あなたを自由にする表現は? 新しい言葉に出会う禅コーチング
これまで数回にわたって、言葉を減らす禅コーチングについてお伝えしてきました。
過去の記事はこちら
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禅の修行は、余計なものを手放すことから始まります。手に握っているものを離さないと、新しいものが握れないからです。
言葉も減らして終わりではありません。今までの言葉を手放すと、今度は自然に身についてくる表現があります。
先日、この一年ほど指導している女子プロゴルファーが優勝しました。
なにより嬉しいのは、プレースタイルがガラリと変わったことです。
去年までは、さまざまなレッスンを受けてきたようです。
次のような観点でのトレーニングです。
・いかに理論的にいいスウィングにするか
・いかにミスを減らし、安定感のあるプレーをするか
・自分の弱点を克服するには、どうしたらいいか
これは固める方向のトレーニングといえます。
スウィング、心、身体を固めるのです。
自分のスウィングを固めようとした結果、心にも身体にも負担をかけ続け、引退寸前の状態でした。
コーチングを始めたころは、このプロゴルファーから出てくる言葉に以下のようなキーワードが並んでいました。
自分に厳しく
もっと頑張らないと
ミスしないように
結果がすべて
怖い
不安
〜しなければいけない
〜してはいけない
人に自分のプレーを見られるのが嫌
恥ずかしい
これらはすべて固める言葉です。
こうした言葉が生まれる背景には、プレーすることへの誤解があります。一番は、自分がプレーするという意識でしょう。自分が打つというのは当たり前のようですが、実はこれは「自我」が強いプレーと言えます。
クラブをコントロールする。思うような球を打つ。理想のスウィングをする。目標の結果を達成する。
こうした考えが今のスポーツ界では当たり前です。いや、スポーツだけではないですね。ビジネスでも目標を達成するために、いかにチームや部下を束ねていくかを追求します。そこには、理想のチームの姿があり、成功と失敗というジャッジがあります。
ただ、これもすべて固める方向なのです。「固める」というのは言葉にするのが難しいのですが、頭で考えだしたジャッジに縛られている、あるいは型に囚われている状態といえます。
固めるのが悪い訳ではありません。やる気のあがる目標設定、論理的思考、適切なジャッジ、メンバーを束ねるマネジメント。すべて安定したチーム運営において、とても大事です。
ただ、固めるのは、頭での思考によるプレーです。
これに対して、思考からは生まれてこないプレーがあります。それがアートです。
このプロゴルファーの場合は、思考的なプレーの限界を迎えていました。そして去年からは、固めることを手放すことに挑んできました。
いかにプレーをアートするかという方向です。
今回の大会では、ホールや状況によって、いろいろな球筋が自然に生まれてきたそうです。狭いホールでは、プレッシャーがかかって不安だったものの、身体は動いてくれたようです。
「今が人生の中で、もっとも自分らしいプレーができている」と喜んでいました。
また、「すべてのプレーが新しい」という感覚が生まれ始めてきたようです。自分がという「エゴ」を捨てるほど、アートが顕れます。自由にノビノビと身体がうごきはじめて、それが目に見える結果になっていくことに、本人が一番驚いているようです。
選手とSNSでやりとりをしているのですが、一年前とは言葉がすっかり変わってきました。
以下は、最近の選手とのやりとりです。
新たに身につけている表現をピックアップしてみました。
1.今この瞬間を表現する言葉
スタートホールでもボールを持っているのに、違うところからボールを出してみたりして、緊張していました。とまぁ。朝からドタバタしていたんですが、実際コースに出ると、そんな自分も面白いなと思って、今はこの気持ちのまま動いていこう。そして気持ちに寄り添って波乗りで行こう。と思えました。
新たな表現…面白い、波乗り(サーフィン)、気持ちのまま動く、気持ちに寄り添う
コースもメンバーも変わります。そして私も変わります。明日はどんな1日になるか。どれだけ新しい一日を体験できるか楽しみです!
新たな豹変…変わる、新しい、体験、楽しみ
ホールによってはボールを曲げたり高く打ったり、とにかくアートなラウンドでした。
新たな表現…アート
2.自分を安心させる言葉
昨日から右足の調子が悪かったので、それも考慮しながら、今できる動きでゴルフしました。最近、本当に自分に優しくなったと思います。ちなみに足は先ほどケアしてもらいに行ったので楽になりました♪
新たな表現…今できる動き、優しく、楽、ケアする
コースに身を委ねて明日はほんわりやってきます!
新たな表現…委ねる、ほんわり
気になっていたパターはとにかく優しい目でみてきました。入れなきゃいけないとか思うとプレッシャーをかけてしまうので、そんなことが頭をよぎっても、自由にしてあげよう。と優しくみてきました。そしたら身体も安心して動いていました。
新たな表現…優しい目、自由にしてあげよう、身体も安心
3.受け入れる言葉
最終ホールも両サイドOBで、頭は怖がっていましたが、コースを感じ大地に任せて動くことができました。そしてバーディフィニッシュです。
新たな表現…任せる、感じる
4.自分を観察する言葉
頭はたくさん喋っていたけど、最近瞑想のおかげか、身体に意識を戻すのがはやくなってきました。頭の声も聞いてあげるけど、身体に意識を戻す。ちょっとずつ自分と仲良く出来てきているのかなと思います。
新たな表現…身体に意識を戻す、自分と仲良く
これらは、新たに生まれてきた言葉の例です。
スポーツでもビジネスでも、これまで作ってきた枠から出てみると、新しい表現に出会います。新しい表現に出会うというのは、新しい自分を生きているということです。
一方で、古い表現をそのまま使い続けているときは、古い自分で生きているといえます。そこにはイノベーションもアートも起こってきません。
新しい表現と出会うのは、本当のあなたに出会っていくことともいえます。
新しい表現に出会うために、本をたくさん読まれている人もいます。ただ私は、本を読むのはあまりオススメしません。今持っている言葉が手放せていないのに、さらに言葉を増やすのは、思考を強化し、さらに固める方向にいってしまうからです。頭デッカチになってしまうのです。
言葉を手放すには、音楽を聴くのもいいでしょう。絵を見るのもいいでしょう。言葉になっていないものに触れることをオススメします。
坐禅もいいと思います。まず、頭の中で浮かんでくる言葉に気づくこと。そして意識を呼吸に向け直すというプロセスを繰り返す中で、自然に古い言葉は手放されていきます。
もし、1人では、なかなか古い言葉が手放せないようでしたら、コーチングのセッションを受けるのもいいかもしれません。
最後に宣伝くさくなってしまってすみません。ただ、固めた枠を壊すのは、1人では結構、難しいです。私自身もコーチをつけていますが、やはり安心した環境で誰かに話すことで、言葉は新しくリニューアルされていく働きがあるのだと思います。
言葉は、あなたを縛る働きもありますが、あなたを解き放ってくれる働きも持っているのです。
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