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「商品コンセプトと技術力のあるメーカーを結び、ユニークな新商品をつくる共創プラットフォームサービスWemakeを提供」前編 株式会社A(エイス) 代表取締役 山田歩さん

本記事は2016年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。

●学生時代の友人と起業したが……

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enmono三木 はい、ということで第135回マイクロモノづくりストリーミング、本日も始まりました。司会は株式会社enmono三木でございます。本日は株式会社A(エイス)にお邪魔しまして、Wemakeというハードウェアのオープン・イノベーション・プラットフォームを運営されている山田さんにお話を色々伺っていきたいと思います。よろしくお願いします。

山田 よろしくお願いします。

三木 会社はお二人でやられているんですよね?

山田 そうです。共同代表で、中高の同級生と一緒にという感じですね。

三木 山田さんと――。

山田 大川です。

三木 のお二人でやられてると。お二人がA(エイス)という会社を起ちあげた流れというかきっかけをちょっと教えていただきたいんですけど。

山田 もともと中高が硬式テニス部で一緒で仲良くて、大学は別々のところへ行ったんですけど、大学3年の時に「遊びで起業してみないか」というオファーを大川からいただいて、その時僕は普通に進学するつもりで――。

三木 大学院の。

山田 はい、大学院に行くつもりだったんですけど、実際にそこでサービスを考えたりとか、プレを作ったりとかしている中で、意外と起業という選択肢自体が現実的に面白そうだなというのが見えてきて。
山田 当時僕らがやろうとしていたことが、一番最初は起業を考える大学生にありがちなアプリを作ったんですけど、当たり前の話として自分がめちゃくちゃ好きな分野でないと突き抜けられないというのがあると思うんですよね。
山田 ほんとにこれで勝負かけるんだったら、自分の好きな分野で勝負しないと絶対勝てないなというのが結構早い段階で思うところがあって。

三木 そうなんですよね。我々がいつもお薦めしているのは、もう「全人生をかけてもいいと思えるくらい好きなことじゃないと続かないので、そういうのを見つけてください」という。

山田 仰るとおりだと思います。僕らの場合は僕がもともと大学が機械工学で、鳥人間コンテスト――人力飛行機を死ぬほどやってたという経緯があったので、やっぱりモノづくりとwebっていうところでなにかできないかというのを、そもそも起業の原始的なプランを考えるきっかけとなって。
山田 2011年の5月から2012年の3月くらい。

三木 2011年5月というと震災直後……。

山田 そうですね。クリス・アンダーソンの『メイカーズ・ムーブメント』が来る直前くらいの時にやったのが、日本初のテックショップ。

三木 日本初のテックショップ! それはどういう?

山田 はい。その時はまだファブラボさんも鎌倉と筑波しかなく、日本における発起人ともいえる慶應SFCの田中浩也先生にもご協力いただきながら我々がビジネスとして成立させられるかたちを検討していきました。

山田 なので、きちんと時間で貸すテックショップという形をとりました。祖師ヶ谷大蔵に庭付きの一軒家を借りて、そこを全部リノベーションして、中古の卸市場で産業用の旋盤とかフライス盤とか3Dプリンター、レーザーカッター、あとはハンダとかグラインダーとか全部買ってきて。

enmono宇都宮 電源はどうされたんですか? 200V3相とか。

山田 もう全部改装していいっていう(許可をいただきまして)。

三木 すごいですね。

山田 あとからわかったんですけど問題物件で、大家がなにやってもいいという感じで改造も許してくれて。そういう経緯があって改装してたんですけど、で、機材も全部買って。

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山田 もともと鳥人間コンテストをやっている時に飛行機のパーツを作るにあたって大田区とか川崎の町工場のおじさんに結構教わったりとか、早稲田大学の中に工場があって、そこに非常勤でスズキとかホンダとかの「試作エンジンを全部自分で削りました」みたいな人が結構来てて。

三木 すげー……。

山田 そういう人たちに教わりながらやってたんですけど。

宇都宮 大学はいいですよね。

山田 大学サイコーです。

宇都宮 社会人になっちゃうとないじゃないですか。場所が。

山田 ないですね。本当に仰るとおりで、そういうモノを作れるラウンジを作ろうということで。

三木 だいぶ早いですね。時期的には。

宇都宮 その当時テックショップは知っていたんですか?

