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【火の鳥未来編】最強にヤバイ衝撃作!まさに化け物!こんな漫画信じられる?日本漫画史上最大の問題作を語る!

今回は「火の鳥未来編」お届けいたします。

ここまでご紹介してきた火の鳥シリーズもついに
これを持って最終回となりました。

ついにやってきましたよ。未来編
最後にふさわしくコイツは本当とんでもないバケモンみたいな漫画です。
シリーズ最高傑作との呼び声高く
読者に与えたインパクトは日本漫画史上に残るほどの衝撃作
紹介してもし尽くせないほどの
濃密で猛烈なマンガになっております。

この本一冊に火の鳥のすべてが詰まっていると言っても
過言ではないくらい、火の鳥にとっての最重要ピース
それが未来編であります。

そんな未来編の魅力をご紹介してまいりますので
ぜひ最後までご覧になってみてください。


それでは未来編いってみましょう。

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さぁ未来編とはですね
傑作だけあって語り尽くすポイントがたくさんあるのですが
今回は2点に絞って見ていきたいと思います。

①命の源(コスモゾーンとは)
②戦争の愚かさ

もうこれですね。
火の鳥の核の部分である「宇宙生命」とはなんだ?
そして手塚作品に一貫して流れるテーマ「戦争の愚かさ」
こちらを軸に進めていきたいと思います。

まずは作品の概要から。

火の鳥未来編は
1967年12月号~1968年9月号に雑誌「COM」に連載されました。

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シリーズ1作目の「黎明編」の次の作品として描かれた本作は
シリーズ2作目にして早くも火の鳥の最終回を描くという常識を超えた設定で発表当時のマンガファンや評論家たちの度肝を抜きます。

さらに「未来編」のラストというのは「黎明編」の冒頭に戻ってくるような仕掛けになっており、このあまりにも大胆な発想は多くの読者を置き去りにしてしまうほど革新的でありました(笑)

設定だけでなく内容もケタはずれで
人類の終焉を描いただけでなく
そこから30億年後の再生までを描くという
もはや意味不明の領域に足を踏み入れ
読み終わった読者全員を呆然とさせてしまう衝撃を与えます

当時はまだSFという概念が浸透していない時代において
これほどまでにぶっ飛んだ作品は理解はおろか
相当なインパクトであったろうと思います

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そんな爆裂作のあらすじを簡単に見ておきましょう。

舞台は西暦3404年の未来
(もうこの時点で想像を遥かに超えた世界観なんですけど…)
人類は荒廃した世界を捨て地下に巨大な都市を作り移り住んでいました。
そして世界では人類の生き方を決めるのは巨大コンピュータに委ねるようになっておりそのコンピュータが弾き出した選択により
核戦争が起こって人類は滅亡してしまいます。
ようするにAIの暴走で人類が消滅しちゃったってことですね

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たった一人残された主人公山野辺マサトは
火の鳥から不死の体を与えられ「地球の復活」を託されます。
そこから何十億年もかけて
生命の誕生を見守り続けるというお話なんですけど…


これまで人類の終末を描いた作品は数あれど
その終末から始まるなんて漫画はもちろんファンの度肝を抜きます。

人間ドラマがストーリーの核であるという常識をぶっ飛ばして
生命の誕生に切り込んでいくという恐ろしいほどのスケール感。
まさに手塚治虫の真骨頂が炸裂した究極の作品、
それが火の鳥「未来編」。

さぁどうですか。この世界観、ついてこれてますかね。
最初はほんとに意味不明なんでチンプンカンプンの方もご安心ください。
そして火の鳥を何回か読んでも
なんかよくわかんないだよなぁという方もですね
この記事を見れば火の鳥未来編が何を言っているのか分かるようになると思いますのでぜひ最後までお付き合いくださいね。


では
順に①命の源(コスモゾーンとは)から見ていきましょう。

さてこのコスモゾーンなるものが火の鳥の根幹であり
手塚先生が示した火の鳥の明確な答えになっているんですけど…
これがややこしい。
コスモゾーンって言われたって
はっきり言って何のっこっちゃさっぱり分かりません。

これがどういうものなのかということを
作中で火の鳥が語っておりますので見てみましょう。

火の鳥は
生きているのか死んでいるのか分からなくなったマサトに対してこう言います。

「もちろん生きていますよ 宇宙生命(コスモゾーン)としてね」
「ほんとうはあなたはもう姿がないのです」
「マサト よくあたりをごらんなさい見えるでしょ? 感じるでしょう
この世界のいたるところに…宇宙生命の群れが飛び回っているのを!!」
「宇宙生命は形も大きさも色も重さもなにもないのです 
でも、ただとびまわっているだけではありません
この宇宙生命たちは物質にとびこみます 
するとその物質たちははじめて生きてくるんです」


と言ってるんですけど…分かりました?

