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映画感想『声もなく』

原題「韓 소리도 없이 / 英 VOICE OF SILENCE」

◆あらすじ◆
相棒のチャンボクとともに犯罪組織から請け負う死体処理で生計を立てる口のきけない青年テイン。ある日、いつもと違う依頼に困惑する。それは、身代金目的で誘拐した11歳の少女チョヒを預かるというもの。1日だけという約束で渋々ながらも引き受けるテイン。しかしトラブルが重なり、身代金が払われる気配のないチョヒの面倒を見続けるハメになるテインだったが…。


障害を抱えまともな職に就けず仕方なくヤクザから死体処理を請け負い生活する青年と中年男。
危ない仕事ではあるがその仕事に徹する事で何とか生きる道筋は見えてる。

だが、ある日思わぬ経緯で女児誘拐に手を貸す事に…。

ただこの誘拐、一筋縄では行かず誘拐した家には長男が居て、誘拐されたのは女児と言う事で父親が身代金を渋る。(ありえねぇ~、めちゃ耳疑ったわ!)
そんな韓国社会の根強い家父長制が女児の解放を長引かせる。

社会から取り残された彼らが一瞬擬似家族の様な生活を送る。

その触れ合いと微笑ましさの描写が繊細であればあるだけその後の厳しい展開にこの作品の真意が見える。


口のきけない青年テインを演じるユ・アインがとにかく素晴らしい。
彼の作品は多分お初だな。
彼のちょっとした表情だけでそこに微妙な感情が見て取れる。
誘拐した少女と出会ってから彼の生活が見え始めるのだが、幼い妹の存在が判りそれ故の少女への複雑な想いがこの物語を牽引する。
不器用さと社会から疎外された彼の人生、でも人の良さも垣間見られてそんな生身の人間の体温が伝わって来る様子に目が離せない。

そのテインの面倒を見る父親的存在がチャンボクだが、彼の背景もまた想像がつく。
引き摺る足、人の良さゆえの腰の低さ・・・闘う事は苦手そうだ。
それでも何とか現状は維持したい、これ以上犯罪行為に深く関わりたくない気持ちは理解出来た。弱者と言うレッテルは自分が貼るものじゃないが一度貼られると剥す事はとても難しい。

でも・・・・

【理不尽や不当さに捩じ伏せられてはイケナイ】


どんな状況下でも毅然と居た少女の佇まいが大人達の対比としてとても活きる。
彼女の存在がテインの行動意思を大きく動かした。

とにかく見せ方が巧みで好きなタイプの作品だ。
特に色彩の美しさは絶品!
全編通してローズ系ピンクの濃淡がキーカラーになって、それがこの映画の持つ人間味の温度を表してる。

2人が売る卵のパックやテインが自転車を漕ぐ夕暮れからチャンボクとテインが死体処理で着替える仕事用の雨合羽と手袋までナントも言えない色のコントラストがイイ。この監督のセンス抜群だな。

個人的にはチャンボクとテインに少女を預かれと無理強いしたヤクザのボスが違うトップにフルボッコにされて死体処理場に運ばれたシーンが大好きだった。いきがって人を人とも思わず他人を威圧しまくるヤツってなんで自分が将来そうされないって思うんだろう?お前いつかヤラレルゾ!っていつも思っちゃうんだよね。今回はそうなって楽しかった( ✧Д✧) キラーン  


殺伐とした内容の中に何処かコミカルさとホッコリ感が漂う秀作。
韓国映画って緩急の付け方がホント巧いって思うわ。 

2022/02/09

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