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良いスライドを作るには ~その2:「事実の押し付け」型と改善策~


前回の記事

前回は、「なぜ、あなたの作るスライドは理解されないのか?」という所から、1スライド、1メッセージにおけるアンチパターンを1つ紹介しました。今回はその続きから始めます。

”結局、何が言いたいの?”を誘発する「事実の押し付け」型

1スライド、1メッセージにおけるアンチパターンの2つめとして、単に事実だけを淡々と説明するケースがある。
例えば、こんなボディーのスライドに対して「トラックドライバーの年収は400-450万円前後、また、年間の労働時間は、2,500時間前後である」というようなメッセージを書いたとしよう。

出典:令和2年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業物流市場における競争環境や労働環境等に関する調査 (2021年3月) アクセンチュア株式会社

この場合、十中八九想定されるツッコミとしては「それで、何が言いたいの?」というコメントである。確かにボディーに記載の事実は伝えており、1スライド、1メッセージの体はなしている(実際には2メッセージになっているのだけど、一旦置いておく)

しかし、このメッセージを伝えた所で、読み手としては「ここから、何を言いたいのか?」が分からない訳である。このように、1スライド、1メッセージの体をなしていても、ただの事実の押しつけになっている場合には、資料としてはあまりよろしくない。

ちなみに、この場合であれば、(それって自明なのでは?、ということは一旦置いておいて、)言いたいこととしては、「トラックドライバーが他産業と比較しても、低賃金・長時間労働の職種になっている。」というストーリーが展開されている。

「事実の押し付け」型の改善策

では、「事実の押し付け」型にならないようにするにはどうすればよいのか?
基本的なことではあるが、主に次の3つを意識すると良い。

  • 全体ストーリー・論点に基づき考える

  • ボディーから考えない

  • 「これ、面白いか?」という妄想

ここからはそれぞれについて説明する。(ちなみに、ここから先書くことは、至極当たり前なことなので、新たな気づきはほぼないと思われる。。。)

全体ストーリー・論点に基づき考える(特にメンバーの場合)

ここでは、上司やマネージャーなどから、全体資料のうち一つのパートや特定のページを任された状況を想定して説明する。

この場合、スライドのメッセージを考える際の指針になるのが、全体ストーリーや論点となる。というのも、あくまで1スライドは、全体資料や全体ストーリーを構成するパーツであるためで、それ単体で何か効果を持つ、というケースは少ない。(討議用資料において、1-2枚で議論する場合もあるが、あれも結局は論点が明確だから出来る技である)

そのため、そもそも全体ストーリーや論点がない、または理解していない場合、1スライドや特定のパートを作ることはその時点で難しくなる。加えて、論点が不鮮明な状態でファクトやデータを見た所で、ストーリーとの整合が取れないから、事実の羅列に陥ってしまう。

例えば、このグラフ、どのようにメッセージをつけますか?といきなり言われると、なかなか難しい。

出典:総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 石油・天然ガス小委員会 第1回委員会マッキンゼー・アンド・カンパニー

単純にこのグラフだけを見れば、「上位Y社の原油処理能力は世界全体のXX %を占める」とか「原油処理能力に対して、ネルソンコンプレキシティ指数は相関せず」とか結構いろいろな観点が考えられる。

ただし、この資料は、「我が国製油所の国際競争力」というテーマのものであるため、ここで言いたいこととしては、日本の製油所が世界的に見ると、どこに位置づけられるか?という点であった。なので、シンプルに、「日本の製油所は世界的に見れば中規模」というメッセージのスライドとなっている。

ボディーから考えない

2つめは、当たり前ではあるが、意外と疎かにしがちな「ボディーから考えない」である。様々な資料作成の書籍に書いてある内容だが、意外とこれが出来ていない。なぜ出来ないのか?というと、これは仮説だが、”資料の出来上がっている感”を見せたい/見たいがために、先にボディーから着手しているケースが多いように思う。

気持ちは分からなくもないが、色々とボディーを加工・化粧した所で、意味のないゴミスライドを作ったら、その時間は無駄になる。何度もボディーの記載を修正するのではなく、メッセージを研ぎ澄ますことに時間をかけ、それを支えるボディーは1-2回程度の作業で実現する。これが理想的な資料作成の工程になる。

ちなみに、たまに資料作成の書籍に「メッセージとボディーのイメージが決まったら、Power Pointはほぼ手直しがないように作業する」という旨の記載を見るが、経験上あれはかなり難しい。手書きのイメージはあくまで手書きなので、Power Pointで表現した時に思ったトーン・デザインにならない場合もある。そういった時は、多少の手直しは発生する。(ただし、それを考慮しても、ボディーから考えるよりも早く、かつ、確率的に刺さる資料になる)

「これ、面白いか?」という妄想

画像出典:Pixabay

3点目は、全体ストーリー・論点に基づきメッセージを書いたが、メッセージを初見の人間が見た時に果たしてどんなリアクションをするか、妄想するという方法である。もう少し具体的に書くと、そのメッセージを読んで、「確かにそうだよね」、とか「へぇ〜、なるほどね」、「マジで?」などの心揺さぶる内容になっているか?を想像するイメージだ。

実は、当初想定した全体ストーリー・論点に基づいてメッセージを書いてみたけど、読み手のリアクションが微妙な場合がある。これには2つの原因が考えられる。1つめは、論点に対する解にはなっているが、すでに自明であり、あまり新しいインサイトがない場合である。この場合、「結局、ここで何が言えれば面白いんだろう?」といった視点で一度作ったメッセージを推敲することがポイントになる。

もう一つの原因。1つめの原因とも関連する場合が多いが、そもそもの全体ストーリー・論点がイケてないケースである。基となる全体ストーリー・論点がダメなら、メッセージをいくら鋭くした所で、それは刺さらない。一方で、論点が弱い、という観点は意外と忘れられがちである。そのため、あえて「ここってそもそも、何が言えれば良いんだっけ?」「それって本当に知りたい内容だっけ?」と論点を練り直す工夫が必要になる。

この後、書きたい内容(案)

と、寄り道しながら色々書いていたら、またしても文字数も多くなってきたので、ここで一度切ります。続きはまた今度。

  • スライド、1メッセージ(続き)

    • 「ほんまかいな」型とは

  • スライドを使う目的を覚えていますか?

  • そのスライドにストーリーはあるか?

  • 一回、スライド使わずに資料作ってみれば?

  • 見栄えはどこまで突き詰めるべきか?

  • デザインと執筆の同時並行をしていませんか?

  • (順次追加予定)

参考書籍(興味ある方は読んでおくと良いです)

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