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【前回のお話】

(1118字・この記事を読む所要時間:約3分 ※1分あたり400字で計算)

 その後、私は無事大学を卒業した。

 ルームメイトともお別れ。
 私は一人暮らしを始め、小さなアパートの1室を借りた。

 場所は通っていた大学の近く。
 そう、私は上海に残ることになったのだ。


 もちろん、Y社長の会社は日本にある。
 が、「植物園との事業を専任で色々やって欲しい。更に時々おつかいで現場にも行ってもらいたい」とのことで、そのまま留まるよう指示された。

 とはいえ、上海に会社の支社は無かった。

 勤務場所はどうするかと尋ねると、
 「大丈夫、私の友人が上海にいるからね。
  その友人のオフィスで、デスク一つ分のスペースを貸してもらうよう交渉するよ。
  それまでは自宅で働いて下さいね
と返事が来た。

 ちょっぴり違和感を持ちつつも、新入社員の分際で「はい」としか言えなかった。
 新居の一室を整理し、パソコン設置し、資料を並べ、文房具を揃え……仕事用のスペースを作った。

 今思い返せば、私は一足早く「リモートワーク」というのをやっていたことになる。(これが当たり前の時代がこれからやってくるとは、当時は思いもしなかった)


 何もかも初めてのことばかりで、心細かった。
 将来に対しては期待いっぱいだったが、同時に不安もあった。

 正式に仕事スタートするまでの日々はとにかく落ち着かず、いつもそわそわしていた。

 幸い、上海にはまだ頼れる人がいた。

 そのまま大学院へと進学した友人。
 私に継いで同じ大学に入学した妹。
 教会の仲間達。

 不安な時は、いつも彼らが傍にいてくれた。


 なんやかんやでその後、ようやく引越しが一段落した。
 準備万端だ。

 「さていよいよ仕事開始!」……と思った矢先に、急にY社長から「日本に来い」と連絡が入った。

 「一応研修だけでも受けさせようと思ってな。」
  まぁ、こんな小さな会社で、学べることは限られてくるかもしれませんが、はっはっは」

 受話器からY社長の朗らかな笑い声が響いた。

 「宿泊や飛行機の手配はIさんがしてくれるよ。
  メールでスケジュールの詳細を送ったから、チェックしたまえ。
  でわでわ~」


 (確かにY社長はマイペースな方だとは思っていたが、まさか事前になっていきなり日本に来いなんて……)

 電話を切った後、私は思わず深いため息をついた。

 (まぁでも社会人にもなると、こういった急な事態にも早急に対応しなければならないと聞くし、これも訓練だよな)

 そう自分に言い聞かせながら、Iさんからのメールを開いた。
 ボーッと日程を確認しながら、何とか気持ちを明るくしようと、考えを変える努力をした。

(たくさん学べる良い機会だし、新しい経験も待っている、成長出来る!)

(久しぶりに日本にも行ける!せっかくだから楽しまなくちゃ!)


 こうして、私は借りたばかりのアパートを後に、即座荷物をまとめ日本へと飛び立った。

(つづく)

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