指折りおりて、夏過ぎぬ

今朝から曇り空をそこらじゅう浮かべていた

カーテンレースの影がゆれるたび燦々と照りつける朝の光に燃えていた身体が緩んでいる

やがて鉛白色の雨雲が次々とかけてきて
私の影はすうっと姿を消した

アルミ製の欄干に降りゆく雨粒
この上なく奇跡に近い出逢いの合図たちに耳を傾けながらふと目を閉じる

どこか遠くでアブラゼミの合掌に混じってひぐらしの鳴き声が聞こえ
いつしか座りこんだあの高台の芝生に腰を下し
真っ暗な夜空に打ち上がる花火が絵を描く
だれかと苦労話に肩を組み励ましあった高架下の酒場で腹を満たした肴が腹を鳴らす

とめどなく降りつづく夏の雨に
いくつもの出逢いと別れが甦る

指折りおりるたびに夏は過ぎてく…

いつしかあがった雨に光がさしこむ
残暑見舞いの絵葉書を取り出して霞みゆく思い出を書き留める

僕たちの合図の三重奏を奏でつづけられるようにと願いをこめて







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