手塚治虫「ブッダ」現代人にこそ必読書
今回は手塚治虫の代表作のひとつ「ブッダ」をお届けいたします。
仏教の開祖「お釈迦様」の物語で
「人はどう生きるべきか」という問いへの答えを漫画化した一大傑作。
累計発行部数は2000万部以上!
手塚治虫の最高傑作と呼ぶ人も少なくないまさに代表作!
人間はなぜ苦しむのだろう
なぜ生きるのだろう
なぜこんな世界があるのだろう
これらに疑問を抱いている方はぜひ読んでみてください。
遥か遠い昔にそれらの疑問に立ち向かい悩み苦しみを乗り越えて
悟りの境地に到達した男のひとつの答えがここにはあります。
膨大な情報が高速で流れるデジタル時代においてこそ
再認識しておきたいマンガであります。
今回はその「ブッダ」を分かりやすく解説いたしますので
ぜひ最後までご覧になってみてください。
それでは本編行ってみましょう。
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まず本作についてですが、
とても一度では語り尽くせない超大作であります。
なので以後何度かに分けて配信して参りますが今回は導入ということで
まずは触り、概要をお伝えしますのでどんなマンガなのかというのを
サラっと知って頂ければと思います。
本作は1972年から1983年まで
少年漫画雑誌「希望の友」に連載された大長編作品であります。
お釈迦様のお話なので小難しい印象もあろうかと思いますが
全然そんなことはなく手塚先生が独自の解釈で非常に分かりやすく
誰にでも楽しく学べるようにアレンジされております。
事実、ボクは小学二年生の頃にブッダと出会い面白過ぎて没頭しました。
なのでボクのように小二程度の知能があれば
読むことができますので非常に読みやすいですし
決してとっつきにくいマンガではないので
ぜひちびっ子にも読んで欲しい一冊ですね。
さてそのあらすじと言いますと…
ブッダの誕生から、悟りを開きその生涯を終えるまでが
本作の大枠となっています。
シャカ族の王子として誕生したシッダルタ、後のブッダとなる人物ですが
「死」と「差別」というものに興味を持ちはじめ、
やがて国や親や、生まれた子供さえも捨てて出家します。
最初は断食などの苦行に没頭するんですが、
いくら肉体を痛めつけても心の苦しみは消えないということに気づき
そこから方向を転換して「心」の修行に励むようになります。
そして35歳の時、苦難を乗り越えた末に菩提樹の下で悟りを開き、
ブッダ(悟りを開いた者)として、その後は各地を旅をしながら多くの人々に教えを説いてまわるというお話です。
この大枠の中に
様々なドラマが入り組んで大きなうねりとなって展開していくので
とてもひとつひとつのエピソードはご紹介できませんが
見どころをいくつかご紹介しておきますね。
まずはプロローグ。
このブッダの始まりを暗示させるテーマを
セリフもないコマで9ページにも渡って豪快に描いています
小学生が見ても理解できる作画だけでテーマを伝える圧巻の力技は必見。
実にこのテーマが最後までこのブッダの根幹を成すわけですから
これぞ手塚治虫のすさまじい構成力と言えます。
そして序盤は不当な差別を受けていた階級バリアの少年タッタを中心に物語が進んで行くのですがこれが見事!
当時のインドの身分制度の悲惨さを丁寧に描くことによって民衆の不平不満の膨張、そして待ち望む救世主の誕生という期待の高まりを感じさせておいてブッダが誕生します。
ブッダの誕生が1巻の最後ですから、
実に1巻まるごと、この設定に費やしています。
最初の10ページでしっかりと差別を語っていますし
この抗えない身分制度もブッダにおいて非常に重要なファクターなので
これらをじっくり時間をかけて説明していることが
後の伏線にガッツリ利いてくるんであります。
あとはとにかく個性的なキャラクターたちが交錯するドラマは
非常に見応えがあります。
残り10年しか生きられないとお告げを受けた「アッサジ」
自身の過去に苦しめられる「アナンダ」
復讐心に捕らわれる「タッタ」
死の予言に怯える「ビンビサーラ王」
それぞれの修行に対する考え方の違いなど、実に多彩な人物が悩み苦しみ
そこに生きた人々の壮大な大河ドラマとなって物語に深みをもたらしています。
しかしながら
これらがフィクションを多分に盛り込んだ手塚治虫オリジナルであるとして宗教団体から「正確ではない」と反発があったそうなんですね。
今でこそ「マンガ」という文化が確立されているので多様な表現が
可能となっておりますが当時は「マンガ」は低俗なものとして扱われておりましたし、ましてや宗教を扱うなど非常にデリケートな問題でありました。
これに対し手塚先生はきっぱり「宗教SF」です。と反論しています(笑)
というのも
仏教そのものを漫画化しちゃうと面白くないので
フィクションを多分に盛り込んだ手塚治虫のオリジナルとして脚色してあるという訳なんですね。
マンガであると同時にエンタメでもあるので
「物語を面白くするのは当然」だと言うわけですよ。
そして手塚先生はこうも述べておられます。
