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【2019/7/26開催セミナーレポート】『「トランステック」 ∞ 「マインドフルビジネス」』 〜SXSWに出展した東芝のプロダクトデザイナーを交えたトークイベント〜 ③東芝駒木さん

駒木さんの講演

駒木:駒木です。よろしくお願いします。私からは大企業でのトランステック製品開発の実情ということで、実際にどんなことをやったかを苦労も含めて色々と紹介できたらいいなと思っています。最後に少し時間があればできた製品のデモをできればいいなと思っています。

私の自己紹介なんですけど、東芝のデザインセンターにいて、あと半分慶應のSDMの非常勤講師をやったりとかしています。経歴としては慶應大学を卒業して、その後1回東芝の研究所に入って3、4年ユーザーインターフェースの研究とかやってたんです。その後、「企業で何ができるか?企業でやれる面白いことは何なのか?」って考えたのが、製品を作るところ、何かしらのモノを作るところだろうっていうことで、1回テレビのフラグシックモデルを開発するところに移ってそこで5、6年いて、その後今デザインの業務もやってるという感じになっています。専門としてはデザインリサーチ、デザイナーのリサーチをやってたり、あとはヒューマンコンピュータインタラクションを専門としてやっています。

作った製品について

作った製品はこういう製品なんですが、心を整えるシステムと言ってみたり、マインドフルって言ってみたり、何か色々名前が変わったりするんですが、こういう人の呼吸をセンシングするデバイスを作ったりしました。何でこういう製品を作ったかって言うと、乱れ続けない心を作りたいなっていうのが一番のゴールで、例えば今みたいにプレゼンテーションしてると初めての方とかいっぱい見るので結構ドキドキするんです。そういう時にプロのスポーツ選手もそうだと思うんですが、できるだけ心を安定させることをするとベストなパフォーマンスができるので、そういう乱れ続けない心をぜひ作りたいなっていうのが一番初めのゴールでした。それを作るためにはどうしたらいいのかって今なかなか難しいので、何かできるとしたら1つとしては呼吸があるんじゃないか。まずは1日でだいたい2万回する呼吸に対して、自分がまず意識を向けてそこから呼吸のリズムをちゃんと整えることによって最終的に乱れ続けない心ができるんじゃないかなっていう仮説を作ってこのシステムを作りました。

これがちょっとアニメーションにした4コマ漫画でこれは私なんです。名前は田中さんってなってるんですが、毎日色々と仕事をやってたりとかしてる中で色んなことに目を向けなきゃいけない。例えばパソコンを見たりだとか、携帯を見たりだとか、色んなものに気を回さないといけないっていう中で、会議に出ても色々と注意力が発散してて、よく会議室に行くと寝てる方だとか別のことをやってる方とかいっぱいいる中で会議をやってると思うんですが、私もその1人で結構注意が分散してると。ベストなパフォーマンスができてないなっていうのが根本にありました。色々なことにストレスを抱えてプレッシャーもあったりする中で、田中さんはマインドフルっていうシステムを手に入れましたと。このシステムが何をしてくれるかって言うと田中さんの呼吸をサポートしてくれて、どういう風に自分が呼吸してるかだとか、今緊張してるからこういう呼吸をするといいよとかそういうのを色々とサポートしてくれることによって、例えばすごくストレスがかかってる時だったら吐く呼吸を長くしてあげることによって落ち着くことができたりだとか、午後にご飯を食べた後眠くなった時に、逆にもうちょっと覚醒させるために吸うほうを結構長くすることによって覚醒させてあげるとか、なかなか自分でコントロールできない心っていうのを最低限の呼吸っていうのをもとにトリガーに少し変えられるんじゃないかなっていうのがこのアイデアになっています。

1日の自分の呼吸のある点の状態において自分がどういう呼吸をしてたかっていうのがスマホとかで分かって、「今こういう呼吸をしてたんだ」「1分間に16回呼吸してたんだな」とか、逆に「こういう時はこういう呼吸をすればいいんだな」ってこういうものを使わなくても自分の呼吸を最終的にはアジャストメントできれば、もうちょっと自分の生活とかライフが楽しくなるかなっていうイメージでこういうシステムを作りました。

