見出し画像

『ビューティフル・ボーイ』

原題「Beautiful Boy」

◆あらすじ◆
成績優秀でスポーツも得意な青年が、将来を有望視されながらも薬物中毒に陥る。更生施設から脱走して再犯を繰り返す青年を、献身的な愛で包み込む父。息子のすべてを愛する彼は、愚直に我が子を信じ続ける。


父と息子それぞれの手記を原作とする実話。

宗教でも更生施設でも救えない薬物依存の根本を考えさせられる一作。

何気ない家庭環境の中にもそれに堕ちる些細な要因があるのかもしれない。

ついこの間ラムズフェルドの熱演を見たばかりなのに今作でも息子の薬物離脱と更生を心から願い手を差し伸べる父親役の好演には目を見張るものがある。

スティーブ・カレルって【童貞男】とか【ズッコケ諜報部員】なイメージが抜けなくてどうもコメディ役者な感じがするんだけど今作は『30年後の同窓会』にちょっと近い役かなって思った。

この普通な父親ってのが結構なかなか難しいと思うんだよね。でも彼のその風貌とかホントその辺に居る父親像みたいなのが凄く活きてて素晴らしかった!

で、めちゃくちゃ素晴らしかったのがティモシー・シャラメ君!!
『君の名前で僕を呼んで』もホント美しさだけじゃなくてあのエンディングでかなり持って行かれたクチの自分としては今作のニックには少なからず憎さも感じて完全に彼の手中に嵌ったって感じだった(笑)

何度も何度も「薬は止める」と言いながら施設を抜け出し薬に手を出す主人公に対して正直途中で「もう家族を裏切るのはやめてくれ!」と思ってしまった。
その裏切りと嘘が仕舞いにゃ自分に跳ね返って来るぞってずっと思いながら観てた。

美しい顔がクスリで歪んでしまうのはどうでしょうか?
勿体ないとは思いませんか?

それでとうとう手を尽くしきった父親がお手上げ状態になった時「そうなるよな」って・・・。

がしかし、最後にこの作品が描いたものは「それでも愛し、向き合っていく」って事。
何度裏切られてもありのままの彼を受け入れ寄り添い、傍で見守る事の大事さを語ってる。

【EVERYTHING】

全てを超越して愛していると言う意味で劇中父と息子がハグする時に囁く言葉だ。

いつの間にか息子の薬物依存に翻弄されその気持ちを貫けなくなってしまう父親を責める事は出来ない。
でもこの父は最後もう一度息子をただただ向かい入れ愛情を注ぐ事を決める。

クスリに手を出さない日を一日一日重ねていく苦しい日々を一緒に歩んでくれる人が傍に居る心強さがニックをクスリから遠ざける大きな要素になるんだろう。

しかしアメリカの薬物過剰摂取の現実には驚かされた。
時に逃げる事は大事だが逃げる先を間違えてはイケナイ。

この作品観ててやっぱり同じ薬物依存を扱った『キャンディ』を思い出さずには居られなかったのだよ。
ヒース・レッジャー演じたダンは最後キャンディと決別して独りの道を選んだけど家族を持つ者と持たない者の違いがはっきりあるなぁって思っちゃった。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?