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『Girl/ガール』 

原題「Girl」

◆あらすじ◆
男性の体にうまれたトランスジェンダーのララは、バレリーナになることが夢で、強い意志と才能、そして血がにじむような努力で、難関とされるバレエ学校への入学を認められる。しかし、成長とともに変わっていく体によってうまく踊れなくなることへの焦りや、ララに対するクラスメイトの嫉妬や嫌がらせにより、次第に心身ともに追い込まれていく。


不用意な大人の言葉・・・・
これが一番堪えるわぁ。
どうしてあげたらいいのかと真剣に悩んでしまう。
彼等はララの事をきちんと受け入れて彼女の事を考えてるって事。

 
ララは手術が終わるまで恋愛や性的感情を表に出さない様にしていたんだと思うんだけど心理カウンセラーが「今だって君は女性なんだから好きな男の子が居たらその気持ちを表せばいいんだよ」なんて或る意味そそのかしたりするわけですよ(いやそそのかしては居ないんだけどね、もちろんカウンセラーは感情を押し殺す事無いんだよって自分らしく居なさいって良かれと思ってアドバイスしてるのは重々承知致しておるよ)。

それに乗じてララは積極的にご近所の男子の家へ赴くわけです、何度もね。
で、もちろんそういう行為に至るわけですがララは体は男子のままだからオーラルな行為に出るんだけど相手の男子の興奮したペニスを見た途端拒否反応を示すんだよね。

これって自分もこうなるって言う嫌悪を呼び覚ましてしまったのか?って思ったわけ。

その件に付随してララは自分の恋愛及び性対象を父親に訊かれた時ちょっと曖昧な答えをするんだけどどうやらその辺の感情はずっと持ち合わせていてペニスに対する疑問や嫌悪感は自分がトランスジェンダーだって気づいた時からずっと持っててその嫌悪を相手には持たないで居られるか?って何気に感じてたのかもしれないって思った。

それと成長期って事で周りにいる女子達の身体の変化も目の当たりにして焦るよね〜〜。
胸とかどんどん大きくなってお尻の丸みとかね自分には無い物が目の前でどんどんらしくなっていくんだからね。   

友人の軽い気持ちの性的お遊びも、ララにとってはココロの致命傷にもなり兼ねない。

あと朝勃ちのシーンもね。
このシーンの差し込みが結構効いてると思う。
あのシーンがあるか無いかでララの身体の変化に伴う苦痛がよりこっちに響いてくるなと・・・。

でも成長期の手術の難しさやホルモン療法の副作用的なものもあったりするから身体の酷使と医学的な処置との折り合いはつかない。

でも、この作品はそういう彼女の内面の複雑さが心に刺さるんだよな。


完全にララ視点てのがこの手の過去作との違いなんだよね。

でも演じたのがシスジェンダーの男の子でその辺への批判もどうやら少なくないらしいね。
たださ、バレエダンサーである事が第一条件だし男女問わずオーディションで選ばれたって事だから彼の素質としてもこの役は見事だったと思うんだけどね。

ドン監督は初長編て事だけど幾つかの賞も獲って世に出て来たわけで個人的には色々考えさせられたし観て良かった作品だったな。

台詞をあまり投じないバレエレッスンのシーンが素晴らしかった。
夢(目標)と現実の狭間で技術の遅れを取り戻す為の身体を酷使も、もう直ぐ自分本来の身体になれる期待と喜びがあるからこそ出来ることだって痛烈に伝わる。

思わず目を覆ってしまう程のこの【結論】を決して肯定するものではないけれどそこまで追い詰めてしまうものがいったい何なのか?
成長期の性適合手術への問題はまだまだ奥が深いと言う事なのだろう。



無言の単独レッスン中だけがララが無心になれる時間だったのかもしれない。


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