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18-世界は広いよ!新しい人生を生きな!

【前回のお話】

(806字・この記事を読む所要時間:約2分 ※1分あたり400字で計算)

 さて、無事に(?)日本の大学院に入学する方向で私のこれからが決まったのだが、その前にもうひと仕事あった。

 ズバリ上海で借りっぱなしのアパートの返却。

 そう、お忘れであろうが、当時私は上海でリモートワークをするという前提で例の会社に入ったのだ。

 何時仕事が本格的にスタートしても大丈夫であるよう、環境を整え備品も揃えたのに……当時の苦労が全て無駄になってしまった。


 数ヶ月ぶりに戻ったアパートの空気はどんよりとしていた。

 布団にはカビが生えており、ベランダは泥だらけ。
 棚に保存していた米からはカサカサと小さな虫が湧いていた。

 小さなタメイキをついて、埃かぶったソファにどっかり座った。
 今までの日々はなんだったんだろう、なんでこんな経験をしなければならなかったんだろうと悲しくなった。


 でも、もういい。


 このアパートを片付けて、過去にけじめをつけよう。

 再出発するんだ。


 大家さんも優しい人で、事情を説明したら契約期間内にも関わらず「違約金はいらないよ」と言ってくれた。
 それは申し訳ないと慌てていると、にこっと笑ってーー

 「おばちゃんはね、あんたが気に入ってるのさ!だから気にしない、気にしない」

 更に私の背中をぽんぽんと叩いてくれて、こう言ったーー

 「辛かったろうに。でもこれからだよ。若いんだし。
  世界は広いよ!ここを出たら、新しい人生を生きな!


 溢れそうになる涙をこらえながら、大声で「ありがとうございます!」とお礼を言った。

 なんだかんだ言って、結局私は色んな人から助けてもらっているんだなとしみじみ感じた。


 独りぼっちで、孤独で心細い時だって、見えないところで多くの愛がせっせと働いている。

 私を助けようと、支えようと、たくさんの温もりがたえず動き回っているのだ。


 ガランときれいになったアパートに最後の一瞥を投げると、両手に力を込め、ぐっと扉を開いた。


 まぶしい日差しを浴び空港に向かいながら、私は自分がどんどん生まれ変わっていくのを感じた。

(つづく)

📚感じ取れても感じ取れなくても、いつもどこかで愛されている


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