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【写真短編小説】狂った般若たちは暴れ馬に乗った。

みなさん。いつもありがとうございます。
今回の写真短編小説は、怒り×ビジネス×人生のお話です。
お手柔らかにお願いします。


あらすじ


会社を追放された女×社会になじめない男。
2人が織りなす怒りの人生劇場。ここに開幕。
会社の裏切りにあった元ベンチャー企業副社長の彩瀬は、5年ぶりに幼馴染の碧を呑みに誘う。
始まったのは、愚痴大会。
その中で、彩瀬が放った一言が2人の人生を大きく変える。
お仕事エンターテインメント。

メイン登場人物


鬼原 彩瀬(きはら あやせ)23歳
大学在学中に、ベンチャー企業を立ち上げ大成功。
副社長として会社に貢献していた。
しかし、社内の裏切りや乗っ取りで会社から追放。
職なしとなる。
勝気な性格で、負けず嫌い。
甘いものには目がない。

海良 碧 (かいら あおい)23歳
彩瀬の幼馴染。
就活と呼ばれるものにしがみついていたが、会社に勤めてあまりの忙しさに発狂。
体調を崩し、メンタル不調に陥り退職。
自宅で休養中も、徐々に回復に向けて外出したりしている。
自分らしさを常に自問自答している。
心配性だが、負けず嫌い。
オタク気質。

では、本編スタートです。
※この物語はフィクションです。
実在の場所などは関係ありません。

プロローグ

「お前の居場所は、もうない。」
「はぁ?」
「残念でしたね。彩瀬副社長♡いや・・・元副社長!」
「私は、会社のために尽力してきた。なのに何よ!この仕打ちは!」
「総合的な判断だ。退職金はきっちり払わせてもらう。」
「ハメたのね・・・。」
「私が引き継ぎますね♡」
「こんなこと言いたくないが、言わせろ。負けたなぁ。」
「んんんんあ赤崎ぃぃぃ!!桃野ぉぉぉぉ!!」
ハッ!
あの言動が頭から離れない。
彩瀬は、眠れなくなっていた。
「もう無理なんかな・・・。」
そうつぶやくと、ポロリと涙をこぼした。


第1話 咆哮の先に待っているもの

彼女は、実家に戻っていた。
「働きすぎだったのよ。ちょっとは休みなさいよ。」
「うん。」
母にも、無気力な返事を返す。
彼女は、会社を辞めてから1週間がたつ。
辞めてではなく、追放されてが正しいだろう。

彼女の名前は、鬼原彩瀬。
聞く人が聞けば、すぐわかるビジネスの顔だ。
彼女は、大学在学中に仲間とともに会社を立ち上げた。
その会社は起業から1年ほどで年商1億。
2年目で5億。3年目で年商10億を突破した。
次世代の大企業との呼び声高いベンチャー企業の副社長だった。

しかし1週間前。
コンコン。
「失礼します。」
「おう。鬼原。」
「何?話って。」
「結論から言う。お前には会社を辞めてもらう。」
「はあ?私が辞められるわけないでしょ。」
「タダでとは言わない。しかしセイレーンプロジェクトの統括責任者として責任を取ってもらう。」
「あのプロジェクトは、あんたが統括責任者だったはずよ!」
「じゃあ。この書類をどう説明する。」
書類を投げつける。
「これ・・・。」
「どっからどう見てもお前の署名だよな。」
「で、でも・・・。あんたが辞めればいいじゃない!」
「俺は社長だ。辞めたら会社がパニックになる。」
「私が代理を務めるわ!会社を守ってみせる。」
「ほら出たな。野心家め。」
「言わせたのね。最低!」
「俺から言えることはもうない。今までありがとう。」
コンコン。
「失礼します。」
「おう。ちょうどいいところに。紹介しよう。新副社長の桃野くんだ。」
「お疲れ様です♡」
「自分の女を優遇するなんてクズめ!」
「何とでも言えよ。お前の居場所はもうないんだからよ!!」
「残念でしたね。彩瀬副社長♡いや・・・元副社長!」
「私は、会社のために尽力してきた。なのに何よ!この仕打ちは!」
「総合的な判断だ。退職金はきっちり払わせてもらう。」
「ハメたのね・・・。」
「私が引き継ぎますね♡」
「こんなこと言いたくないが、言わせろ。負けたなぁ。」
「んんんんあ赤崎ぃぃぃ!!桃野ぉぉぉぉ!!」

