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プロ仕様

プロ仕様

プロ仕様とかプロモデルと言われる道具に惹かれる。

幼い頃、家の玄関で何かの書類をちゃちゃっと揃えて、判子を押していくその郵便局員の透き通った判子のケースにあこがれた。判子をブラシで二三回しゃしゃっと擦って書類に判子を押してぺりっとはがして控えを差し出す。その一連の動きに淀みなく、羨望の目で局員を見ていた。何じっと見ているの、といわれ、母親の後ろに隠れる。書類の人はさっと来てさっと帰る。

あとは、改札の切符を切る鋏。あれもプロの仕事道具とあこがれたものだ。切符を切らないときも鋏をあわせてリズムを取っている。自動改札になるときに、あの、切符きりのちきちきが聞こえないと耳の不自由な人が困るのでは、という議論があったことを思い出す。いまや、切符を機械に通す人すら少なくなり、電子音に改札の音は変わられている。

そして、私も勤め人でご飯を食べるようになり、支給されたプロの道具は自分の名前の入ったデート印だった。日付を変えて書類に印を押す。その日付は四十半ばにして読みづらくなっていった。老眼だ。しかし、特別、プロの道具と言うものでもなく、どこにでも売っているスタンプだった。

ボールペンはその辺のクリスタルボールペンで手帳は支給された物を毎年使った。プロとしてのこだわりの道具など持ってなかった。その反動か、趣味の物には思い切っていい道具を時折、奮発してしまう。

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