山田 テックショップは知っていました。ちょうど起ちあがったくらいのタイミングだったと思うんですよね。ジャック・ドーシー(Jack Dorsey)がTwitterを辞めてSQUAREの原形を作り始めたくらいのタイミングだったと思うんですけど。
山田 というのを最初、祖師ヶ谷大蔵でやっていて、半年くらいかけて改装していたんですけど、その時はまだ学生で未熟者だったので、周辺の住民に挨拶に行ってなかったんです。

宇都宮 騒音とか異臭ですよね。

山田 本当に仰るとおりでリノベーションの騒音と、怪しげな学生が日々なにかを運びこんでいるというので――。

三木 怪しい宗教かなにかだと……。

山田 これ笑い事ではなくて、世田谷一家殺害事件あったじゃないですか? 結構あの現場に近かったこともあって、不特定多数の人がこういうところに来てるというのはすごい不審がられて。
山田 ある日「トントン」って来て、見たら10人くらいおばちゃんがいて「なにやってんの?」って問い詰められて、区役所にも陳情が行ったらしくて、翌日には区役所に呼び出されて「出てってくれ」っていう。

三木 いきなり!?

山田 結論は「出てってくれ」だったんですけど、「なにやってるの?」って優しく聞いてくれて、すごい応援してくれる感じだったんですけど、周辺住民の感情が結構悪化しちゃって、「ちょっとここでコミュニティサービスをやるのはキツいんじゃない? 正直、僕が得ている情報からすると撤退した方がいいと思うよ」と勧めていただいて。
山田 粘ったんですけど、「本当は言いたくなかったんだけど」と前置きされて、「実は建築基準法違反だったりするんだよね」ということで。第一種低層住宅専用地域というところで、工房とかやると色々めんどくさくてみたいなのもあって、それがダメ押しになって撤退しました。

三木 お金どうしたんですか?

山田 それがすごいありがたいことにウチの母校が全部機材買い取ってくれて。

山田 買った値段で買い取ってくれて、モノづくり工房として再オープンしてくれたんですよ。

三木 えぇ~すごい! 太っ腹な母校ですね。

山田 本当にありがたいことで。わかる人がいてよかったです。

三木 総務部長みたいな方ですか?

山田 いや、もっと若い助教授みたいな方で。元々早稲田にはモノづくり工房というのがあるんですけど、やっぱり機械工学科専用みたいな雰囲気になっちゃってて、3Dプリンターってもっと色んな情報系の学部とか芸術系とか建築系とかと共存しないと価値が出ないんじゃないの? と思っている若手の助教授さんがいらっしゃって、その方はその方で別のモノづくり工房を起ちあげようとしていたところで。

宇都宮 じゃあ、ちょうど。

山田 はい、ちょうどマッチングして。ファブラボのファブナイトっていうイベントがあって、たまたまその助教授から「実は早稲田でこういうことをやろうと思っていて」という話を聞いて、「実は僕撤退するので機材が余ってるんです」という話をして、そのまんま買っていただいて。

宇都宮 でもデジタル系の設備じゃないじゃないですか。設置したとしても、いきなりギアの調整とか……旋盤とか超危ないし。

山田 本格的な旋盤、産業用の旋盤というのは無理で、立旋盤とか小型CNCだけ入れて。

宇都宮 そうですよね。

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三木 それで次の事業をどうしようかと。

山田 2012年3月に畳んだんですけど、2012年3月に僕大学を卒業しているので、一時的にニートになるっていう感じで。大川も大学院へ。

宇都宮 会社訪問とかはしなかったんですか?

山田 就活的なことですか?

宇都宮 はい。

山田 一秒もしてないですね。

enmono (笑)。

山田 就活っていう選択肢は本当に途中からなくなって。

宇都宮 ご家族はなんとも言わなかったですか?

山田 基本的に大学への進学とか起業するっていう選択にあたっても、両親はかなり真っ当な人なので、大手メーカーで働いてますし、結構反対はされるんですけど。親は多分子どもの幸せを祈ってくれてると思うんですけど、子どもの幸せって子どもにしかわからないと思っていて。

山田 だから「俺はやりたいことをやるんだ」というのをひたすら頑固に貫き通して生きてきて、今回も止められたんですけど、「どうせこいつ無理だろうな」というので最終的には応援してくれてという感じです。

宇都宮 工学部で起業するって珍しいですよね。

山田 本当にそうですね。

宇都宮 普通、推薦でほぼ全員埋まっちゃう。就職担当教師とかに言われなかったですか?