こんなわけで、会社から追放を食らった。
それで、誰とも会っていない。

「彩瀬~。誰かとごはんでも行ってきたら?気分も変わるわよ。」
「うん。」
そうはいっても、誰にも会えないこんな時に。
ふと、思い出した。
アイツなら・・・。
スマホを取り出す。
そっか。連絡先知らねえわ。
どうしよう・・・。
彩瀬は困っていた。
アイデアを思い付いた。
「お母さーん。小学校のさ電話連絡網って残ったりする?」
「連絡網?あの電話の横当たりにまとめてあるわよ。」
「サンキュー。」

電話に向かう。
探しているとすぐ見つけた。
小3か4ぐらいまでは、ギリギリ電話の連絡網もあった世代だ。
探し人の名前を見つけ、賭けではあるが電話してみた。

プルルルル。
「ハイ。もしもし。」
ちょっと高めの声だった。
お母様かな?
「あ、恐れ入ります。そちら海良さんのお宅でしょうか?」
「はい!海良ですが・・・。」
「私。碧・・・じゃなくて海良碧さんと高校まで一緒だった鬼原彩瀬と申します。」
「え?」
「いや、あの・・・碧さんがいらっしゃれば変わって頂きたいのですが・・・。」
「イタズラですか?なら切りますよ。」
「いや待ってください!碧さんに、修学旅行で一緒だった鬼原彩瀬と言えばわかりますから。」
「・・・ホンモノなの?」
「と言いますと?」
「自分が碧ですが。」
「碧?」
「もう1つだけ聞いていい?本人しか分からないこと。」
「もちろん。」
「高校の時。クリスマス近辺で偶然会った場所は言えます?」
「み、みなとみらい!」
「ホントなんだ・・・。どうしたよ急に?」
「やっと信じてもらえた・・・。あのさ。今時間ある?」
「あるけど・・・。」
「今夜空いてない?一緒にご飯でもどうかと思ったんだけど。」
「わざわざ家電で。いいけど。」
「じゃあ。夕方5時に高校近くの駅でいい?」
「オッケー。じゃ行くわ。」
「待って。携帯の番号言っとくわ。」
「んー。じゃまたあとでー。」
電話を切る。

16時45分。
約束の時間に間に合わせるために、15分前に到着した。
しかし、上には上がいるものだ。
先に、パーカーにジーパンの碧が到着していた。
「よっ。」
「変わんないわね。あんたも。」
「噂はかねがね。」
「じゃ行こう?」
「うん。」

海良碧は、彩瀬の幼稚園からの幼馴染だ。
何でも言える反面。すぐけんかになる。
でもって、かなりめんどくさい。

個室の居酒屋に入る。
彩瀬は酒を飲み始めた。
どうやら、碧は会社に就職したものの、色々あって発狂。
その後体調、メンタル不調のWパンチで会社を辞めざるを得なかった。
簡単にいえばうつだという。

1時間ぐらいしたら、彩瀬は真っ赤になりベロベロだった。
ちなみに、碧は酒が飲めない。シラフで話を聞いていた。

「つーかさ。大企業の幹部がこんなベロベロでいいのかよ。」
「うるさいわねぇ。もう私は幹部でもヒラでもねえですので。」
「会社辞めたのか?」
「ピンポーン!あのクズ崎め。」
「大変だったんだな。」
「私はもう終わりよ!人生破滅よ!!」
「そんなことないって。」
「もうどうでもよくなってきちゃった。もう1回起業して借金生活でもしてやるわ!!」
「どういうこと?」
「残った金で、仕事やるの。仮に会社に転職しても嫉妬祭りでしょ。めんどくさいわぁ~。」
「ほぉー・・・。」

碧が考え込んでしまった。
「何?辛気臭い顔しちゃって。」
「正直、お前には人生預けてみようかな?」
「はあ?何言ってんの。」
「自分も人生どうでもよくなったんだよな。借金減るし万々歳だろ。」
「マジで何言ってんの?」
「多分低月収のクソみたいな人生歩むんなら、0か100かの方が面白いし。」
「あ?なめんなよ。」
「上等だ。やってやるよ!!」
「本気なのね・・・。」
「地獄を見た自分たちが這い上がってやろうぜ。」
「面白いわぁ。目にもの見せてくれるわ!!」
2人の戦いが始まる。

