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『荒野の誓い』

原題「Hostiles」

◆あらすじ◆
1892年、アメリカ。かつてのインディアン戦争の英雄で退役間近のジョー・ブロッカー大尉は、収監されていたシャイアン族の長イエロー・ホークとその家族を、インディアン居留地へと護送するよう命じられる。


2017年の作品だけど何故今?って思ったのでちょっと気になって観に行ったら凄く良かった。

原題『Hostiles』(敵対する者たち)通りアメリカ開拓時代の終焉期、この国の戦争と差別の歴史の発端とでも言うべき侵略者(白人)と先住民であるインディアンを描いた内容。

アメリカはコロンブスが上陸して以来1630年代から戦いの歴史だ。

入植した白人がまぁ初めは平穏に住んでいたわけだがそこは人間の欲で自分達の土地を広げたい気持ちがガンガン湧いてきてそれまで【土地】の所有と言う意識の無かったインディアン達をこれまたガンガン虐殺し領土を広げて行った・・・いわゆるインディアン戦争なるものだ。

この作品の深い所は実はそのインディアン戦争のさなかに南北戦争と言うものもあってそこには黒人奴隷が関わってくる。

主演のクリスチャン・ベイル演じるブロッカー大尉が率いる部下には黒人も居てこの白人・黒人・インディアンと言う三つ巴の絵面が興味深かった。

それ程遠くない過去には奴隷として扱われていた黒人の兵士、捕虜として捉えられ護送されるインディアン達に対してどういう想いがあったのか?その辺のシーンの作り方や表情の映し方がとても巧みで冒頭からずっとスクリーンに集中出来た。

勿論この作品の主題は血で血を洗う様な報復の繰り返しから憎しみ合った異民族がお互いを見つめ、話し、赦し、理解し協力し合って共に生きる気持ちの芽生えなんだがまぁその意味の深さがひしひしと伝わる演出がお見事!!

その中にこの入植から侵略と言う流れの中で10代から軍隊に席を置いているベテラン兵士の描き方が秀逸。

いつ終わるか判らない戦争に精神崩壊を感じるトーマツ(ロリー・コクレイン)の存在自体が若い兵士に戦争の無意味さを語っている。

【仕事】として25年もの長い間多くを殺して来たまるで感情の無い殺人マシンの様な仕事ぶりのブロッカー大尉。敢えて感情を自らの内にねじ込んでいるのかもしれないがその大尉が初めて感情を露わに今まで抑えて来た全てを吐き出すかのような荒野のシーンは見ものだ。
その感情を震わせた理由がこの映画を昇華させてるしクリスチャン・ベイルの演技が瞬きも出来ない程迫真だった。

そしてやっぱりロザムンド・パイクが素晴らしくて・・・好きだなぁ、彼女。

家族を目の前で無残に殺され憎む筈のインディアン達だが彼等と同行する過程で個々としての彼等の人柄を受け入れて行くと言う繊細で意思の強い女性を好演してる。

感情を読むのは日本人の十八番だと思ってたけどこんな作品がアメリカで作られるとは・・・

少ない台詞で見せる全編を通した緊迫感。

血生臭いストーリーでありながら厳かな空気と認め合う尊さを感じさせる秀作。

世界が分断されそうな今だからこそ作られた強い意思を感じる。

「もともとは私達が彼等の土地を奪ったのよ」と冷静に語る或る女性の言葉・・・

人間の必要以上を求める傲慢さが生む憎しみや命の奪い合いに辟易した姿が印象的だった。

クリスチャン・ベイルはこの後『バイス』を撮ってるからいろいろ写真などを観てみるとこの映画に関する画像はほぼほぼ太ってるのが笑える。

本作に出て来るクリスとは全然違うんだもんなぁ~ww。


それとアメリカ西部の大自然の映像はいつ見てもド迫力だな。


《余談》

大昔、インディアン・リザヴェイションへ旅した事が懐かしかった。彼等とランチしたり渓谷を案内して貰ったりして・・・産業の無い居留地では多少の年金とこういった収入を得るしかなかったのだろう。



そして、ティモシー・シャラメは瞬殺扱い

( ꒪Д꒪)


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