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【衝撃】これはヒドイ!封印された幻の結末を公開!「魔神ガロン」の秘密

今回は「魔神ガロン」お届けいたします。

手塚先生もお気に入りだった巨大ロボットのSFマンガ
しかしあまりの忙しさに最後は伝説級のとんでもない幕切れを起こした曰くの作品でもある本作を今回はご紹介していきますので
ぜひ最後までご覧いただければと思います。

それでは本編行ってみましょう。


本作は1959年7月から1960年7月まで
雑誌「冒険王」にて連載されたものであります。

あらすじは
ある時、後楽園球場に隕石が落下します。
(今の若い方はご存じないかもしれませんが後楽園球場は今の東京ドームの前身にあたる球場のことです。時代を感じさせますね。)
…でその落ちてきた物体はプラモデルのパーツ見たいになっていて
ロボットの一部だったことが分かります。
そして組み立てられたものが「ガロン」と呼ばれるロボットだったんです。

しかし組み立てたものの、動かし方が分からず10年の歳月が過ぎ
ついには組み立てた博士が死んでしまいます。
そこには残されたテープがありその秘密が隠されていて…
一体その秘密とは何なのか。
空から落ちてきたガロンと呼ばれるロボットの目的とは一体なんなのか?

というのが大枠のあらすじとなっております。

このころの巨大人型ロボといえば「鉄人28号」が大人気で少年がロボットを
操縦すると言うひな型を本作も御多分にもれずもれなく採用しております。

「鉄人」を意識して描かれたという件については恐らく色んな方々が
こすり倒していると思うのでこの記事では深く掘り上げずに進めます。

あえて鉄人との違いを言いますと
鉄人28号の無機質さとと比べ「ガロン」の方が生命感が出ていたというところですかね

これは後に登場する「ガンダム」とか「マジンガーZ」のような
人間が操縦する形のいわば、兵器的なロボットと比べても、かなり人間っぽい建付けになっています。
ロボットでありながらどこか哀愁を醸し出しているところが
手塚治虫らしいロボットって感じがします。
なんせ、浴衣着てますからね(笑)

…でも本当はガロン自身には自らの意思を持たないロボットなんですけど
ここら辺の曖昧な生命体としての立ち位置も手塚治虫らしい表現ですよね。

…で本作のテーマは少年誌のロボット活劇でありながら
初期手塚お得意の「地球人とは」というドデカイテーマをぶっ込んできております。

そもそも何で宇宙からガロンが落ちてきたのかと言うと
宇宙人から、地球人の「良心」を試されているんですね。
作中ではガロンの力を奪い取ろうとする者同士の押し問答が描かれているんですがこれは私利私欲に走る身勝手な地球人たちの愚かな姿を描くことで

ガロンの力をどう使うか。
ロボットを正しく導く
あるものを正しく使うという反戦テーマ、第二次世界大戦の風刺という
手塚マンガにおける重要なテーマがモロに見て取れます。

宇宙人が地球人を試している設定は「W3」「鳥人大系」でも使われており手塚マンガでは一貫して使われる表現技法になっているのですが
反戦テーマと言われても
そんなこと子供時代には分かるわけもないんですけど
そんな堅苦しさを微塵も感じさせずに
夢中になって読んでしまう魅力が手塚作品にはあります

手塚マンガって本当に冒頭の惹きつけが秀逸で序盤が最高に面白い。
この「ガロン」も序盤が最高にスリリングでミステリアスなんです。

得体のしれないものが空から落ちてきて
バラバラだったものを組み立ててみるとロボットになって
10年も動かなかったものが突然動き出し博士が死んでしまう。
残されたテープにはその秘密が隠されている一方で…

ある山奥で小さな赤ん坊が捨てられていて
別のストーリーが進み徐々にリンクしていく…
謎に満ちていて、めっちゃドキドキワクワクですよね。

このようなストーリー展開は他のロボット作品より全然面白いと思うんですけど世間の子供たちの興味はやはりバトルものとか
分かりやすいものの方が人気あるんですよね。

ボクはロボットものがあまり詳しくないので何とも言えませんが
その後に誕生したアニメを見ると本当に日本人ってロボットアニメが好きですよね。ちょっとついていけないくらいのロボット作品あります。

その中において1959年に発表した「魔神ガロン」ってかなり先駆的な作品なんですけどヒーローロボット特集なんかをやってても「鉄人28号」は出てきますけど「ガロン」は全く出てきません(笑)
やはりかなり異色な作品だったんだなって感じがします。

その中では「エヴァンゲリオン」はこれまでのロボットアニメの系譜とは違いどこか「ガロン」的で雰囲気を感じてしまうのはボクだけでしょうか…
これもあまり大それたことは言えませんが庵野監督って
手塚治虫の影響をかなり受けてる感じが見受けられるんですけど
それらをあまり語られていないようですので…実際は違うんですかね。