第2話 勝負の学び舎

「あの話、冗談だと思ったんだけど・・・。」
彩瀬が、頭を悩ます。
「本気だよ。」
彩瀬と碧が、カラオケボックスの1室で打ち合わせをしていた。
「でも、何するかよね。」
「うーん。」
「なんかの、プログラム作ろうか?」
「ありきたりだな。」
「はあ?商品はウチにとっての財産よ!経営したことないのが言わないで。」
「アイデアがねえだろうが。」
「もう!」
すぐケンカになってしまう。
すぐに、冷静に戻った碧が話しかけた。
「でもさ、そういうプログラムとかソフトって作れないんじゃないか。ガチ目に。」
「はあ?何よ。」
「自分は退職するときに、誓約書を書かされたぞ。他者に持ち出さないって。」
「あ。」
「もし作ったら、裁判沙汰になるかも。さらにきついかもしれん。」
「あのクズ崎なら、やりかねないわね。」
「やめとこう。」
「あーあ。学生時代に戻りたいな。何も考えない。青春してたな。」
「うーん。そうか。いいな。」
「何が?」
「学校作ろう。」
「無理よ!そんな。」
「小学校とか普通教育じゃない。専門学校だよ。」
「ああ!」
「すし職人のがあるだろう。ああいうのだ。」
「でも何のジャンル?大体あるわよ。」
「丁度いいのがあるんだよ!プロ雀士の専門学校。」
「プロ雀士かぁ。」
「今。麻雀のトップリーグのリーグ・ザ・スクエアってあるだろ。他にも将棋や囲碁などのブレインスポーツとして認識されつつある。」
「確かにやるなら今ね。」
「だろ。」
「分かった。その方向で動いてみましょう。」
「うん。」
「でも、本当さ、碧ってアイデアとかの才能えぐいよね。」
「ありがとう。」

ここからの行動力は早かった。
学校の土地、カリキュラムの編成、講師の選抜、年間行事の制定や授業料の検討など順調に進んだ。
ここまで、3年ほどだ。
さすが、4年間副社長として経営に携わっていただけある。
そして、お役所からの認可も降りたこともありプロ雀士の専門学校という新たなジャンルであることから、ニュースでも報道され注目度も高くなった。

しかし。最大の課題がある。
人が足りないのだ。
新卒でも多くて2~3人の採用が限界だろう。
彩瀬は、頭を抱えていた。
「私たち2人が現場に加わるとしてもなぁ。」
「確実に足りないな。」
「どうしよう。」

ピコン。
彩瀬のスマホが、鳴った。
「おっ好きな人かな?」
「違うわよ。でも誰だろ。」
「俺人脈ないしなぁ。」
「ねえ。今から急遽来客が来るんだけどいい?」
「ここに?誰?」
「私の元同僚。常務兼人事部長をしてたの。」
「お偉いさんか。」
「でも私とタメ。つまり碧ともタメね。」
「いいよ。」
「じゃあ連絡するわね。」

1時間後。
「あーやーせー!」
ひょいと顔を出した。
「りさー!」
「久しぶりー!」
「元気にしてた?」
「大変だけどね。開校に向けて頑張ってた。」
「そうかぁ。あ、これいちご大福。好きでしょ。」
「おいしそう!」
「この方が、婚約者ですか?」
「違うわ!」
「こいつとは何も。申し遅れました。私、海良碧と言います。」
「否定すんな!!ちょっと悲しいわ!」
「フフッ。彩瀬の元同僚の刀村梨沙です。タメなんですよね。りさって呼んでください。」
「梨沙さん。」
「そうです。そうです。」
「気にしないで。女の子とあまり話してないだけ。」
「そうなの?」
「ええまあ。」
「じゃあ一回りしたら応接間に。」
「いや、回ったら教室で話さない?」
「いいよ。」

学校の案内を終えた。
使用予定の教室に案内した。
「お茶どうぞ。」
「あ、お気になさらず~。」
「いちご大福うま!」
「でしょ。ニュースに出てたままのこの学校いいわね。」
「内装は清潔感があってこだわってる。」
「で、2フロアよね。」
「うん。」
「いいんじゃない?」
「ただね。人がいないのよ。」
「そっかぁ。私ここで働いてもいいけどな。」
「またまた冗談言って。」
「元上司が暴走しちゃってね。大変だったのよ。」
「うん?元上司?誰のこと?」
「赤崎くん。」
「えっ?まさか・・・。」
「私もやめたの。」
「えっ!?辞めちゃったの?」
彩瀬は手を覆った。