山田 ウチの大学はあんまり就職担当が介在してこないというか、学生が求めてきたらやるけどみたいな結構引いたスタンスなので。ウチのゼミの教授にも応援してもらって、本当にありがたい限りで。

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●失敗を経て、本当にやりたいことを突き詰めていった

三木 それでピボットして、Wemakeというコンセプトを考え始めたと。

山田 そうですね。それこそ三木さんや宇都宮さんが言っていることだと思うんですけど、やっぱり「登りたい山ってなんなんだろう」と考えるべきだということを、テックショップを撤退した時に強く思って、「本当にテックショップをやりたかったんだっけ?」ということを考えてみると「そうじゃないよな」と気づいて。

山田 じゃあなにがやりたいのかということを大川と半年間ひたすらディスカッションしたりとか突き詰めていった時に、結局僕らが今感じている問題意識というのが日本にたくさんあるモノづくり資源――例えば大手メーカーの中の人だったりとか知的財産だったりとか中小メーカーさん。

山田 いい技術とか、すごく高いプライドとか持ってらっしゃるのに、なかなかそれがビジネスとしてうまくいってなかったりするのは、一面的な見方だとしてもモノづくりリソースをうまく活用できていないと言えるんじゃないかと思ったんですね。

宇都宮 その当時、その情報ってどこから仕入れたんですか? 直接、工場や大企業と付き合いがあったわけではないと思いますが。

山田 結構そこは愚直にやったんですけど、元々僕が大学が機械工学ということもあって、先輩も同期も教授も元々大手メーカーの研究部門とかにいたりするので、みんなに話を聞いて。
山田 分業化されすぎていて、なかなか思い通りにできないとか聞いていて、「あ、そういう現状なんだ」とか。こちらからアポイントメントを取ってSONYにマイルっていうデザインユニットがあるんですけど、そこはSONYに社員として所属しながらもミラノサローネとかで受賞しているユニットで結構面白いなと話を聞いたりとかして。
山田 で、実は2012年の段階から僕らはenmonoさんを知ってるんです。

三木 あ、そうなんですか。

山田 なぜかというと中小企業の問題意識を調べるにあたって、中小企業の自社商品開発について色々本を書かれている東大の教授がいて。

宇都宮 藤本先生?

山田 あ、そうです。藤本先生の本を読んだ時に中小企業の自社商品開発というキーワードでググったりとか全国200社の中小企業に電話して会いに行ってお話を聞くということをひたすらやっていて。

三木 200社!? すごいですね。

山田 C mono Cのダイショウさんとか、由紀精密さんとか。その時にenmonoさんのことは知っていて、「あ、すごいことをやってらっしゃるところがあるな」ということで。

宇都宮 2012年というとiPhoneトリックカバーという……。

山田 そうです。ニットーさんがやってた頃。

宇都宮 僕らとしても少しは実績が出はじめてきた頃ですね。それまでは仮説ばっかりだったので。

山田 そういうタイミングでしたね。ちょうどコマ大戦の話も出てきたりするようなタイミングで、中小企業の問題意識も直接中小企業の経営者から聞きつつ、大手メーカーの人たちの意見も直接聞きつつっていうので、やっぱり僕らのやりたいことはイノベイティブなモノを作りたいんじゃない。

山田 イノベイティブなモノを作るためのシステムをデザインしたいというのが僕らのやりたいことだよね。ということで、今ミッションとして掲げてるのが、「モノづくりリソースの流動化と、そのマッチングの最適化」です。

