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『運び屋』

原題「The Mule」

◆あらすじ◆
家族をないがしろに仕事一筋で生きてきたアール・ストーンだったが、いまは金もなく、孤独な90歳の老人になっていた。商売に失敗して自宅も差し押さえられて途方に暮れていたとき、車の運転さえすればいいという仕事を持ちかけられたアールは、簡単な仕事だと思って依頼を引き受けたが、実はその仕事は、メキシコの麻薬カルテルの「運び屋」だった。



神業とも言うべきまさしくイーストウッド御大の集大成だった!

なんて事なの!
ヤバい、メチャ興奮してる。

90歳にして…いや、90歳だから作れる作品。(本当は今現在89歳)

御大が演じてきた全ての作品がこの中に詰まってた。

もう、ドキドキ💓が止まらんぜ(笑)


予告編のラストでハンドルを握りながらこちらに視線を移すクリント・イーストウッドを見た時「全然枯れてないじゃん!あの頃と変わってない!何でそんな表情できるんじゃぁぁ?」ってゾクゾクしたんだよ!

そんな御大が監督&主演の映画が面白く無いわけない!
期待大で出掛けたよ。
あぁ、マジでかなり期待して行ったわさ!

なのになのにその期待を更にねじ伏せるが如く完全にこっちの果たし状を凌駕する仕上がりだった。

合言葉は『やりたい様にやればいい、でも大切なものを見失うな!』だ。

マカロニ・ウエスタンの頃や『ダーティー・ハリー』シリーズで見せた飄々さの健在が嬉しくて今作もクスクス、クスクス笑わせてもらった。

最近の御大の作品は自分が演じる側じゃないのと実話映画化だからとても真面目味が強かった。
いや、今作が真面目じゃないってんじゃないよでも【この歳でやっと自分が演じられるものに出会った】感が凄く出てる。
御大自身の人生も重なる。

そう、御大が演じるならこうじゃなくっちゃって位にこの爺さんのキャラ作りが素晴らしい!

そして要所に何気無く挿し込むアメリカの実情。
時代から取り残されつつある高齢者が現代の多様性に直面する姿が映し出される。
印象的なのは捜査員に車を停められた男が「人生で一番危険な5分間だ」と繰り返すシーン。
アメリカで白人以外の人種が職質されるのはとても危険な事でそれは今でも変わらない差別の現状だと示してる。
でも、そんな警官ばかりじゃない事もちゃんと描いてる。

運び屋稼業の道中に出会う人種やセクシャリティに関する幾つかのエピソードを通してアールは自分と世間のズレを少しずつ知って行く。
でも知ればそこには理解が生まれる。
実際触れ合ってみれば悪い奴なんてそう多くないんだと言ってる様にも取れる。
劇中【インターネット】を頑なに否定し続けるアールを見てもネット依存な世界への警鐘とでも言えばいいのか?
「もっと実際に会話しませんか?」ってね。

映画の進行と共にアールと言う爺さんの人物像が徐々に示されるがただそれだけじゃ無く【人の内面が蓄積されていく様な感覚】を覚える。

麻薬組織や遣り手の捜査官を目の前に少しも狼狽えない余裕が堪らなく御大流で惚れ惚れするわ。

人生の最後をどう生きるか?
一番大事なものは何か?
(まぁ、私にとって仕事じゃ無いことは確かだけどね)

最初と最後で百合の意味も違うはず。
品評会(競技)用とただ精一杯咲く花壇の百合…深い。

しかしこれが実話とは・・・。

『90歳のエロジジイ』のサブタイトルが見え隠れ…(笑)

そんなジジイは運び屋稼業も鼻歌まじり🎵
一筋縄で行かないのはマフィアでもギャングでも麻取でも無い、命知らずの退役軍人。

家庭を顧みないダメ爺さんだけど百合の栽培に取って代わって運び屋が楽しくなってくるとグイグイらしさが戻って来るのも面白い。
で、息子みたいなマフィアの手下リコに「誰かに使われてるより好きなように生きろ」とマフィアから足を洗う様に諭す。

・・・・・あっ、だから車がリンカーンなの?(笑)

奴隷解放的な?

てか、シカゴからエルパソってすんごい距離(多分、九州から北海道くらい⁈)なんですけど高齢者にその距離運転させるなんてかなり無謀だと思うのはアタシだけなのか?


とにかく全ての場面に意味がある。
やっぱスゲェわ、御大。


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