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トラックドライバー怪談1『ミリ波レーダー』

※星野しづくさんのYou TubeCH『不思議の館』にて紹介した、トラックにまつわる怪談をまとめました。実体験やドライバー仲間から聞いた話がメインです。
又聞きしたりもするので真意不明な話もありますがご了承ください。

【ミリ波レーダー】
これは、先輩ドライバーから聞いた話だ。
先輩はこの話を、以前に勤めていた会社の同僚から聞いたそうだ。
       ✳
山根さん(仮)は、勤続10年を越えるベテランドライバーだったそうだ。
その年、山根さんは、勤務している会社で、10年間無事故無違反と言う快挙をなしとげた。
とても見事な記録を作ったため、会社から表彰を受け、会社は、報奨として山根さんのために新車の大型トラックを用意してくれた。

新車の大型トラックに乗り、山根さんはいつもの通り路線便で中京方面に向かった。
キャビンには新車の匂いが充満している。
大型トラックの仕事は、決して楽な仕事ではなかったが、それでも、こうして自分の功績を会社が讃えてくれたことをとても嬉しく感じていた。

山根さんが担当する路線は週に2回、関東と中京を往復する路線。
長時間ハンドルを握るドライバーにとって、キャビンの空間というものは非常に大事な空間である。

会社が山根さんのために用意した新車のトラックは、エンジン音も静かでパワーもあり、最新式のミリ波レーダーを備え、追突防止のため、自動で車間を調整し速度も調整してくれる、あぶない時には自動ブレーキも効くという優れもの。

ハイルーフには大容量の収納スペースも確保されており、運転のし心地は最高であった。

だが、一つだけ、山根さんは気になることがあった。

中京から関東に戻る際、高速のとある場所を走行していると、前方に障害物も車も看板もないのにミリ波レーダーに何かが反応し、自動ブレーキが作動してしまうことだった。

もちろん、トラックのミリ波レーダーとはいえ誤作動はある。

だが、誤作動が起きるポイントは毎回毎回同じ場所。
中京から帰る途中、高速のとある場所を通過しようとすると、必ず自動ブレーキが作動して、思わぬ急ブレーキになってしまうことだ。

「おかしいな…故障なのかな?」

山根さんはそうは思うが、他の場所では、全くではないがそんな誤作動は起こさない。
何故か、高速道路のそのポイントだけで、やけに強く自動ブレーキが作動してしまうのだ。

「ディーラーに持っていった方がいいのかな?」

そんなことを思っていたある日、山根さんがいつも通り、路線の帰り荷を積んで関東に戻っていると、にわかに高速道路が通行止めになってしまった。

その日、全国ニュースにもなった、とんでもない大事故が、山根さんが通過するだろう高速道路上で起こったのだ。
対向車線から車が飛んできて、観光バスに衝突すると言う、あの大事故である。

山根さんは、のちにそのニュースの詳しい情報知ってゾッした。

その事故が起こったポイントとは、山根さんのトラックが、必ず自動ブレーキをかける、あのポイントだったからである。

あと数十分通過が早ければ、対向車線から飛んできた車が衝突したのは、山根さんの大型トラックだったかもしれない。

END








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