宇都宮 そういうコンセプトを民間企業でやるっていうよりは、どっちかというと支援機関がやるっていう方が多かったりしますよね。

山田 そういう考えがそもそもなかったですね。

三木 なんか近いな、僕らのと。

山田 ほんとですか? いいですね。

三木 ワクワクモノづくりで世界が元気になる。元気に「する」んじゃなくて、もう自動的に「なる」。

宇都宮 僕らが仕掛けるんじゃなくて、そうなろうとしているものを……。

三木 ちょっと支えるだけですみたいな。

山田 それめっちゃいいですね。それパクらせてもらいたいです。クリエイティブ・コモンズをライセンスしてもらって(笑)。

三木 世界を幸せにするっていうのは近いですよ。

山田 そうですね。革命し続けるっていうのが重要だと思っていて、1年ごとに最適なモノづくりの形って変わってくると思うので、そこはきっちりサポートしてあげたい。
山田 こういうミッションが先に見えてきて、これを体現するためにはどうすればいいかということで、このプラットフォームの原案が出てきて、モノづくりのみんなをweb上に集めてしまって、要はGoogleのモノづくりリソース版みたいな形で全部、「こういうものが作りたい」「個人でモノづくりがしたい」「自分で独立起業してモノを作りたい」「メーカーでいい商品が作りたい」そういう色んな目的に応じて最適にモノづくりリソースをマッチングして、自律分散的にどんどんいいモノが生まれていくっていう仕組みを作りたいっていうのが当初描いていた構想で、今も描き続けている構想でやってきていて。

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山田 そこから2012年の4月に登記してサービスを作り始めるんですけど、やっぱりweb制作で苦難の道を辿りまして。

三木 仕様書を作ってくれる会社がないですからね。

山田 仰るとおりで要件定義とかで本当に困って1年以上かかって。

宇都宮 相談してくださればよかったのに。

山田 そうですね(笑)。

三木 最初どこかの会社にお願いしたんですか?

山田 フリーランスのデザイナーさんにお願いしたんですけど、僕らが「これも入れたい」「あれも入れたい」とやってしまって、結局リリースしたのが2013年の11月なので、かなり時間を食ってしまったんですけど。
山田 そんなこんなでようやくWemakeというサービスをリリースした、というのが経緯としてありますね。

●オープン・イノベーション・プラットフォーム「Wemake」

三木 今具体的にどういう展開を見せているのかについてご紹介いただければと。

山田 我々はWemakeとWemake Labという2つの事業を行っております。主事業にしているのがこのWemakeというオープン・イノベーション・プラットフォームです。大手メーカーと一緒に新商品開発・新規事業開発をやりましょうというサービスなんですね。

三木 まさにオープン・イノベーション。

山田 そうです。組織構築とか意思決定プロセスの構築っていうところまで入りこんでサポートする。

三木 コンサルティングに近いんですね。

山田 もうやらざるを得ないということで、ツール提供だけじゃなくてそういうこともやっているということです。逆にこれご相談したいなとずっと思ってたんですけど、来月の初頭から始める「WemakeLab」というサービスがあって、いよいよようやく戻ってこようとしていて、元々の中小メーカーさんと一緒に商品開発をするっていうサービスをやろうと思っていて、そこに戻りつつあるというのを後ほどちょっとご紹介できればと思うんですけど。

三木 それ、zenschoolと一緒に……。

山田 ええ、本当にやりたいんですよ。結構それをやりたくて、これも全国100社くらいにコンタクトして会いに行って、いいメーカーを5社くらいピックアップしてるんですけど、「自分たちの中でなにを作るべきか、作りたいか」に悩まれている方が多い印象があります。

宇都宮 ほとんど、99パーセントそうだと思います。

山田 Wemakeというのが商品企画の段階から、いわゆる使い手である普通の生活者の人と一緒に商品開発をできますよというサービスなんですね。
山田 販売のところまでずっと一緒に商品開発をしていくことによって、ニーズが乖離しない。あくまで使い手目線のモノづくりができますよというのがこのプラットフォームでして。

三木 結構大企業が……。FUJI XEROX、KOKUYOさん。

山田 貝印、OLYMPUS、王子製紙。

三木 これはどういう風に営業していった感じなんですか?

山田 本当にもう地道に。一番最初の初期段階は企業のオープン・イノベーション担当とか企業の商品開発担当って外からわからないじゃないですか。だからアホだと思いますけど、代表番号から電話をかけるっていう。で、受付から当該の部署の平社員、課長、部長っていう風に行くというのをひたすらやって……当然全然当たらないんですよ。
山田 次にやったのが「ありがとうザッカーバーグ作戦」というので、ひたすらFacebookメッセージを使って、そのメーカーに勤めている人、友達でもない人に対してお金払ってガンガンメッセージを送って、「話だけ聞いてください!」ってやって

