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走パフォーマンス向上の足を引っ張る「常識」とは?

ランニングの楽しみ方というのは人それぞれありますが、おおまかに分けると3つあるなーと思ってまして。

一つは「走ってて気持ち良い」というような「健康」という文脈。二つ目に「仲間と一緒の時間を共有する」というような「交流」という文脈。そして三つ目に「速く走りたい」というような「成長」という文脈です。

どの楽しみ方を取ってみても、ランニングというスポーツは僕たちの人生を豊かにさせてくれます。

ただ、どの楽しみ方も、そのパフォーマンスを高める、つまりもっと楽しむためには、それなりにコツが必要で、やり方が適切でなければ、「健康」も「交流」も「成長」も損なうことになります。

そこで今日は、ここでいう「成長」つまり「速く走る」というパフォーマンスの向上を妨げてしまう「常識」について考えてみます。

とはいえ今日の内容は、読んですぐにあなたの走パフォーマンスを向上させるような性質のものではありません。心構えについての話になります。

しかし、この心構えが基礎としてあるかどうかで、パフォーマンスのスケールの仕方が全然違ってきます。

もしかしたら、ゼロベースランニングクラブのみなさんからしたら「またその話かよ」となるかもしれませんけど、「速く走る」というパフォーマンスアップに夢中になればなるほど、見失いがちな心構えでもありますから、定期リマインドとして捉えていただけますと。

では、僕たちの走パフォーマンス向上の足を引っ張る、その「常識」とは何かというと…

「ランニングとは、前に進もうとする運動である」です。

これ、一体どういうことかというと…

ここでいう「走パフォーマンスが高い状態」のことを、「ランニングエコノミーが高い状態」と定義しましょう。

ランニングエコノミーとはざっくりいうと「少ないエネルギーで走れる『燃費の良さ』」のこと。そのためには、エネルギーを浪費しないランニングスキルが必要になります。

では、エネルギー消費を抑えるために必要なランニングスキルとは、どんなスキルなのか?

それは「腱の弾性エネルギーを駆使するスキル」です。

腱の弾性エネルギーを駆使することによって、糖や脂質を使って作り出すエネルギーの消費を抑えることができます。

では、腱の弾性エネルギーを駆使するにはどうすれば?

そこで重要なのが「重力」と「回旋力」の利活用です。

では、「重力」と「回旋力」の利活用を促進するためにはどうすればいいんでしょうか?

それは「後下方への移動」です。ここが今日お伝えしたいポイントになります。

「ランニングとは、前に進もうとする運動である」

この常識って、たしかにそうなんです。ランニングって、そういうもんです。前に進まないと、ゴールに辿り着けません。

ただ、それゆえに意識が「前方向」に偏りすぎてしまうんです。厳密にいうと「前上方」ですね。走る時って斜め上方向に弾む運動ですから。

しかし、この常識が結果的に走パフォーマンス向上の足を引っ張ります。

最近よく、練習会やオンラインDojoなどでも「後前連続ジャンプ」というドリルをやってますが、このドリルを「前後ジャンプ」と呼ばないことにはこだわりがあります。

後ろにジャンプすることによって、腱の弾性エネルギーを駆使できる。そしてそれによって身体が前方向に推し出される。

前上方に移動したいという欲求を一旦棚にあげて、後下方への移動を挟むことによって、結果的に前上方への移動のパフォーマンスが向上するわけです。

ただ、走る時にはさすがにこのように身体全体を後下方にジャンプする動きを挟むことはできません。そんなことやってたら前方向への移動スピードが落ちますから。

そこで重要なのが「胴体を回旋する」というスキル、なんです。

胴体を回旋させるということは、左半身なり右半身を後方に移動させるわけです。しかしその半身の後方移動は、身体全体の後方への移動を伴っていません。ここがポイントです。

つまり、前上方に進行しながらでも、胴体を回旋することによって荷重側の半身を後方に移動させ、弾性エネルギーを駆使できるようになるわけです。
なんだか字面で説明すると、ものすごくおもおもしい感じになっていまいますね。ちょっとわかりづらいかもしれません。ごめんなさい。ただ、もうここまで書いてると、引くに引けない状況になってます。

もうすぐ終わるので、あと少しだけお付き合いください。

「速く走れるようになりたい」という気持ちが前に前に出過ぎてしまうと、この「後下方に身体を移動させる手間」を省いてしまうために、腱の弾性エネルギーを上手に駆使できないというジレンマに陥ります。

自己ベストを出したい。この勝負に負けたくない。

その想い自体は至って健全で、「成長」の起爆剤になります。

しかし、その想いが暴走してしまうと「成長」にブレーキがかかるのもまた事実。

1秒でも速く前に進みたいのであれば、その中の0.5秒を後ろ方向への移動に「投資」してみましょう。そうすれば、大きなリターンを得ることができます。

今日の内容が、あなたの「成長」のお役に立てたら嬉しいです。それではまた。

高岡 尚司(たかおか しょうじ) ゼロベースランニングクラブ・オーガナイザー 熊本国府高校陸上競技部長距離ブロックコーチ 鍼灸マッサージ師 ランニング足袋・開発アドバイザー ALTRA JAPAN アンバサダー 合同会社エフエイト・代表社員