ちょっと簡単に今までどういう風にしてこれを作ったかっていうのをダイジェストで紹介したいなと思います。元々私デザイナーで何か新しいモノを作るためのニーズを作るっていうことをやっていて、世の中にどういうニーズがあるかっていうのを探って、そのニーズから最終的にVモデルと言われているようなシステムをデザインするっていうことをやっていきます。一番初めのニーズっていうのを色んな手法でやっていって、その1つがスペキュラティブデザインって言っていて、ちょっとアート的なこんなところから発想することをやったりしていました。チームメンバーと色々とやっていって、「こういうニーズがあったらこういうシナリオだと面白いよね」っていう色んな絵を描くとデザイナーの濃さが出るんですけど、色んなシナリオを作っていくことを普段業務でやったりとかしています。色々とコンセプトを壁一面に貼りながら今どういうニーズがあるかっていうのを色々と模索していって、一番初めに人間味っていう言葉が出てきて、これは何かって言うと例えば毎朝電車に乗って行くと普通に足を踏まれたりだとか、ドンって押されたりだとか、普通だったら「ちょっとすいません」って言うところを何も言わずに足を踏んで行ったりだとか、「段々機械っぽくなってるよね」「人間が段々効率化され過ぎてて感情が段々気を配らなくなってる」みたいなところがあるので、もう少し人間味を出せるサポートができると世界は良くなるんじゃないかなっていうことを考えました。

一番初めに考えたのはもうちょっと人間の人間味っていうのをエクスプレスできるような外に出るようなモノができないかっていうので、例えばイヤリング型のモノでドキドキするとイヤリングのところで赤くピーって光ってくる。「あの人すごく緊張してるんだな」っていうのが分かるような、分かってあげると「あの人緊張してるからもう少し優しく接してあげよう」とかそういうことができるかなとか色んなことを考えてコンセプトを作って、そこから初めに作ったのがこういうプロトタイプで普通青い色を発してるんですが、心拍をここで取って緊張するとここが赤くなったりとか、赤くならなくてこういう感じでアニメーション的に「自分今緊張してます」っていうのが見えても面白いかなとかっていうのを色々と考えたりしてプロトタイプを作ることをやっていました。

そういうことをやってて「ストレスを改善してあげるといいよね」っていうのが段々見えてきて、そこで次に考えたのが段々このコンセプトに近づいてくるんですが、「禅の新しいエクササイズっていうのができるといいよね」っていうのが段々できてきたと。どういうシナリオかって言うとこれ1回鎌倉の建長寺さんだとか色々と行ったりしたんですが、東京から鎌倉まで行くのって結構遠いので、ビジネスマンとかが特に平日とか行くのってちょっと現実的じゃない。東京でももうちょっと鎌倉っぽいようなある意味修行というかトレーニングができるようなことができないかっていうので、こういうただ単に持つだけで自分の呼吸が測定されて、今日1日がどういう風に修行できてたか、トレーニングできてたかっていうのを可視化してあげると、ある意味鎌倉に行かなくても東京でそういうことが疑似的にできないかなっていう感じで発想をしました。

どういうデバイスがいいかなっていうので、実際手の形だとか見て「だいたいこれぐらいの大きさがいいよね」っていうのを紙粘土で作ったりして、こんな感じでワイワイ作っていって、そうこうしている間にこの原型が、この作り方としてはお坊さんがよく托鉢を持ってるからそういう感じで持てるデバイスだったらある意味自然かなと。お坊さんの托鉢の上に水が表面張力で乗っかってて、自分の気持ちが揺れると水がこぼれちゃうよみたいな感じのデザインがあれば環境に溶け込めるんじゃないかなっていうので形を考えていきました。ちょっと今レインボーをやったんですが、こんな感じで見えていて、この発色の仕方も結構大変で、一番初め作った時は中にLEDが何個かあるんですが、上に表面張力で水が乗っかってるような表現って意外に難しくて、LEDって点光源なので、点光源を水みたいにフワッとさせるのってめちゃめちゃ難しいんです。すごい暗かったりして全然うまくいかないなっていうのを繰り返していって、最終的にちょっと上に表面張力で水が乗っかってるような表現を作っていくことをやって、色々と色を変えられることもできるなっていう話を考えたりしました。その後で実際にヨガスタジオだとかそういう人にも使ってもらって、あと結構ガタイが良い人達がいっぱいいるんですけど、これってどんな人だと思います?東芝の人でこういうガタイが良いっていうと…

山下:ラグビーですか?