「うん。」
「マジか。」
「だから働いてもいいよ。ここで。麻雀は結構強い方だから。」
「そうなの?」
「好きな役は、リーチとかホンイツとかねぇ。麻雀好きの事務員さんとかもありか。」
「いいの?」
「もち。あんたには恩義があるしね。」
「そんなですか?」
「ええ。元会社に梨沙がいなきゃ一緒に立ち上げに参加しないって言ってくれて。私も入れてくれたんですよ。」
「いい奴だな。」
「私をなんだと思ってるの?梨沙は人を見極めるプロなんだから。」
「フフッ。じゃああの人たちも誘いなさいよ。」
「あの人たち?」
「旧彩瀬派のみんなよ。」
「ああ。」
「お前、派閥会長だったの?」
「うるさいなあ!恥ずかしいから!」
「碧くん。すごいんですよ。4~50人はいたかな?その派閥の子は、とにかく真面目な子たちが多くて。」
「す、ストップ・・・。」
「でもその子たちも、実は8割近くは辞めたのよ。」
「ええ!?」
「連絡とってみる?一応私は彩瀬派閥のナンバー2だったから。」
「言わんでいいわ!でもまあいいわ。自分で探すよ。」
「そう。あんたらしい。分かったわ。じゃあ1つだけ噂。赤崎派閥から白石派閥に鞍替えが多いらしいわ。」
「ふん。あんたもゴシップ好きね。」
「へへっ。じゃまったねー。私は契約に来るから。」
「じゃあねー。」
梨沙を見送った。
「良かったの?」
「うん。迷惑かけられないし。」
「そっか。じゃ人捜しますか。」
「うい。」

第3話 学び舎の希望と光が重なりし時。


「よっ!」
「あ、梨沙さん。」
「あれ?彩瀬は?」
「今呼んできます。」
「はいはい。」
「あーちゃん。梨沙さん来たよ。」
「ああ、梨沙。」
エントランスに彩瀬が向かう。
「あーちゃん来たよ!あーちゃんって呼んでるんですね。」
「まあ。」
小声で怒りにも似た声を発した。
「あとでなんかおごりなさいよ?」
「いやだよ。」

「梨沙。きょうは応接間に。」
「いや。入るかな・・・。」
「どういうこと?」
「実は他にも人呼んでて、みんなどうぞ。」
すると、男女が入ってくる。
「はっ!」
「鬼原副社長お疲れ様です!」
「梨沙さん。この方々は・・・。」
「碧くんには説明まだよね。これが彩瀬派のみんな。仕事決まってる人は大多数だったんだけど。タイミングが良かった11人だよ。」
「へぇすごい。」
ゾロっと並ぶと迫力がすごい。
「そんな中でも、重雄さん。」
「久しぶりだね。」
「重雄さん。来てくれたんですか?」
梨沙に呼ばれて、50代の白髪交じりの男性が前に立つ。
「うん。元は教師をやっていて役に立ちかったんだよ。学生の相談とかは聞けるかもしれないね。」
「ええじゃあ。その他のみんなも?」
「みんな働いてくれるって。」
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします。」
「よろしく~。」
「うっうっ。ありがとうございますぅ。」
彩瀬は、涙ながらに話す。
「梨沙さん。ありがとうございました。」
「いいのいいの。こんなことだろうと思ったから。」

紆余曲折あったが、開校にこじつけた。
学校名は「すずめ専門学院」
1期生は、32人。各クラス16人ずつとなった。
2年間通い、卒業というシステムだ。
実践科目もありながら、実際にプロに必要なカリキュラムとプロ雀士からお墨付きを頂いた。

3年後の12月最後の日曜日。
2期生が卒業し、旅立った。
校長の彩瀬と相談室長の碧は、とあるイベントに招待されていた。
彩瀬は、灰色のパンツスーツ。
碧は、黒のスーツに紫のネクタイを着けていた。
「ここね。」
「行こう。」
みなとみらいの外資系高級ホテル。
案内板を頼りに歩く。