はい。


さて話を戻しまして

「魔神ガロン」を語る上でどうしても触れておかなければならないポイントがあります。それは…
後半がとんでもない事になっちゃってるってことです。

これは手塚ファンなら語っておかなければいけない事案なんで
ぜひ抑えておいてください。

それは何かと言いますと…
「魔神ガロン」はこの講談社の「漫画全集」では全二巻、文
庫全集でも全2巻で完結しておりますが
実は続きがあったんです。

講談社の「漫画全集」ではロットナンバー、377、378,379として
3冊が1996年に発刊されております。

なぜ一度2巻で完結しているにも関わらず後に3冊も出版されてるのかと言いますと、実は後半部分の執筆には手塚先生が絡んでいないからと言われています。

この時期の先生はあまりにも忙しすぎたために中盤以降を別の人に代筆してもらったため結果、先生の本位ではない仕上がりになっちゃったので
後半の3冊分に関しては先生が封印してしまったというわけです。

実際、2巻の最終ページ
とんでもないところで終わってます。
「え?」っていう二度見してしまうレベルの違和感のところで終わっています。

このシーンが最終カット。

なんでこんなブツ切りの終わり方をしてしまったのかは
その後に出版された3冊に秘密が隠されております。

実はこの3冊
先生の死後に発刊されたものであり先生の意思を含んでおりません。

つまり先生が封印したかった作品が
先生の亡くなった後に世に出ちゃったってことです。

通常の先生ならば改編、修正して掲載させているハズが
時間がなかったという事もあるんでしょうけど
ブツ切りという選択を取ったのは、やはりあまりにもひどい出来に諦めて全部切ったと考えるのが妥当かなと思います。

実際に読めば分かりますがまず3巻以降は
如何にも何も手を付けていない編集、流れになっているので
ある意味で歪な展開が拝めます。
そして何よりペン入れがヒドイ。
特に注目は全集の第3巻136ページ~155ページ辺りは猛烈で、

どっかのアルバイトに描かせたのかってくらいのおぞましさです。
これを見ちゃうと
先生が全2巻で決着させた決断も納得ですね。


この後のクオリティについてはぜひご自身の目で確認ください。



このような未収録を拝めることはファンとしては嬉しい事であるんですけれどもこれを公式な漫画全集のラインナップとして加えるのは如何なものかという気が若干感じざるを得ないところではありますが…。

これを晒すなら「マグマ大使」のサイクロップス編がなんでダメなのか
その線引きの曖昧さの方が疑問です…。


まぁなんにせよ元はと言えば先生のオーバーワークが原因なんでね
誰のせいでもなく自分のせいなんですけどね。
自業自得です。

先の述べた代筆もひどい有様でしたが手塚先生自身が描いたペンもクオリティが正直低いです(笑)
…というのもあまりの忙しさに移動中の揺れる車や電車の中でも描いていたと自身でも暴露しており満足のいく出来ではなかったそうです。
このような満足のいく原稿が描けない事について
「職業として漫画家を選んだ者の辛さ」とビジネス的な業務になっていた状況も漏らしておられました。

と言ってもこれも、自業自得なんですけどね。

このようにボロボロの状態で描かれた「魔神ガロン」でありましたが
先生はこのガロンが大好きで『鉄腕アトム』や『マグマ大使』
『白いパイロット』や『ブラックジャック』でも登場させており
自身でも大好きなキャラの一人と語っておられます。



最後にこちらご紹介しておきましょう。

2013年4月に手塚プロダクションと大阪芸術大学キャラクター造形学科と共同で「魔神ガロン」のアニメが製作されております


これは「鉄腕アトム」放送50周年記念ということでアニメーション人材育成を目的に企画されたものでありまして手塚治虫記念館での限定上映されたものであります。

内容は非常に現代風にアレンジされており、どこかゴジラエヴァンゲリオンを感じさせるテイストになっており非常にカッコイイ仕上がりになっています。
本編の長さは22分あるんですが冒頭の3分だけyoutubeで公開されておりますのでぜひご覧になってみてください。(上部貼り付け)

3分と言わずこの時代ですからぜひ全編公開して欲しいですね。
生徒さんたちも自分たちの製作した作品が世の中の方に観てもらえる良い機会だと思いますのできっと喜ぶと思うんですけどね。
いつか全編公開されることを望みます。


こうしたアニメーションを教える学校が手塚作品を通じて学んでいくというスタイルは個人的には素晴らしい試みだと思いますので今後もドシドシやって欲しいと思います。

そして日本のアニメ文化を進化させて欲しいですね。
「アニメ=手塚治虫」の歴史でもありますからここで学んだことを活かして
世界に羽ばたく人材が育っていくことを願っております。


というわけで「魔人ガロン」お届けいたしました。

「ビッグX」「マグマ大使」そして今回の「魔神ガロン」と一連の流れを組む手塚三部作をご紹介して参りましたので
ぜひ先の二作品も併せてご覧いただければと思います。




改めて見返してみますといずれも不完全燃焼な作品だったということが
お分かり頂けたかと思いますが、それがいかにも手塚治虫らしいと言えますね。さて皆さんはどの作品がお好みでありましょうか。
個人的には「魔人ガロン」が一番お気に入りです。


そして今回永井豪先生版の「ガロン」も紹介したかったのですがそれはまた別の機会にでも…


最後までご覧くださりありがとうございました。



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