宇都宮 スパムにはならないんですか(笑)。

三木 でもあれお金を払えばいいんでしょ? 友達じゃなくても。

山田 はい。一応の仮説はあって、闇雲に送ってるわけじゃなくて、あくまでもハッカソンとかアイデアソンとか、そういうことをやってらっしゃる企業やってらっしゃる方というのは、おそらくある程度先進的な意識をお持ちだろうということで話を聞いてくれるんじゃないかとメッセージを送って。
山田 そういう経緯でOLYMPUSなんかは一緒にやったりとかしてる感じですね。
山田 FUJI XEROXさんの場合とかはウチのWemakeのユーザーにFUJI XEROXの社員さんがいて、わざわざここに来てくださって、一緒にやりたいんですけどと言ってくれて、そこから始まって。

三木 素晴らしい。

山田 今は結構向こうから来てくださるケースが多いんですけど、昔は本当にもう全国津々浦々へ行って断られ、行って断られというのをひたすらやってきたという感じで。
山田 ウチのサービスの特徴って、ひとつには登録しているユーザーの質が高いというのがあって、基本的にアウトプットを3DCGとか試作品に限定しちゃってるので、いわゆるテキストベースだったりとか、ラフスケッチベースというものは全部僕らが切っちゃうんですね。必然的にレベルの高い人しか残らないということで、今プロダクトデザイナーとかハードウェアエンジニアを中心にだいたい1万人くらいユーザーが登録していて。

三木 ほう、すごいですね。

山田 一つのメーカーさんのプロジェクトでひと月に50案から200案くらいは結構ハイレベルなコンセプトが上がってきますよという感じに成長してきたところです。

宇都宮 会員はどうやって増やしていったんですか? 1万人って結構……。

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山田 2013年11月リリースで今ちょうど2年ちょっと経ってるんですけど、最初にこういうサービスを起ちあげますというのをCNET(シーネット)さんに出して取りあげていただいて、やっぱりその時モノづくりのオープン・イノベーション・プラットフォームってなかったので、結構バズって、それで最初2千人くらい集まって。そこからは口コミですね。

山田 当然、日経新聞さんに載ったことも大きかったりはしたんですけど、基本的にはコンセプトを投稿してくれる人たちが自分のSNSで知らせてくれて、似た属性の人が流入してくるという良いサイクルが回って1万人くらい来たというのが。

三木 投稿者は基本的にメーカーの方?

山田 そうですね。大体がどこか別のメーカーに。例えばOLYMPUSのプロジェクトをやっている時にOLYMPUS以外のメーカーに所属しているようなエンジニアさんだったり、デザイナーさんが投稿しているケースが多くて。

三木 この会社がお題を出して、それに対して「こういうの」って提案してくれるわけですね。

山田 簡単に流れを説明すると……僕らのサービスってまずメーカーさんありきなんですね。メーカーさんからテーマを引き出す。今どういう課題があるんですか? どういう問題意識があるんですか? 社内にあるシーズとか社内にあるリソースというものを使ってなにができるんですか? というのを一緒に何回も何回もお話ししながら、どういうテーマで公募かけるかっていうのをひたすら一緒に詰めていきます。
山田 テーマが定まった段階で、コミュニティに投げかけて公募します。公募に応じてさっきの1万人のメンバーの中から提案が上がってきて、こういう視覚化されたものが上がってきて、それを一般のコミュニティに公開した後で、閲覧数とか人気の度合いによって絞りこんでいきます。
山田 どんどん厳選して、200案上がってきたものを10案に絞って、その10案で競争して最終的に納品するという流れなんですけど。

●コミュニティメンバーが喜んでくれるような仕組み作りを

三木 知財はどういう風に処理されるのか……。

山田 さっきの流れをより詳しく言うと、まずユーザーから投稿が上がってきます。それをメーカーの社員さんが上がってきた瞬間にすぐ見て「このコンセプトはすでに社内でやってる」とか「バッティングしているものがあるから考え直してくれ」とか「こういうソリューションだったらいいんじゃないか」とか、すぐフィードバックをして改善するというのを非公開の段階でやります。
山田 非公開のグループメッセージというのがついていて、そこで資材の話とかをしても全然バレないという感じにしていて、どんどん詰めていきます。
山田 このプロセスが非公開でメーカーさんと投稿者がタイマンで改善している間に知財部の方にも動いてもらって、めぼしいものは申請をかけてしまいます。

宇都宮 メーカーが?

