チーズと牛乳

 ずっと書きたかったのに書けなかった文章だが、今夜、唐突に書けそうになったので一気に書いてみている。

 深夜2時37分、例によって眠れないので諦めてベッドから降り、チーズを齧って牛乳を飲んでいる。チーズと牛乳は、一緒に食べると牛乳の甘みが感じられるので好きな組み合わせだ。チータラを食べる時も私は必ず牛乳を飲む。本当はさけるチーズが好きだが、あいにく切らしているので冷蔵庫の隅に眠っていた父のゴーダチーズを食べた。加工チーズが好きな私とは対照的に、父はこういったホンモノのチーズを好んで食べる。しかし私はホンモノのチーズ特有の苦味が苦手で、齧っては甘い牛乳で流し込む動作を繰り返している。何の意味も無い作業だが、私は深夜の静まり返った時間を持て余したこういった無意味な行動が好きだ。

 心療内科に通い始めて4ヶ月が経過した。相変わらず私は毎日4種類の薬を飲み、時々寝込んだりしながら生活を送っている。投薬前に比べると随分良くなった。以前は、瀕死の日と穏やかな日の割合が4:1くらいであったが、現在は1:1くらいになった。そのおかげで創作にも取り組めるようになったし、提出物の期限も以前より余裕を持って守れるようになった(これに関しては通学時間が丸々自宅での作業時間に当てられるようになったことも大きいとは思うが)。

 そういう訳で、以前は差し迫ってくる鬱々とした感情に押しやられて、きちんと見つめることが叶わなかった自分の別の問題に、最近は焦点を当てられるようになってきている。
 問題というのは、私には人を見る目がほとんど無い、ということだ。と言うより、明らかに人間性がヤバいと分かっている人にほど、男女問わずどうしようも無く猛烈に惹かれてしまう(お忘れだろうか、以前私が元恋人にストーカーされかけた時のことを)。人間性がヤバいというのは、具体的に言うと人に対して不誠実な人のことで、ドタキャンや遅刻は日常茶飯事、他人を振り回すことに対して何とも思わず、ブラックユーモア、下世話な話が大好きなタイプの人間のことである。
 逆に私に対して誠実な人、真っ当な人は非常に退屈に感じる(本当に申し訳ない)。
 こうは言っているが、私は感情より相当理性が働くタイプであるので(心理検査で明らかになった)、例え心が強烈に惹かれても、頭がNOを出している人間には近づかないし深い仲にはならないようにしている。結果、誠実だが退屈な友人に囲まれ、本当に仲良くなりたい人間とは自ら疎遠になり、うっかり仲良くなっても自分がボロボロになって行くという、不条理な環境に身を置かざるを得ないのだ。漠然と人生に満足できないのにはきちんと理由があったのだ。
 では何故、不誠実な人間にばかり惹かれてしまうのか。それにもきちんと理由があったし、それは「愛しすぎる女たち」という本が教えてくれた。その本によると、幼少期より酷い環境に身を置いていると、酷い人間関係に慣れ、その関係性を育むプロセスが無意識のうちに板に着いてしまい、そうなると、無意識にそういった酷い関係性を築けそうな相手を選んでしまう、ということらしい。
 人は皆独自のステップを踏みながら生きていて、そのステップは幼少期に家庭で育まれる。私のステップはきっと歪で、真っ当なステップとは噛み合わない。私とぴったり息の合うステップというのはやはり歪で、そういったステップを踏んでいる人間はやはり、そういった人間なのだ。私はボロボロになるが、そういった相手とは永遠にぴったり息の合ったダンスを踊り続けることができるのだろう。

 私を傷つけないが退屈な人間と共にいることと、私はボロボロになるがとてつもなく惹かれる人間と共にいることに板挟みにされて、私は本当は、ずっと揺れている。

 とは言え、先程紹介した本を読むことで、危ない道へのブレーキがかかり、真っ当な幸福への道に誘導してもらえている実感がある。その本の中には、ろくでもない男に人生をめちゃくちゃにされた不幸な女性たちのエピソードが幾つも載っているからだ。自分と似た人が自分より大変な状態になっているのを見ると、人間、目が覚める。

 私には幾つも問題があるが、そのどれも根っこは同じ家庭から来ている。家庭というのは人格形成に最も大切な要因であることを、何度も何度も思い知らされる。妹は将来絶対に家庭を持たないと宣言しているが、私はどうだろう。今は到底持つ気になれないが、いつか解毒され、意識が変わる日が来るだろうか。

 話は変わるが、たまに本を読んでいると(これは私のために書かれた話だ)と思うことがある。今回の「愛しすぎる女たち」に関してもそうだった。人は誰しも不可侵な孤独を抱えて生きているが、誰かの書いた話、描いた絵、歌った歌にシンパシーを感じた時、その瞬間だけは、きっと孤独じゃない。私はそう信じているし、この世界にいる私と似た孤独な誰かと交流するために、作品を描いている。

 長くなってしまったが、猫を撫でたら牛乳を注いだコップを洗い、歯を磨いて寝る努力に戻ろうと思う。ツイートもしたが、衛生はメンタルと直結しているので大切にしたい。これからもずっと。

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