コレ?
訳分かんないですよね。

はっきり言って通常の価値観や先入観を持って読んでしまうと
全く意味不明だと思います。
なにせ我々はカタチあるものを認識して生きていますから

「宇宙生命は形も大きさも色も重さもなにもないのです」

…って言われても
そんな見えない概念って理解しにくいと思います。


これを分かりやすく例えるなら「水」だと思ってください

水って固めると氷として形あるものに変化しますけど
溶けると液体になってしまいますよね
…でさらに熱すると蒸発して形も残りませんけど空気中には漂っている

見えないけどそこに存在しているって感覚分かりますでしょうか。

コスモゾーンとは、
「コスモゾーンという状態」であると考える
液体、気体、のような状態を表すことだと思ってもらえればよいかと。

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これをボクなりに短く解釈しますと
生物も物質もぜ~んぶ最初はコスモゾーンに居て
(これ厳密にいうと飛び回っているので一か所に留まっているわけではないのですが分かりやすくするためにそこにいると思ってください)

そこから形あるものに入り込んで、
そこではじめて生命としてスタートする。
水で言う氷になった状態ですね

宇宙も、惑星も、人間も、動物も、植物も、みんなです

そして
その生物が「死」を迎えたとき、
それはまた「コスモゾーン」に戻ってくると。
水が気体になって大気に漂っている状態のことですね

すべてはコスモゾーンから生まれコスモゾーンに帰ってくる

それを永遠に繰り返す、これこそが真の輪廻
これが手塚先生が作り上げた世界観、生命観、死生観の事なんです。

どうです?宇宙すら生き物であるというスペクタル
ぶっちぎった生命観

ですから我々も辿ると形も大きさもなにもないコスモゾーンに
漂っていて世界のいたるところに飛び回っていると…
水で言う気体になっている状態で、目には見えないけど存在してて
そして形あるものに入り込みそれが生命として生まれ生きていく。

分かりますかね。

一切の存在がそこから生まれ帰る場所。
すべての命の源こそがコスモゾーンなんですね。

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とんでもない世界観だと思いますけど、この考えは決して突飛な発想ではなく古代インド思想古代ギリシャ思想にも根源的な記述がありますし
密教の大日如来にも同じような思想があります。
ボクも詳しいことまでは分かりませんが
表現こそ違えど根源を辿っていくと
魂の故郷的な感じと言いましょうか同じような内容に辿りつくんですね。

アカシックリーディングなんかも同じような感覚かもしれません。

心理学者のユングは、
個人を超えたレベルの深い部分で
みんな繋がっているということも言ってますしね
『集合的無意識』ってやつです

きっと手塚先生はこの似たようなものが存在しているのを知って
手塚流にアレンジしたんだと思います。
もしくはある種の真理に到達したんじゃないでしょうか。

火の鳥休憩編では
手塚先生は「デタラメ」ですけど…と断っておきながらも

「人間の想像できないエネルギーが有機物質に吸収され
「生きる」現象になると子供のころに感じた」

と述べているように
ただならぬ感覚を幼少の頃から標準的に持ち合わせており
説明できない何かを感じ取っていたんだと思います。
(詳しくはこちらをご覧ください。)

…でそのデタラメな空想をマンガとして具現化した。
これこそが手塚治虫の死生観、生命観コスモゾーンの世界観であり
手塚治虫がライフワークとして描き続けた「火の鳥」なのです

そもそも持っている天才的な発想と
宇宙真理にまで到達した変態の思想
深い知識の裏付けとが混ざり合って生み出された傑作「火の鳥」
手塚治虫の生命観を余すところなく描かれた本編シリーズですが
この未来編においては最も「生命思想」が強く描かれております


『火の鳥』全体を包括する重要な思想、明確な答えともいえる解答が
「未来編」には示されておりその一端を次回ご紹介いたしますので
ぜひお見逃しなく。
最後までご視聴下さりありがとうございました。

続きは後編で( ↓ こちら)



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