山田 はい。メーカー側の知財です。完全に。

三木 つまり規約の中で、これは申請したらメーカーの知財になりますよとなっているんですね。

山田 はい。ただ、これは水野さんとも話し合って決めたことなんですけど、知的財産をなんでもかんでもメーカーが吸いあげるっていうのはもう時代遅れも甚だしいよねという話をしていて、あくまで対価性のある取引じゃない限りはメーカーに知財を譲らないという風にしています。

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三木 「たいかせい」?

山田 つまりお金を払わないんだったら絶対渡さないよという。なので、賞金とか然るべき額が設定されないと譲渡はしないという形になっているので。大体知財保護のパターンは二つあって、この非公開の段階から優秀なコンセプト、これはすぐ商品化したいというコンセプトはやっぱり3~5パーセントはあるので、そういうものはすぐ申請かけちゃいますよと。基本的にそれは受賞したりとか受賞しなくても何らかの賞金を払って対価をちゃんと払いますよと。

三木 お金を払った段階で知財は譲渡される。

山田 そうです。

三木 その値段が折り合うかどうかというのはどんな感じなんですか? 言える範囲でいいんですけど。

山田 そこはメーカーさんの善意に任せているところがあるんですけど、どこも買いたたいてくる方ってあんまりいらっしゃらなくて、きっちりちゃんとお支払いいただけると。
山田 プラス、投稿者の方が意外と金銭的インセンティブがモチベーションじゃないんですよ。

宇都宮 想定してない場合が多いですよね。

山田 意外とそうなんですよね。

宇都宮 そこにつけこむところはつけこむし、善意でちゃんとやるところは善意でやっちゃうだろうし。今の時代って情報がどんどん広まる時代だから、つけこむと逆にブランド下がりますよね。

山田 そこも適切な額の設定というのは僕らがコミュニティのメンバーの代弁をしなければいけないと思います。そこはプラットフォームの役割だと思うので、低すぎる賞金とか設定された時には「いや、それはないでしょう。これだけ働いてくれてるんだから、この金額でやろうというのは虫が良すぎるんじゃないですか」という話を僕らの方からメーカーにします。

宇都宮 そういう「仕切り」をしているんですね。

山田 そうです。

三木 表から見てると全然わからなかった。

山田 そうなんですよ。そこの努力のアピールが足りないってよく言われます。

宇都宮 今時ハッカソンでよくやってますけど、すごいヤバイ規約多いじゃないですか。

山田 ですね。

三木 全部持っていきますよみたいなね。

山田 結局CtoCのコミュニティなので、コミュニティのメンバーが一番重要なんですよね。メーカーさんじゃないんです、正直。なのでコミュニティメンバーが喜んでくれるような仕組みじゃないと絶対に継続できないので、そこは本当にコミュニティファーストでやっています。

宇都宮 さすがです。

山田 結構色んな人に叩かれ、やってきたので。

三木 コミュニティの人たちに?

山田 コミュニティメンバーもそうですけど、外部の人たちに。なので結構そこは煮詰まってきて。

三木 今の形になったのはいつくらいですか?

山田 今でも改善し続けているのでアレですけど、大体知財の形とかは2015年の7月とかには結構固まってたかなと思います。
山田 さっきの200案のうち優秀なヤツはもう知財取れるじゃないですか。でも、後から良くなってくるコンセプトもあるんです。それはこの段階でタイムスタンプというサービスを使って、第三者証明を取っておくというのをやってます。
山田 この時点で誰々が考えてましたよね、というのを後で係争になった時に言えるっていう。

三木 それはどちらがやるんですか?

山田 僕らがやります。

三木 そういうサービスなんですね。

山田 はい。そういうサービスがweb上にあって、1枚いくらではなくもうちょっと多数に対応しているという形で。そういう感じで知財対策をしてます。
山田 中には取り組み自体を隠したいというメーカーさんもあるんですけど、そうなるとさすがに「オープン・イノベーションじゃないじゃん」という話なんでお断りするという形で。

三木 面白いですねぇ。そういうのも知らなかったです。

山田 結構プライドを持ってやっています。

宇都宮 広報活動をしないと。

山田 そうなんですよ。本当に下手くそなんですよ(笑)。

宇都宮 もったいないですよね。

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⇒後編へ続きます。


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