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あなたの話は相手との間で切れていませんか? エゴが消える禅コーチング

以前、noteの記事で「言葉を減らす」大事さについて、お伝えしました。

「無心とゾーンに入るための表現を知ろう 言葉を減らすメンタルトレーニング」の記事はこちらから


今回はビジネスにおいて、言葉を減らすポイントについてです。

ビジネスパーソンのクライアントさんで部下とうまくつながれている方は、相手が理解しやすい表現を使っています。しかも言葉の数は少ないです。

その一方で、話せば話すほど、部下とつながれなくなり、切れていく方がいます。

「切れている」というのは、説得はできても、相手は意見を押しつけられた感覚になっている状態です。「分かってもらえたはず」と思っていても、イメージの共有はできていません。理解したのはあくまで表面的な部分のみで、真意は理解できていないのです。



なぜ話すほど、切れてしまうのでしょうか?



多くの場合、自分の中で考えながら話しているのです。

考えながら話すのと感じながら話すのでは、まったく違います。
考えながら話している時は、身心が内側に閉じていますが、感じながら話しているときは、身心が外に開いています。

考えているときの状態と感じているときの状態。この2つの差を理解してもらうために、ワークをすることがあります。

2人1組になってもらい、まずは、相手のことを感じながら肩に手を触れてもらいます。

次に、何か考え事をしながら肩に手を触れてもらいます。

この2つのワークをすると、触られたときに違いを感じたと答えられる方が多いのです。

感じながら触られると、手の温度を感じたり、柔らかく自分の身体に溶け込んでいくような感覚を覚えるようです。

一方で、考え事をしているときは、手が固いというか、自分と手が分離しているような感覚を覚えるようです。


なぜ違うのでしょうか?


考えながら話しているというのは、自分の思考が作り出している言葉を外に出している状態です。ほとんど無意識のうちに。

自分の世界だけで作り出した言葉は、残念ながら相手とつながっていません。

人は、言葉の持つエネルギーを無意識のうちに感じています。どんな褒め言葉をもらってもどこか嘘くさく感じたり、逆に厳しい言葉でも愛を感じるのは、言葉とはただの記号を超えた「ことだま」だからです。

コーチの仕事を始めた頃は、メンタルトレーニングをしていて何かを伝えようとすると、たくさんの言葉を使っていました。言葉を尽くさないと理解してもらえないのではないかと不安だったからです。特に、相手が怪訝そうな表情になると、さらに言葉を足していました。

ただ、つい熱くなって、いろいろなことを伝えようとすると、自然に言葉の量が増えていきますが、これは逆効果になることも多いです。不安や焦りから発した言葉は、どんなに良いことを言っていても、なかなか伝わりません。

今でも、どう声をかけたらよいか悩むことがあります。なにも浮かんでこないときもあります。


こういうときが、実は「思考の言葉」から「感じる言葉」に切り替えるチャンスです。


まず、言葉にしようとするのではなく、待ちます。あるいは、相手の話をもう少し聴いてみるのです。

話を真剣に聞いているうちに、自分が考えるという状態が薄まっていきます。また、話そうという意気込みが消えていきます。

話そうという意気込みが消えていくと、言葉の数は自然に減っていきます。すると結果的に、相手の言葉が増えていくのです。

また、話を自分が進めようとしないことも大事です。相手が使った表現を活かしましょう。相手が「疲れている」と言ったら、「疲れている」という言葉を含めて、答えるのです。

これは言葉だけではありません。悲しい表情のときは、悲しい表情で返すというように、表情で表すのも一つの方法です。人は、自分が使った表現を相手が返してくれると、イメージしやすくなります。

今、紹介したのはコーチングの技法です。企業でコーチング研修をしていると、ある参加者から「コーチングをしていると、自分が消えていくように感じます」と言われたことがありました。自分が消えていくというのは、いい表現だと思います。

「自分」というのは思考で作られた自分であり、エゴで形作られた自分といえます。



「自分」というエゴが強いとき、言葉は増えていきます。

「自分」というエゴが消えていくとき、言葉も減っていきます。




ちなみに坐禅をしていると、自分がいかにおしゃべりか気づかされます。

坐った当初は頭がどんどん言葉を作り出していきます。止めようとしても止まりません。大事なのは、言葉を止めようとしないことです。頭は、おしゃべりが好きなのです。意味もなく話すのです。

頭の働きは自分ではコントロールできません。自分に対して無意識に生きていると、頭が作り出す言葉が真実のように感じます。

頭の中で人や自分に対してひどい言葉が浮かんでくると、なんて自分はひどい人間なのだろうと思います。

逆にいい言葉が浮かんでくると、自分はいい人ではないかと嬉しくなったりします。

しかし、頭で浮かんでくる言葉は、自分でもあるのですが、自分ではないのです。

坐禅とは、自分の中に起こっていることを意識することです。といっても、何かを変えるのではありません。坐禅では浮かんでくる言葉を止めようとせず、ただ受け流していきます。言葉の意味を理解しようとしたり、問題を分析しようとしないようにするのです。浮かんできたことに気づき、ただ受け流していきます。

頭の中から浮かんでくることを消すことはできません。でも浮かんできたことをただ受け流すことは、意識すれば出来ることです。ただ、最初は上手くいきません。簡単ではないのです。まさにこのトレーニングが坐禅です。



坐禅の姿は、受動的なあり方です。何かをしようとするのではなく、起こっていることを受け取るのが受動的なありかたです。

まず動くことをやめ、話すことをやめます。

思考という働きをさらに強化するのではなく、自分の中で起こっている思考の働きをただ受け取るのです。

そうすると、周りの音が聞こえてきます。自分の呼吸が聞こえてきます。周りの景色が目に飛び込んできます。

周りを感じはじめると、だんだん言葉が少なくなっていきます。

言葉でつながるという頑張りが薄れていくと、「自然なつながり」が顕れてきます。

本来そこにある、つながりが見えてくるのです。

すると、言葉の重要性が薄れてきます。頭で作り出す言葉は、きまぐれで、周りの影響を受けやすく、大した意味がないことに気づいてきます。

言葉に一喜一憂することはありません。大事なことは、頭で作り出す言葉に振り回されないことです。



何を話すかではなく、起こっていることに目を向けること。



最初に申し上げた「イメージの共有」とは、相手のことを感じようとする受動的な態度から生まれます。

受動的態度から生まれてくる表現は、きっと2人を包み込む「ことば」になっているでしょう。


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