麻雀天下統一戦 関係者の皆様
対局者の皆さま 4F宴会場「ローズ」控室「サクラ」
招待客の皆さま 4F宴会場「椿」

「すずめ専門学院の鬼原と海良です。」
「かしこまりました。受付完了です。」
「ありがとうございます。」
宴会場に入っていく。

そこには、メガネ姿の高身長な男性がいた。
「おう。彩瀬。」
「あ。白石。」
白石弥太郎。
かつて彩瀬が働いていた会社の専務だ。
立ち上げメンバーの1人であと2人しかいない。
「あのさ、堂々とパクってたわよね。うちの仕組み。」
「あいつの判断。」
「やっぱりか。てことはアイツも来てるの?」
「あとからくるよ。無理だっつったんだよ。でもやるーって。」
「まあ。ウチの子たちが勝つから。」
「その方がありがたい。」
「どういうこと?」
「この次の役員会であいつを会社から追い出す。生徒が、この大会で優勝しようもんなら不信任決議案は通らない。逆に俺が会社を去ることになるだろうな。危険な賭けよ。」
「ほお。」
「成功したら、戻ってこなくてもいい。提携を結ばないか?」
「考えとくわ。ただ、私みたいに返り討ちに合わないでよ。」
「その辺抜かりはない。言ってたら来た。」

赤崎と桃野だ。
「これはこれは。裏切り者。」
「社長面白ーい!」
「どうも。」
「こちらは?」
「相談室長の海良さん。」
「海良です。」
「海良さん。このクズ大変でしょう。」
「いえ、全然。」
「まあいいです。負け犬の皆さん。私はこれで。」
「失礼しまーす。」
「白石。ちょっと出てくる。」
「もう出んの?」
「すぐ戻るって。」
そう言い残して、宴会場を去った。

「マジで許さねぇ。」
「碧、顔に出てた。」
「ふざけんじゃねえぞ。アイツ。クズはおめえに決まってるだろうが。」
小声でつぶやく。
「なんでそんな言い返すの?私が言われたんだし。」
「たかが5年の付き合いだろ。なんでそんな奴にクズって言われる道理が分からなくて。」
「ん・・・ありがとう。」
彩瀬は少し恥ずかしくなった。
そしてキュンとした。

対局を控える対局者があいさつ回りに来た。
「彩瀬ちゃーん!!」
「おっ!晴香ちゃんじゃない。」
「海良さんもいる!」
「やっほー。」
「鬼原校長先生。海良さん。ご無沙汰です。」
「これは、潤くん。良かったね。」
「ハイ。全力を出します。」

明田晴香と篠口潤。
2人とも、2期生だ。
2人は、タイトルホルダーしか参加できない麻雀年間最強を決める麻雀天下統一戦の準決勝に残り、明田はストレートで、篠口はプレーオフを制し決勝に残ったのだ。
「頑張ってね!」
「うん。」
彩瀬は、2人の肩をポンと叩いた。

結論から言うと、明田が2半荘トップの完全優勝。篠口が2位となった。
後に、このワンツーフィニッシュが入学者激増につながるのは彼女たちは知らない。
彩瀬と碧は、地獄から這い上がり、お金だけでなく仲間・教え子・愛情というかけがえのないものを手にした。

余談だが、赤崎社長と桃野副社長の不信任決議案は、可決され会社から追放されたらしい。そして約束通り、彩瀬は古巣との提携を了承した。

エピローグ

「ねえ。」
「ん?」
「言いたいことがある。」
「じゃ自分からも。」
「いや。私から。」
「オッケー。何。」
「今回長い時間はかかったけど、感謝してる。ありがとう。」
「自分もだよ。あれがなければもうダメだったかもしれん。」
「お互いさまってことね。」
「まあな。」
「で、言いたいことって?」
「ああ。その件だった。」
「あっそうだったんだ。」
静かではあったが、みなとみらいの夜景が祝福してくれるようだった。
「祝わなけりゃあね!じゃあ次は、祝杯のスイーツよ。」
「まだ食うんだな。」
「・・・。あぁ?」
「いや、一杯食ってたから。こっからもう1軒行くんだなって。」
「悪い?」
「いや悪かないけど。」
「もちろん、碧のおごりね。」
「はあ?なんで俺が払うんだよ!」
「当たり前でしょ!レディーにそんなこと言うなんて・・・。」
「ああ、わかった。上等だよ。一番高いスイーツ食え!おごってやる!!」
「はあー。後悔しても知らないわよ!!本気で後悔させてあげるわ!!」
いがみ合っている彼女たちだが、結局仲がいい。
自分たちらしい祝福になった。

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