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【前回のお話】

(973字・この記事を読む所要時間:約2分 ※1分あたり400字で計算)

 私に、何か一つでも取り柄があるのだろうか。

 皆が寝静まった夜、私はぼんやり天井を見上げながら考えた。


 隣の部屋からルームメイトの寝言がぽつりぽつりと聞こえる。
 そういえば、親友は卒業後、実家に帰って店の手伝いをするとか言ってたっけ。

 同級生達は次々と進路を決め、既に理想の会社から内定をもらった子もいれば、大学院を目指そうと試験勉強を始めた子もいた。
 卒業後、出会った彼氏・彼女とそのまま結婚し家庭を持ちたいと言う友達もいた。


 私は......

 瞼が段々と重くなり、意識が朦朧となっていく。


 夢の世界。

 会社の内定を手にし、嬉しく家族に報告している自分がいた。
 友達からはおめでとうとお祝いされ、明るく暖かい雰囲気に包まれていた。

 明るい未来。
 自身に満ちた私の姿。


 ああ、どうか目を覚まさずに......
 このまま......


 翌朝。

 はっと気付いて時計を見ると、既にお昼近くになっていた。

 携帯がチカチカ光っている。電話だ。
 寝惚け眼で画面を見ると、「母」と表示されていた。

 「もしもし」
 「なぁに今起きたの?何回もかけたのに全然出ないと思ったら」
 電話越しに不満そうな声が聞こえてきた。

 「まあ良いわ。ところで、就職についてなんだけど」

 (何だよ......)
 イライラする気持ちをおさえながらも、無言で聞き続けた。

 「お母さんに日本人の知り合いがいてね、仕事を紹介してくれるそうよ。ある日本の会社に通訳が出来る人が欲しいみたいで、あんたどうかなって。
  連絡先送るから、コンタクトしてみて!じゃあね」


 (相変わらずすごい行動力だな......)

 電話を切ると、早速ショートメッセージが届いていた。
 メールアドレスと電話番号、それに相手の名前。

 (通訳か......この前面接した会社に日本語力をボロクソ言われたばかりだけど、私に出来るのだろうか)

 でも、悩んでいる暇はない。

 いちかばちかでも行動しないと、このままだと正真正銘の「ニート」になってしまう。

 パソコンにスイッチを入れ、拙い日本語でメールを打ち、送信した。


 その日の夜、返事が来た。

 さすが母の知り合いだけあって、こちらもすごい行動力だった。
 話は着々と進み、早速面接をすることに。

 しかも当会社の社長が直接面接してくれるのだそう。

 出張で丁度私の住んでいる地域にも寄るので、せっかくだからそのまま会ってみようということだ。


 そして3日後。

 一張羅を身に、履歴書が入ったカバンを握りしめ、私は約束の場所へと向かったーー

(つづく)

📚取り敢えず行動する!そうすれば何かが変わる


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