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短文

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#エッセイ

銚子、カレーボール

銚子に行くのは、高速を降りてからが長い。佐原香取インターで降りて利根川沿いをいく道、途中で橋をわたり茨城に入り、また千葉に戻る道、または潮来終点まで行き、ひたすら茨城側から銚子大橋を目指して千葉に入る道。私は潮来派だった。なぜなら、四車線で道沿いにいろいろな店があったから。 千葉県ルートは一車線で、前に遅い車がいると大名行列のようにつながってしまう。あのいらいらはかなり度合いの高いいらいらだ。なので、潮来。 だが、千葉ルートで行くと途中「プれンティ」という黄色い洋食屋が出

プロ仕様

プロ仕様 プロ仕様とかプロモデルと言われる道具に惹かれる。 幼い頃、家の玄関で何かの書類をちゃちゃっと揃えて、判子を押していくその郵便局員の透き通った判子のケースにあこがれた。判子をブラシで二三回しゃしゃっと擦って書類に判子を押してぺりっとはがして控えを差し出す。その一連の動きに淀みなく、羨望の目で局員を見ていた。何じっと見ているの、といわれ、母親の後ろに隠れる。書類の人はさっと来てさっと帰る。 あとは、改札の切符を切る鋏。あれもプロの仕事道具とあこがれたものだ。切符を

つぎねぷ

1 マウスウォッシャーという機械がある。タンクに水をいれて細いノズルから高圧水が吹き出す。それで口の中を洗い流す仕組みとなっている。歯の間や歯茎のポケットを集中的に噴射するのだが、これが実に気持ちいい、というか尾籠な話だが、そこを噴射するとえもいわれぬ独特の腐敗臭のような、樟脳のような体に住み着いた悪菌のこじ剥がされるにおいが鼻に抜け、それが浄化されているという実感として思われることで快感が得られるというわけだ。 ところで、藤井貞和という国文学者兼詩人がいる。その人の古い詩集

頼まれもせず書く

頼まれもせず書く だいたい朝の九時くらいから書き始める。頼まれもしないのに。 書き始めると頭は霞み目は細くなる。覚醒するどころか、意識が濁り、疲労感が降りてくる。何か義務感に苛まれ、頼まれもせずに書いている。別に、ほとばしる物を押さえきれず書かずにいられないと言うことは全くなく。別にぼんやりしていてもいいものを。 誰かに読んではもらいたい。せっかく書いているものだから。 しかし、読まれることがないかも知れない。おそらく、20年前なら手段は限られていた。当時、個人誌とい

江戸川の釣り

江戸川の釣り ひと夏、江戸川の釣りにはまったことがある。市川の江戸川は河口にあり、海の魚が上ってくる。あえて、誰もねらっていないそれを釣る。ボラ、ハゼ、セイゴ。とくにセイゴにかけては研究した。ハゼはおもりを赤くして、餌を川底に着くように仕掛ければ釣れる。というより割合どんな仕掛けでも釣れる。もっと海の方に下れば200や300行くらしい。 セイゴは違う。水に漂っている餌が好きなのだ。そのため、おもりの上少し糸をつないでに天秤をつけ、あるていど川底から餌が浮くように仕掛けてみ

江戸川の釣り2

江戸川の釣り2 ある夏、江戸川の釣りにはまって毎週末、金曜夜、土曜、日曜と釣りに費やしていた。台風があると、水は茶色く濁り、中国の川のようにコーヒー牛乳の色になる。川上からいろいろなものの残骸が流れてきて水面がうるさくなる。こう言うときにはあれ、が釣れるといわれている。 いつものように二刀流で竿を出していた。ややあって短い方の竿が倒れた。倒れた、と思い竿を持ち上げると重い。明らかに生き物の力が竿に伝わっている。何かかかったな、と思い、リールを巻き上げる。なかなかの力だ。カ

見たライブ

見たライブ ひととき伝でライブのチケットが手に入る時期があった。いろいろな日本のバンドを見た。ブルーハーツ、ゴーバンズ、エコーズ、爆風スランプ、ドクトル梅津バンド、チャクラ、四人囃子。そしてRCサクセション。思いつくまま。 ブルーハーツはドラムの人がとてつもなく早いエイトビートですごかった。四人囃子は今は亡き有明エムザ? だったかものすごく場違いな感じの会場で、観客の年齢層が高かったのを覚えている。音楽会、といった感じの落ち着いたライブ。テクニックを味わうといった感じで。