駒木:そうなんです。ラグビー選手に実際使ってもらうと彼らはスポーツのトレーニングをしているのでお腹の呼吸に慣れてて、「腹式呼吸やってください」って言ったらほとんどの人がパーフェクトにできることが段々分かってきて、吹奏楽をやってる人だとかこういうスポーツ、剣道をやってる人だとか、そういう人達は呼吸の使い方がすごくうまいんだなっていうのが分かってきてて、男の人よりも女性の方のほうがお腹の呼吸っていうのに結構慣れてて、男性だとだいたい3割ぐらいしか腹式呼吸ができないけど女性だと6、7割の方が腹式呼吸ができるので、男女差があるっていうのが分かってきたり、色々と試すっていうことをやっていました。

実際に腹式呼吸したらどうなるのか。今どっちかって言ったらこっちに段々興味が移ってきてるんですが、腹式呼吸をやることによってどれだけ効果があるかっていうのを今後検証していきたいなっていう興味があります。実際に腹式呼吸をやって図にしてみると、これは心拍数で普段僕の心拍数でだいたいこんな感じの心拍が見える中で、呼吸法をやるとこんな感じになるんです。やはり目に見える形でだいぶ違うなっていうのがちょっと分かってきてて、このギザギザの振幅もだいぶちっちゃくなったりだとか、たぶん平均するとアベレージも下がってみたいな、そういうデータが取れそうだなっていうのが段々分かってきました。呼吸法っていう今まである意味暗黙知だったようなものを何でそうなのかっていうのがサイエンスだと思っていて、ある意味こういう呼吸をするとどれだけ良くなるかっていうのをもう少しデータで見ていきたいなっていうのにすごく興味を持っています。

こういうのを色々作って、最近ベンチャーで有名なSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)っていうイベントに行って、

こういう感じのところなんです。SXSWの簡単な紹介なんですが、すごくイノベーターが集まるような展示会でアメリカのオースティンっていうところでやられてる展示会になっています。結構町ぐるみでイベントをやっている展示会なんですけど、そこのスピーチで2018年の時にプログラムマネージャーの人が急に禅っていう言葉を使い始めて、「禅の状態がセレンディピティを呼ぶんだ」っていうことを言っているのが段々トレンドとして出てきたと。

これは一昨年なんですが、メルセデスも「そういうイノベーションを作るためには禅とかマインドフルネスに注目したい」ということで、「リラックスとのネットワークがイノベーションにつながるんだよ」っていうことでこういう展示をしてたりだとか、あとはウェルネスEXPOっていうので結構こういう感じでアメリカ人がヨガみたいなのが流行ってるので、そこにすごい日本では考えられないぐらいの人達がバーッと集まってみんなで瞑想をやってたりとか。 

その中でだいたいやっていることは2種類で、1個はオーガニックフードみたいな、ウェルネスって言うと日本と捉え方がちょっと違ってて、オーガニックフードもウェルネスって言ってて、もう1個はヨガみたいな話で、これはPeace boxって言って車のキャンピングカーみたいな形で、こういうウェルネスの箱、禅をするようなものを運んで色んなところで禅をする話をしてたりだとか、あとはこういうでっかいドームの中で会員のみんなが瞑想するスペースを作りましょうみたいなことをやってたりします。こういう辺りが最近アメリカでも流行ってきていて、テクノロジーイベントなんだけど心を豊かにするみたいなところに段々シフトしてきてるなっていうのが実感であります。この辺の心をもう少しサイエンティフィックにできるといいなというのが今の私の興味になっています。

これはまた東京のミッドタウンで未来の学校っていうのがあって、

そこでも展示すると結構色んな方が使ってくれて、実際に幼稚園ぐらいの子供達が集まってきて「わ~い」って言って呼吸をしてるみたいな、そういう子供も結構興味があるのかなっていう風に見たりとかしました。

(このあと、デモンストレーション~パネルディスカッション)


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