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江戸川の釣り2

江戸川の釣り2

ある夏、江戸川の釣りにはまって毎週末、金曜夜、土曜、日曜と釣りに費やしていた。台風があると、水は茶色く濁り、中国の川のようにコーヒー牛乳の色になる。川上からいろいろなものの残骸が流れてきて水面がうるさくなる。こう言うときにはあれ、が釣れるといわれている。

いつものように二刀流で竿を出していた。ややあって短い方の竿が倒れた。倒れた、と思い竿を持ち上げると重い。明らかに生き物の力が竿に伝わっている。何かかかったな、と思い、リールを巻き上げる。なかなかの力だ。カーキー色の川面になにやらうねるものが出てきた。気持ち悪っ、蛇でも釣れたか、と牛蒡抜きしたら、緑色の細長いくねくねする生き物だった。天然ウナギだ。

そう、水が濁っているときはウナギがつれると聞いていたが本当に釣れたのは初めてだ。それに、アオダイショウのような緑色だとは知らなかった。とにかく気持ち悪くて針からはずせない。

隣にいた釣り人が見に来た。うなぎだね、と。気持ち悪くてはずせないんで、差し上げますからはずしてもらえませんか。いいのかい? といいながらうれしそうに天然ウナギを針からはずした。

じゃ、遠慮なく、と釣り人はウナギを折り畳みバケツの中に入れた。ついでに釣れていた何尾かのセイゴも、いかがですか、と言ってみたら、要らない、と言われた。小骨が多くてね、と。夕暮れ時の川には時折ぴしゃんと魚が跳ねている。ボラだ。秋が深まるにつれ、多くのボラが夕方の赤青い川面に跳ね飛ぶ姿を見ることができた。

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