「ブッダの教えよりも人間そのものを掘り下げたい。
その生きざまをボクなりの主観を入れて描きたかった」 と。
つまり単なる宗教マンガではなく
仏教をベースとした一人の青年の成長ドラマでもあるんですね。
実際、タッタ、ミゲーラ、ナラダッタは架空ですし
アッサジも実在しますけど本作の設定では大きく変更されています。
タッタなんかは全巻通して唯一登場しているキャラであり
素晴らしい狂言回しになっていますからね。
彼がいなければ「ブッダ」が成立しないくらい重要なキャラであります。
ある意味で架空の人物のストーリーの方が面白いのはそれだけ本物が退屈であり手塚治虫のストーリーテラーの才能がいかんなく発揮されているとも言えるでしょう。
まぁ本物の仏典いわゆる仏教の聖典なんかはつまらないものなので
とてもアレンジしないと読めたものではありませんしね。
(悪い意味ではなく誰にでも楽しめるという理解という意味で)
そもそも、これほどまでに昔の記述がどこまで本当なのか誰にも分からないわけで作者が色を加えてもそんな目くじら立てることじゃないと個人的には思うんですけどね(笑)
…とは言っても手塚先生は相当に参考資料を読み込まれておりますので
すべてが荒唐無稽なデタラメではありません。
参照するべきところは見事に抑えていますし十分に仏教のストーリーを堪能することができます。
そんなブッダでありますが
どのような経緯で始まったかといいますと
雑誌「COM」廃刊のとき連載していた火の鳥を中断するかどこか別の雑誌に移すか悩んでいるとそれを、ぜひ続けてほしいと少年雑誌「希望の友」から声がかかるんですね。
しかし「希望の友」では、やや読者の年齢層が低く「火の鳥」に向いていないと手塚先生は判断し申し出を断ります。
しかしそこで「テーマは同じで別のほかの作品の大河ドラマを描きたい」となって火の鳥に変わるものとして「お釈迦様の伝記」を提案しブッダが誕生するわけであります。
だから「ブッダ」は構想として元々は「火の鳥」の一部でもあったんです。
実際「火の鳥」には東洋編なるブッダの前身となる構想もあったそうなので
「火の鳥」と「ブッダ」における生命観は非常によく似ています。
作中に出てくるブラフマンはこう言っています
「宇宙というのは大きな生命であり
そこから無数の生命のかけらが生まれ
世界のありとあらゆるものに命を吹き込んでいる。
死ねばまたもとの宇宙に合体し新しく生まれ変わってゆく」
これぞまさに火の鳥のコスモゾーンですよね。
生命のかけらは無数に散らばり宇宙という生命のかたまり、
コスモゾーンと通じると。
これらは如実に手塚治虫の生命観、死生観を表しているといえます
生命の平等、差別、死への向き合い方などを描こうとした先生にとっては
ブッダとは最高の題材であったわけですね
「人はどう生きるべきか」という問いへの答えとして
救いの道を求めて悩み苦しみ、悟りを開いてもなお自身の教えに意味はあるのかと苦悩するブッダ。
決して万能な神でない悩める無力な存在として人間の救う道を探して努力しつづける人物を描いているんですね。
つまりブッダとは
火の鳥の「永遠の命」であるとか「宇宙生命」といったテーマに
宗教性をブレンドしたという作品であると言えると思います。
ちなみに「ブッダ」というタイトルは今でこそ一般的に
お釈迦様を表す英語表記であると広く認知されていますが
当時はブッダというタイトルを見ても誰も何のことか分からないくらい斬新なタイトルだったそうです。
これはお釈迦様をブッダとカタカナ表記にした手塚治虫の際立ったネーミングセンスと言えるでしょう
最後にこの「ブッダ」のモデルは
ドイツ文学を代表する文学者でありノーベル文学賞を受賞したヘルマン・ヘッセの「シッダールタ」であると言われています。
ヘルマン・ヘッセと言えば感受性に訴えかける描写と深い精神世界の表現に定評のある20世紀文学を代表する世界的大作家ですから間違いなく手塚先生が好きそうな作家ですよね。
ボクはこの本まだ読んでいないんですけど…(笑)
アマゾンで見てみるとめちゃくちゃ評価の高い一冊です。
一部コメント引用して読んでみますと…
「日本人必読書」
「想像をはるかに超えるヘッセの最高傑作」「読んで絶対損しない。」
「知的興奮が味わえる最高峰の劇薬小説。超絶おすすめ。」
とかねベタ誉めなんですよね。
読んでみたいなと思うんですけどなかなか手が伸びないというね(笑)
というわけで今回は「ブッダ」をお届けいたしました。
まだまだお伝えしたい事沢山あるんですが
まずは触りだけのご紹介となります。
これねガチで面白いんでぜひ多くの方に読んで欲しいと思います。
(レビュー欄もぜひ読んでみてください)
特に今は情報化社会で騙されやすくなっていたり
誰かに依存してしまったり、
人の言葉に流されてしまったりするような人にこそ
今の自分に必要な何かを気づかせてくれる一冊になるかも知れません。
ぜひそのキッカケとなれば幸いです。
最後までご視聴くださりありがとうございます。
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