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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【2月16日㈬~2月22日㈫】

年末の当通信で「字幕初号試写をご覧になったグラフィック・デザイナーさんが号泣…」とか、年明けも「向田邦子の『阿修羅のごとく』を思い起こさせる…」とか、散々思わせぶりに触れてきた、次なるザジ配給の新作の公開決定が、先週末ようやくネット上で情報解禁となりました。イ・スンウォン監督作品『三姉妹』、という映画です(トップ画像は、トリミングしてしまったため、“三姉妹”のうち、次女と三女しか映っていませんが、ホントは右下に長女がいます)。

去年3月にコロナ禍をぬって開催された大阪アジアン映画祭の特別注視部門で上映された作品で、今その時の当通信を確認したら、文末で「私の狭い狭いストライクゾーンに、直球ストレートで入った素晴らしい映画との出会いもありました。配給できるかどうか分かりませんが、観れて良かった!大阪、来た甲斐がありました!」と書いていました。2泊3日で出かけて、せっせと映画を観続けたのですが、なかなか琴線に触れる映画に出会えず、ほぼ諦めかけていた滞在最終日の、最後から一本手前で観た映画。それぞれに問題を抱えた三人姉妹の、その“問題の抱えっぷり”があまりにも激しいので、最初は思わず引いてしまうのですが、三人が抑えていた感情を爆発させるクライマックスは圧巻。呆気にとられつつ、ドはまりしてしまいました。

『三姉妹』に出会った、昨年3月の大阪アジアン映画祭 プログラム

ザジで韓国映画に関わるのは、2015年にポン・ジュノがプロデュースしたサスペンス映画『海にかかる霧』を宣伝させて頂いたのと、一昨年秋にマクザムさん提供によるイ・ヨンエ主演作『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』の配給を手掛けたのに続いて3本目ですが、ザジが主体的に韓国映画を買い付けるのは、実は初めて。ここ最近、スター俳優が出演するラブ・ストーリーやサスペンス、アクション以外にも、韓国の良質な作品が公開される事例が増えてきてはいるものの、地味目なキャスト(ムン・ソリ主演だけど、コアな映画ファン以外の知名度が高いワケではないし)で、しかもドラマ。普通に考えたら、コロナ禍で減少している中高年層の観客がメイン・ターゲットの映画なので、配給を決めるには勇気が要りました。が、大阪で一目ぼれしてしまったので突進してしまいました。やるっきゃありません!

現在作り込みの真っ最中。邦題は大阪アジアン映画祭での上映題名でもあり、原題そのままの『三姉妹』。「三人姉妹」だとチェーホフ感が強く、ちょっと気取った感じだし(あくまで個人的な感想です。オールシネマオンラインで検索すると、すでに5本も同じタイトルがあったし)、「三姉妹」は『宋家の三姉妹』(’97)や『スケバン刑事 風間三姉妹の逆襲』(’88)など、タイトルに含まれる映画は多いですが、「三姉妹」が独立しているのはワン・ビン監督の『三姉妹 雲南の子 』(’12)以外には見当たらず、「三姉妹」三文字のみの邦題は検索しても出て来なかったので、ほぼすんなり決めました。

悩んだのはキャッチコピー。単なるウエルメイドな“感動の家族ドラマ”には終わらせたくないし、三姉妹が不幸過ぎたり、やることが極端だったりして、思わず笑ってしまうシーンもある、“エグ味”的なものもある映画なので、そのテイストも込めたい。で、最初に考えたのは「人として、どうかと思う女たち」。こんな人たち、近くにいたらヤダなー、という感じ(笑)。でも、そんな人たちをお金を出してわざわざ観たいか?という話もあるのでボツ。

次に考えたのが「私たち・GIRI GIRI」。ギリギリに追い詰められた女たちを描くドラマ、という意味を込めました。「・」と「GIRI GIRI」にこだわりました。お気づきの方はいらっしゃるでしょうか?(いない) カトリーヌ・スパーク特集の予告に入れたキャッチ「やりたくなったらやっちゃいな」と同様にピンクレディーへのオマージュです。ファンの間でも人気の高い、80年3月に発売されたシングル『愛・GIRI GIRI』が出典です(作詞 伊達歩)。しかし、これも「読みにくい」ということで却下(実際シングルはヒットしなかったし)。

おおよそ洋画配給会社の公式noteとは思えない画像

その他にも、“姉妹あるある”な感じを出すべく、「言われたくないことを、サラリと言う生き物」とか、前述の「阿修羅のごとく」にインスパイアされて…というより、相米慎二監督作『ラブホテル』(’85)の挿入歌でもある山口百恵「夜へ…」(作詞 阿木燿子)から拝借して、「修羅、修羅、阿修羅」というのもどうかな?と思ったのですが、字面がビジュアルに上手くハマらないので、採用は見送られました。

そして…。最終的にどうなったのかは、3月中旬に予定されているビジュアル、予告編解禁をお待ち頂ければ幸いです!こんだけ引っ張っといて??
『三姉妹』は、6月17日㈮よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館を皮切りに、全国順次公開。どうぞお楽しみに!

texte de daisuke SHIMURA















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