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『スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~』

原題「仏HORS NORMES / 英THE SPECIALS」

◆あらすじ◆
自閉症の子どもたちをケアする団体"正義の声"を運営するブリュノ。電車の非常ベルをすぐに鳴らしてしまうジョゼフや、重度の症状ゆえに6ヵ所の施設で受け入れを断られたヴァランタンをはじめ、様々な問題を抱えた子どもたちの対応に追われる忙しい日々を送りながらも、"何とかする"の心意気で誰一人として見捨てない施設運営を貫いていた。そんなブリュノの心強い味方が、ドロップアウトした若者たちを社会復帰させる団体"寄港"を運営するマリクで、正義の声にも介助人として多くの青少年を派遣していた。そんな中、監査局の調査が入ることになり、無認可・赤字経営の正義の声は閉鎖の危機に直面してしまうのだったが…。




リアルに切実に福祉の問題はどの国でも重要で最優先課題だ。

無認可なのに預かり依頼が後を絶たない重度の自閉症患者を受け入れるケア施設。
自分の生活など顧みずに真摯に対応するブリュノと彼を支援するマリクが自分達の信念でギリギリ運営していく姿が頼もしくもあり不安でもある。

重度の自閉症であるヴァンランタンを抱え四苦八苦する医療機関がブリュノに助けを求め彼が運営する【正義の声】に彼を預ける事になるのだがそのヴァンランタンを世話する役目を得る若者ディラン(ブライアン・ミヤルンダマ)がこの物語の伏線のひとつを担う。

ディランは自分の居場所を求めて【正義の声】の門を叩くが初めは仕事に馴染めずやる気無い態度を見せる。しかし医療機関や施設に通う内、自分に与えられた仕事の重要さや温かみに気付いていく。

もう一つの伏線は改善しつつあるジョセフ(バンジャマン・ルシュール)が社会に受け入れられるか?と言う課題だ。

そんな献身的且つ採算度外視の施設や協力者を行政は何故援助では無く排除しようとするのか?
病気や彼らの内情を知ろうともしない外野のタレコミばかりを取り込み必要な事に目を瞑り自分達の都合や建前だけで調査するお国の手先に嫌悪を覚えた。

結局、ブリュノと施設に関して聞き込みするも彼らの運営する団体の必要性しか浮かんで来ない。

それでも難癖を付けて認めない相手にブリュノは難題を提示する。

この作品には"お涙頂戴要素"が皆無であるだけにあのシーンには目頭を熱くさせられた。

そう、泣ける映画じゃなんだよね。

懸命に練習したであろうダンスも…

ヴァランタンが小鹿の様に立ち上がって自分の意思を再び手にした時も…

その描かれない背景や内なる努力が見えるから胸が熱くなる。

ブリュノのキャラも彼を取り巻くスタッフや友人達も絶えず動いててホント止まってる場合じゃないんだよな。
それくらい彼らは求められてるのに…


派手さは無いが今目の前にある問題を直視した秀作。

決して少なくない精神疾患に直面したら誰が手を差し伸べてくれるのか?
そこを見極めないと未来を失う。

でも人には生きる権利がある。




◆余談◆
ワタシは仕事柄いろんな人に出会う。
中にはお子さんが障害者だったりダウン症の方も居る。もちろんみんな凄く元気で明るくて何度も会ううちに嬉しそうにしてくれる。ハイタッチもする。なんら他の子供達と変わらない。でも予想外に腕が大きく動いてワタシにぶつかったりする事もあり、そんな時ご両親は「ダメよ」と腕を押さえ込んでしまったり制する事が多い。コチラは全く気にしてないし彼らがスキンシップやコミュニケーションを取りたいのがよく解るからむしろ残念で寂しく思ってしまう。
でもそうしなければ悲しいかな苦情を言う人も少なからず居るのだろうと思う。
だから社会が彼らを受け入れ易い環境整備や受け入れる側の意識改革が必要なんだろうな。


2020/09/15


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