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五月、第二日曜日

 おはぎ、すき焼き、あんぱん、羊羹、甘酒、日本酒。甘党な父の好物はいくらでも思い付く。父方の祖父が糖尿病で苦しんでいたのを一番身近で見ていたはずなのに、父親自身は定年間近となってもなお、甘い物をよく食べる。覚えやすい1964年という生まれ年も父のものだ。東京オリンピックや東海道新幹線の開通と同い年ということ自体にそれほど価値はないと思うのだけれど、しばしばそのことを、どこか誇らしげに語る父の姿を何度も目にしてきた。父がどこの小・中・高・大学に進学したかも知っている。高校と大学

    • 帰る

      一行目からすごい。 進学や就職で地方から大都市、特に東京に出てきた人の多くは少なからずこういう思いがあるんじゃないかな、と思う。この感覚は東京出身の人には分からないと思うけど、そういうのって間違いなくある。全員じゃないけどね。自分も上京当初は、東京の大学に進学したからには、大企業に入って、ガツガツ仕事して、都会の家で暮らせられればベストなんじゃない?みたいに思ってたし、今でもそんな生活に憧れる自分もいる。 確かに東京はすごい場所だな、と思う。地元の何倍もの人がいて、何倍も

      • 頑張る(頑張れ)

        最近うまくいかないこと多め系な感じで。就職のあれこれだったり、クレジットカード不正利用されたり、人間関係だと、信頼してる人に嘘つかれたりと、枚挙にいとまがない的なアレです。あと、ベンチプレスの重量の伸び悩みとか、眠れないだとか、普通に金が無いとかです。ベンチプレス夏までに100㎏挙げたい。 こういう状況だと神経質になっちゃうのが俺あるあるなので、絶賛神経質です。それで、人と話してると気になることが出てきたのでシェアしようと思います。こういった日々の出来事をつぶやくチャンネル

        • ルーチン

           最近、知らない人と5分くらい会話して床に就くんですよね。ランダムに通話相手をマッチングしてくれるアプリがあって、男性と女性一人ずつと会話することにしています。昨年の12月くらいからかな?夜どうしても自分の将来のこととか、家族のこととか、過去のこととか、色々考えすぎて眠れない日がしばらく続いてしまったので、そこら辺からやっているのですが、入眠効果は結構ありました。知らない人の話を聞いていると、自分のことについて考える時間が減るので。現実逃避と言われれば全くもってそうなのですが

        五月、第二日曜日

          益虫

           遠くで踏切遮断器の警報音が聞こえる。  あり得ない。もう何十年も前に最寄り駅の周辺一帯が高架化されたのだから。自分がいる場所を推測しようとするが、視界は一面闇で覆われている。不思議と、右脚を這う一匹の蜘蛛だけは輪郭をはっきりと捉えた。

          無理のない暮らし

           500円玉貯金が出来ない。ほとんどの決済をカードで済ましてしまうのだから、500円玉が手に入らないのである。今年に入って現金を使ったのは初詣のお賽銭くらいだろうか。かくして、“500円玉貯金缶”なるものはインテリアと化していた。

          無理のない暮らし

          ダブルワーク

           大崎は掃除をよくする。しかし、それは必ずしも彼がきれい好きというわけではない。掃除なんて、やらなくてよいのならばやらない方がいいのだ。ライターとしての彼の実力なら、その時間でビジネス誌のインタビュー記事くらいは書けるだろう。彼が掃除を進んでするのは、細かな血痕を拭い取るためである。

          ダブルワーク

          奥に

          南東向きの我が家では、八月になると暑さで目が覚める。耐え難い湿気と耳を劈くようなセミの鳴き声を傍らに、新聞の気象予報欄に小さく記された最高気温を一瞥し、ペットボトルに入った麦茶と庭で採れたプチトマトを順番に口に含む。前日の夕立に打たれた果実はほぼ全てが裂果しており、見た目は最悪だ。前歯に挟んだぬるいトマトは勢いよく破裂し、果汁が噴き出る。私は慌てて左手で口を覆う。市販品には到底及ばない水っぽい甘さはどこか懐かしく、飲み込まないうちに二つ目に手を伸ばした。 固定電話の着信音が