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映画感想『エゴイスト』

◆あらすじ◆
14歳で母を亡くし、田舎町でゲイであることを隠して思春期を過ごしてきた浩輔。大人になり、東京で自由気ままな日々を送る彼は、女手一つで育ててくれた母を支えながらパーソナルトレーナーとして働く青年・龍太と出会う。やがて2人は惹かれ合うようになり、時には龍太の母も交えながら、親密な時間を過ごしていくのだったが…。





原作未読。

映像の造りがドキュメンタリータッチで観てるうちになんだか錯覚に陥りそうになった。
それ程役者達が入り込んで演じたとも言えるだろう。

接写多用で心の中の迷いや本音を"表情筋"で表す演技の緻密さには感心した。


R15+指定通り確かにSEX描写はなかなかリアルに描かれてると思う、でもそれは人の営みとしては当たり前だ。

インティマシー・コーディネーターを配して挑んだと言われてるがそれにより明らかに質は上がったのだろう。

宮沢氷魚が『his』に続けてゲイ役をナチュラルに演じてるが今作での彼のベッドシーンの演技は想像以上だった。
彼がインタヴューで語った「失礼の無いように」と言う言葉が脳裏に蘇る。

氷魚演じる龍太は明るく誠実な青年だがクローゼットゲイとして本心をひた隠しながら生きるその心の陰影表現が素晴らしい。

その反面、鈴木亮平演じる浩輔は派手で高級なブランド品を鎧として身に纏い、優雅さを武器に心の脆さを覆いながら生きる。
印象的に映る眉を描くシーンもそのひとつだろう。
心から好きになる相手など現れないと何処かで思っているだろう雰囲気まで感じてしまった。

でもその相手と出会ってしまう…。

お互いを補う様な熱く繊細なラブシーンはやはりあの位の濃厚さが無ければ説得力に欠けるだろう。

そして出会いから何処か靄の様に漂う切なさにも繋がる。

しかし、或る時点からこの作品の明確なテーマが現れると物語は方向転換される。

登場人物達に持たせた役割は完璧。

特に主人公2人それぞれの父親(柄本明)と母親(阿川佐和子)の描き方に気負いや無理矢理感が無くて良かった。

個人的には鈴木亮平演じる浩輔のお仲間トークシーンは解りみが深すぎて一緒に盛り上がっちゃった!
(ゲイ友に前世がゲイだと言われた所以?笑)

物語を通してこのタイトルの意味に到達出来る観客がどれくらいの居るかなぁ?とは思ったけど概ねよく作られていたのは確か。

後半は浩輔の選択が果たして良いのか悪いのか?と言う疑問テーマもそうだが、全てが【母への思慕】からの(擬似)家族創造までの伏線だったのか⁉︎と言う軽い衝撃も覚える。

親孝行、母の理解・・・諦めていた全ての事柄への欲求。

そこで『エゴイスト』と言うタイトルの意味がズンと来るのだ。

性の多様性と言いながらいつまでも認められない同性婚などへの言及も盛り込みながら描かれて行く浩輔の心情。

ラストの落とし所に個人的には【途上】と言う言葉が浮かんだ。

ただ、全体を通して消化不良に陥る要素も無くはないので観る側の捉え方が重要。

「出会ってしまったら仕方ない」愛情表現の利己的さ…

恋人との関係のその先に在るもの…

そう言う選択もあると言う事。


女性客多いかと思ったけど意外に男性客や男性カップルも見受けられた。
おじいちゃんが1人居たけど割と早い段階に来る濃厚ベッドシーンが始まった途端御退場されてた。

まぁ「だよねー」って思ったけどね。







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