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映画感想『リコリス・ピザ』

原題「LICORICE PIZZA」

◆あらすじ◆
1973年、ハリウッド近郊のサンフェルナンド・バレー。高校生のゲイリー・ヴァレンタインは子役として活躍し、自信に満ち溢れていた。ある日、カメラアシスタントをしている25歳の女性アラナと出会い、一目ぼれしたゲイリーはすぐに猛アタックを開始する。アラナはゲイリーの強引さに閉口しながらも、やがて食事の誘いを受け入れ、2人は次第に距離を縮めていく。そんな中、ゲイリーの共演者の一人と出会い、そのまま付き合うようになるアラナだったが…。


※1:この作品は映画プロデューサーであるゲイリー・ゴーツマンの人生をもとにして描かれたものだ。ゴーツマンは元子役スターからプロデューサーに転向した人物で、この映画は彼が10代の頃にウォーターベッドのアントレプレナーとピンボールパーラーのオーナーとして経験した冒険譚を基とした作品。

※2タイトルの【リコリス・ピザ】とはアナログレコードのスラング。レコードの見た目がリコリス(スペインカンゾウと言う多年草の植物)で作ったピザを思わせるかららしい。"LP"と掛けたシャレ説もある。

70年代、ハリウッド近郊の街と言う設定だけに主人公は子役で活躍してる15歳の少年。その上小生意気な自信家だ。

或る日25歳の女性と出会い一目惚れ(←これにはちょっと疑問を感じる風でもあるが・・・)
全編、この二人を巡るスッタモンダが描かれる。

まぁかなりなドタバタで主人公がなかなかに突拍子も無い言動の数々を繰り出すのでちょっと翻弄され感が否めない。

でもそう感じながら何故かスクリーンに引き付けられるのは当時のファッションや街に溢れる色彩、背景に流れる名曲の数々や特別感の無い登場人物設定だろうか?

いや違う!
この主人公が己の姿勢を全く崩さず我道を突っ走る激走だからだ。
あれよあれよと進んでいく物語のスピード感や如何に!!
もう凡人には思いもつかない様な発想が次から次へと飛び出して「えっ?ピンボール屋って何?」みたいなね。

マジ翻弄だよ(笑)

でも後半は実在の有名人をモデルにした登場人物達をこれまたベテラン俳優のショーン・ペンやトム・ウェイツが演じてたり、ブラッドリー・クーパー演じるバーブラ・ストライサンドの恋人も現れたりでめちゃ楽しめる。


当時のハリウッドの様子が垣間見られるのがちょっとタランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を思い出した。

ただ、後半の個人的見所はもう一つあってアラナが当時LA市議会議員に立候補してたジョエル・ワックスの選挙事務所で働き始めるんだけどその彼が抱えてる問題が或る時浮き彫りになる。

時代と風潮を考えたら全くその通りなんだけどそれが自分のアイデンティティの所在を確認、主張し始めた時代なのかなぁと…。このエピソードはチクッと来たわ。
でも実はこのエピソードには裏話があってワックスの選挙事務所で働いていたのはこの映画のモデルになってるゲイリー・ゴーツマン自身だったと言う事らしい。


とにかく、名優故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子クーパー・ホフマン君がフルスロットルで頑張ってたな。

そして彼の恋人?アラナ・ハイムを演じたアラナ・ケインが凄く印象深い演技を見せてた。
このトラックシーンなんてめちゃくちゃイカシテタからね!

彼女が姉妹でやってるバンドのMVをポール・トーマス・アンダーソン監督が手掛けてるんだね。その繋がりで今回主演に抜擢&姉妹で出演になったわけか?
劇中でも3姉妹役なんだけどソックリで本当の姉妹じゃないの?って思ってエンドクレジットで確認したら血繋がってたわ。やっぱ解るね。


PTA監督作品はちょっと大人作品のイメージがあったが今作は大人との狭間に居る少年達の躍動が凄い事になってた!!

そうだ『ブギーナイツ』に近いか!

そういう意味でちょっと今までとは違った感覚もあったけど観終わった後からジワジワ来る感じなんだよね。青春ものだけど地域性とか今の時代にも通ずる若者の脳ミソの中と言うか発想の豊かさみたいなの凄く感じて無謀さも含め突き進む事の大事さと危うさが描かれてる。

結果オーライなら結局プロセス忘れちゃうのが若さよね~~~。

そんな目まぐるしい物語でした!

父のDNAを受け継いで今後の活躍が期待出来るクーパー・ホフマン君。
頑張って欲しいよん。


父と言えば
"ウォーターベッドを販売している風変わりな男"はレオナルド・ディカプリオのパパなんだってさ。

2022/07/04


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