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ジャンフランコ・ロージ監督『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』現代のイタリアがみえてくる



<作品情報>

2013年・第70回ベネチア国際映画祭で、ドキュメンタリーとしては史上初となる金獅子賞を受賞した作品。イタリアの首都ローマを囲む環状高速道路GRAに沿って建てられたモダンなアパートに住む老紳士とその娘、シュロの木に寄生した害虫の世界に没頭する植物学者、果てしない交通事故の知らせに休む間もない救急隊員、後継者がいないことに悩むウナギ漁師、年老いたソープオペラの俳優、夢と名声を追う若者など、GRA周辺部に住む人々の暮らしをとらえ、その風景の中からイタリアの光と影や欲望と混沌、そこに生きる人々の息づかいを伝える。ジャンフランコ・ロージ監督がイタロ・カルビーノの名著「見えない都市」にインスパイアされて製作した。

2013年製作/93分/イタリア
原題:Sacro GRA
配給:シンカ
劇場公開日:2014年8月16日

https://eiga.com/movie/79731/

<作品評価>

65点(100点満点)
オススメ度 ★★☆☆☆

<短評>

おいしい水
都市型ドキュメンタリーとして出色の出来でした。最近の『国境の夜想曲』はやや技巧にこりすぎた感があり好きではなかったですが、本作はバランスのとれた良作でした。
歴史あるローマという都市を囲む環状線、中心から離れていることもあり、人も風景も建物も寂れた雰囲気をまとっています。
日々救急活動に従事する隊員、元貴族の屋敷を管理する男、水商売に従事する女など個性豊かな人々がそこで人生を生きています。
決して裕福でもなく華やかでもない人々の暮らしから現代のイタリアが見えてきます。人物と風景をいいバランスで捉え飽きさせないです。編集のテンポもよく、アーティスティックな撮影ながらもダイナミズムを感じさせます。
イタリアの歴史と卑俗すぎる人々のありのままの会話と佇まいというアンバランスさがユーモラスでした。非常に優れたドキュメンタリー作品で金獅子賞は納得です。

吉原
ベルリンで金熊賞を受賞した「アダマン号に乗って」のと同じく特定の場所に集まる様々な人間の人生を描いている作品。
観光名所として有名な土地は決して潤った人だけが住んでいるわけではなく、ある意味ではローマの裏側を覗き込んだような作品なわけですが、ローマを訪れたことがないと興味はわかないかもしれません。90分間、本当に人々を映し出しているだけで、何か一つのテーマに集約するわけではないので結局何を描きたかったのか疑問が残ります。
しかし、ローマを訪れたことがない私が観ても決して退屈な90分ではありませんでした。画面に映し出される人々の何気ない日常の会話を自然と聞き入ってしまう、何とも不思議な魔力を感じる作品でした。

<おわりに>

 イタリアの今を描いたドキュメンタリーです。興味を持てるかどうかで評価が変わってきそうです。

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