AmethystDissonance
作詞 ZERo
イラスト 葵パキラ
懲りない男と懲りない女
狂気じみた目つきをして女は言う
『もう3度目よ…どうして?!どうしてこんなことするのよ!?どうして!?
店を持ったら、私達、結婚するんじゃなかったの!?』
浮気相手を追い返された男は、不機嫌そうにシャツを着ながら、悪びれる訳でもなく答えた。
『おまえがつまらない女だから、他の女に目が行くんだろ?
それに、40近くにもなって何夢みちゃってんの?
なんで俺がおまえみたいなBBAと結婚しないといけないんだよ、ふざけんな』
『え…?』
男の言葉に、女は愕然とした。
売れないホストだったその男を、ナンバー1にまで昇らせたのは、間違いなく女であったはずなのに…
12歳も年上だったその女は、男のために死んだ両親が残した家を売り、車を売り、OLの仕事だけじゃ足らずにスナックで働き、男の店に行っては高額の酒を入れて、ずっとずっと尽くしてきた。
男と住むためのマンションを購入し、『自分の店を持ったら結婚しよう』と囁いた男の言葉を信じて尽くしてきた。
親の遺産を全て使い果たし、借金をしても尚男のためにそれを貢ぎ
ついには風俗にまで勤め、男のために金を作ったのに…
それなのに…
それなのに…
女はわなわなと肩を震わせると、ふふっと声を漏らして笑った。
男は、見下したような眼差しでそんな女を振り返る。
女は、何故か…微笑していた。
『…ぁっ…!?』
『全部あなたが、悪いのよ…ふふ
ふふふふっ』
男が見開いた目が、ゆっくりと天井を見上げる。
ぐらりと、男の体が揺れ。
引き倒されるように背中から床へと倒れ込んでいく。
女は…笑った。
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