、モニターに注視する。
試合展開は、鳴きとリーチが入り乱れる荒れた展開となった。

抜きん出たのは、鯵沢。
東1局。
元々ドラ1のみだった。
しかし。
「カン。」
鯵沢が、暗槓すると。
新たなドラが、4枚乗せた。
そのままリーチ。

実況が叫ぶ。
「これは見事。跳満確定リーチです!山にはありすぎますが・・・。」
言葉を紡ごうとしたとき。
「ツモ。」
鯵沢があがる。
「一発ツモった!!」
「すごい!」
放送席は、興奮している。

裏ドラを2枚めくる。
1枚目は、0枚。
2枚目は、2枚対象となった。

「4000・8000。」
鯵沢へ3人は、点棒を渡していく。

「リーチ・一発・ツモ・ドラ5・裏2の倍満。4000・8000!!大きなリードを広げる倍満です!」
実況の咆哮が炸裂する。

東2局は、全員テンパイせずに流局。
東3局は、最初に寅野が安い手だが、親のリーチ。
負けじと、金城もリーチを打つ。
この2人の捲りあいか。
そう思われたが。

「リーチ。」
鯵沢の声だ。

「ウソでしょ!」
実況がたじろいだようだ。
「これは、かなり強気ですね!」
点数を持っているにもかかわらず、攻め始めた。
「ポン。」
太平も、声を出した。
満貫のテンパイ。それも単騎待ち。

「みくちゃん!?」
モニターで見ていた金洗が、思わず声を上げた。
「降りてもいいんだよ!?」
チームルームは、ザワザワしている。
そんなの我関せず。
モニター越しの太平は、ガツガツ進む。
すると。
「八萬だ!!」
実況が吠える。

「ロン。8000・・・。」
太平が、アガった。
タンヤオ・三色同順・赤3→満貫だ。
寅野が打ち込んだ。

東4局は、太平が1000・2000で上がる。

南場も、リーチこそ量産されるものの。
アガリは、鯵沢と太平のみの展開となった。

オーラスも、金城の大逆転の夢を打ち砕く鯵沢の満貫で、第3試合を終えた。
こうして、1日目が幕を閉じた。

残り人数は、このように。
桜花隊 残り2人
V-deers  残り4人
乃木坂 残り1人
夕暮れ 残り3人
アイロンマレッツは、全滅リーチだ。

第3試合が終わり、まさかの3連チャンした太平。
第4試合も出場が決まった。
チームルームに戻ってくる。
「戻りました・・・。」

太平の顔を見たら、一目瞭然だった。
目がバキバキだった。
チームは、メンバーもスタッフも慌ててるように見えた。

「ど、どうしましょう・・・。」
「大丈夫だから!みんなついてる!」
「みくちゃん。明日もいつも通りよ!」
すると突然。
「フフフッ。」
「どしたの?」
「フフフフフフフフ・・・。」
太平が笑い出した。
「これはダメだ!完全にぶっ壊れた!」
鳳が、焦る。

「みくちゃん!落ち着いて!」
方々から聞こえる。
プレッシャーで暴走してしまったようだ。
「ハハハハハ・・・。」
笑いが止まらない。

2分後。
笑いが収まった。
「大丈夫?」
金洗が問いかける。
「はぁ。すみません。緊張しすぎちゃって。」
「体調は、大丈夫?」
「はい。それは全然大丈夫です。」
なんとか、ホッと一息つけた。

「ほら、緊張してる。」
「ですね・・・。」
橋口と鳳は、話した。

「これは、マズいですね。」
「だな。」
「ただ、ジャッジメントトーナメントが終われば緊張も解けるでしょう。」
「そんなものでいけるのか?」
「明日は、明日の風が吹くと言いますし。」
「信じるか。」
「その方がいいですよ。」
遠くから、眺めていた。

日ノ出さんは、明日は来れない。
だから、大将戦になった時点でチームの失格が決まる。
何としても、連対してもらわないと。

橋口には、不安と焦りが隠れていた。
でも、太平を信じなければ。
きっと大丈夫。
そう自分に言い聞かせてた。

つづく。

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