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数学の学習方針

どの科目にも共通する:基本方針

紹介する講義テキスト、参考書、問題集に書いてあることはなるべく全部覚え、各用語の説明や仕組みそのものの説明が自力でできるように、日常に必要な知識原理の暗記のプロセスを入れ込むこと。参考書や問題集はレベル別に提案しているので、不要なことが書いてあるようなものは一切ない。

例外として、総合英語・化学の新研究・社会科の史料集など、私の方から「辞書的に使おう=必要に応じて一部のみを読み込もう」というものもある。ただし最上位レベルを志向するなら、辞書的なものでも、ある程度の時間を割いて全体を通して読み込む必要がある。

数学は最も調子に乗りやすい科目&量に逃げる科目

「1日どれだけ問題を解けばいいでしょうか?」という質問、あるいはこれに類する質問をよく受ける。「人による」と私は答えるし、そう答える他ないと私は考えている。なぜか。

・ある問題を解くために必要な知識が揃っているかどうか
・知識がある上で、それらを使う問題が解けるかどうか
・解けるとして、どれぐらいの速さで解けるか
・解けなかった(わからなかった)として、それを復習するのにどれだけの手間がかかるか

これらが人によってバラバラだからだ。やってる本人が、これを把握していないことが多い。このため、以上のことを考慮しないような、以下に続く典型的な学習の進め方をしてはいけない。特に難関大志望の、数学の腕に覚えがある(実際には、そこまでの腕はない)生徒がこれをやりがちである。

・答案作成もせず計算と式変形だけ書いて解き進める
・ハイレベルな問題集の「解説が理解できる」ことに満足する
・計算練習にすぎない教科書傍用問題集をひたすら繰り返す

問題集は多種多様であり、それぞれレベルと目的が違う。自分の力加減を見誤ってしまうと(ほとんどの高校生にそれを適切に自覚するだけの能力はないが、なぜか他人の間違いはわかる。自分が自分にとって一番遠い存在なのだ。)、ただ時間がかかり見覚えのある問題が増えるだけで、点数には表れないという悲しい事態に陥る。

これを防ぐためには、まずは教科書レベルの基礎基本を徹底し、自分の言葉でさまざまな数学の知識を理解していく必要がある。

コンパクトな問題集と教科書で、抽象的に考える練習をする

私は1A2B全体で150〜200問程度、数学3全体で100問程度の問題集を提案する。また、教科書を利用し(例え難関大を目指す浪人生でも)単元ごとの説明を理解し、必要なら練習問題もしてもらう。問題集の類題は、教科書の節末・章末問題まで取り組めば十分な量が確保できる。これによって、

多くの問題に共通する知識・考え方を優先して理解・暗記していく抽象化能力の訓練

を行えると私は考えている。覚えている知識がそのままの形で出てくるとは限らない入試対策において、重要な訓練である。

抽象化能力は、大きく分けて2つの力があると言えるが、その2つはほぼ共通している。

①「見た目が違うもの同士の性質や働きを捉え、性質は働きが同じならば、2つは同じだと捉える力」
②「見た目が違うものの共通した性質や働きを見抜き、その性質や働きに対応するためのルールを適応する力」である。

この能力を持ち普段から有効に活用しているのは人間だけであり、人間と類人猿を分ける最たるものである。

数学は日常生活とあまり関係なさそうに見えるし、実際ほとんどの人にとって、具体的な物事とあまり関係がない。高校生で、高校で習う数学を具体的に使うのは入試ぐらいのもので、それが直接金になるような生活をしている人はほんの一握りだろうし、ましてやそれを技術に転用するだけの頭脳と時間がある高校生は、指を折って数えられる程度しかいないだろう。具体物と結びつきづらい分、数学は他の科目に比べれば「抽象化しやすい」科目であるといえる。具体的な物事と結びつきづらく、身体感覚に根ざした理解に頼りづらいからだ。その分頭を使うことからは避けられない。

当然、他の科目でも抽象化能力を要求されるが、英語・国語は「文字の読解」、物理・化学は「現象や物質」、と言った、”具体的”で、受験生それぞれの認知に紐づきやすい要素があり、抽象化訓練がしづらく、普段持つ抽象化能力でなんとかやりくりするしかない面がある。数学はそれがほとんどない。

近年の入試を突破するにおいて、必ずしも数学を得意にする必要はないが、数学を通じた抽象化訓練は、今後の人生で多いに役に立つ。なぜか? まず文字や現象を、書かれた/描かれた通りに認知し、それらが持つ意味や役割を考える、というのは論理的思考の基本動作だからだ。人間は、目の前にあるものを、自分にとっての損得や敵味方、あるいは脳内の妄想とつなげることに長け過ぎているので、そこを抑えないことには、大学以降の学問で成果が出づらい。もちろん、入試でも成果が出づらい。やっていこう。

具体的にやってもらうもの

数学については提案する材料が少ないため、ここで記してしまう。

まず、ある程度数学を勉強してきている場合であれば、以下の組み合わせが、私の考える入試基礎固めには鉄板である。

・松田の数学1A2B典型問題type100
 (理系は追加でtype60 + 勇者を育てる数学Ⅲ)
・教科書(なければメルカリなどで買う)

どれだけ難関大を志望していようと、基本的にはこのラインからやってもらう。問題集に手が出ない場合は、教科書の練習問題を使って少しずつ学習を進めてもらう。似たようなラインの問題集は多いが、これまでの生徒たちの使い勝手から考えた時この組み合わせが最も進めやすそうだと感じている。「基礎・標準」を銘打つ多くの参考書は、多くを書き過ぎだと思う。

type100, 60, 勇者に掲載されている全ての問題が、自分の言葉で説明できるようになるまで、何度か取り組んでもらう。ここがクリアできたら、次の段階の問題集を勧めるが、基本的には夏以降になるであろう。ここには記載しないので、個別に相談すること。

共通テスト対策について

少し先の話になるが、大きく分かれるところなので今説明しておく。

共通テスト数学、率直に言ってバグっていると思う。共通テストのみ数学を使う、という人は、上記の基礎徹底のち形式対策に入ってもらう。二次試験・私大一般まで数学を使うという人は、秋の終わりまでは二次試験対策になる。

いずれの場合でも、数学の知識・考え方を前提としながら、要領よく文章を読み、結果がすぐに出せるように計算することを求められるため、その練習として以下の資格試験に関する問題集を使って、要領のよい計算の仕方を少しずつ進めてみることをお勧めする。

公務員試験の数的処理・数的推理

公務員試験におけるこの2つの科目は、書いてあることを、書いてある通りにだけ読むのではなく、それを咀嚼しながら計算にかからないと、まず計算に取り掛かるまでにとてつもなく時間がかかるように作られている。共通テストで必要な「事務処理能力」を鍛えるのにうってつけである。

この取り組み以外は、基本的に過去問・実践問題集を使って、「知識・考え方が頭に入っていない」と「要領よく必要な処理ができなかった」ということを分けて復習することになる。

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