見出し画像

Histoire De Zazie Films 連載㉑    プレイス・イン・ザ・ハート、あるいは、イーストウィックの魔女たち

------------------

前回の記事はこちら☞ 連載⑳ ニュー・シネマ・パラダイス
----------------

20回に渡って書き綴ってきた“Histoire De Zazie Films”。厳密には時系列ではなかったですが、それでもだいたい会社の設立前夜から設立の1989年、そして現在に至る31年の歩みをひと通り振り返ることが出来ました。途中から“終活”をしているような気分にもなりつつ(笑)、自分自身も今までの道のりを整理できた気がします。ひと月の間、お付き合いどうもありがとうございました!

で、最終回。タイトルを見てすぐに内容を想像出来た方も、中にはいらっしゃるかと。今回の“Help!The映画配給会社”プロジェクト、見放題パックの第一弾チームでご一緒している4社の社長との思い出を書いてみようかと思います。実在の人物4名なので、かなりリスキーな作業になりますが(笑)、後ろから刺されない程度に…。

一番最初にお会いしているのは、セテラ・インターナショナルのY社長。私がビデオ会社に入社した1986年頃だと思います。Y社長はご自身のnoteでも書かれていますが、当時映画や音楽の権利を扱う会社で仕事をしていて、私の会社に映画の売り込みに来ていたのでした。紹介して頂いたのは主にヨーロッパ映画。Y社長の“ジェラール・フィリップ愛”は有名ですが、当時はルトガー・ハウアーのファンでもあって、彼が主演するオランダ映画のサンプルビデオをよく持ち込んでくださいました。が、初期の頃のハウアーの作品の多くはポール・ヴァーホーヴェン監督作。一緒にサンプルを観るわけではないので問題はないのですが、結構激しい描写の映画も多く、若かりし頃の私は「あのYさんがこんな映画を持ってくるなんて」と顔を赤らめていました(ちょっとウソ)。

次にお会いしたのはクレスト・インターナショナルのW社長。私が会社を立ち上げる前年、何人かの業界の友人が励ます会みたいのをやってくれて、その時すでに業界にいたW社長が、どなたか共通の友人に声をかけられて参加し、そこで初めてお会いしたのだと思います。その時は初対面なのでそんなに話をした記憶はないのですが、鮮烈に印象に刻まれたのは、私の独立後。当時ロスのビバリーヒルズのホテルで行われていたAmerican Film Marketという映画見本市に初めて参加した私を、見本市会場ですれ違うたびに「頑張って!」と声をかけてくださったのがW社長でした。雛鳥は目を開けたときに初めて見た者を親だと思い込む、という習性がある、と聞いたことがありますが、私もW社長を親だと思っています(かなりウソ)。

画像1

次はムヴィオラのT社長。T社長とはフランス映画祭が横浜で開催されている頃(今も横浜に戻りましたが)お会いしているはずですが、ちゃんとお互いを認識したのは、以前連載でも書いた通り『ビートニク』というドキュメンタリー映画の宣伝パブリシティをお願いした時だと思うので、公開前年の2000年。当時うちにいた宣伝の子たちを厳しく指導してくださいました。私の彼女の印象は“ぶれない人”。『ビートニク』の次に宣伝をお願いした作品を「描き方に納得がいかない」とキッパリ断られました。その後、ベルリン映画祭等でご一緒する機会も増えて、“ちょっと怖い人”という印象は格段に柔らかくなり、今回の“Help!The映画配給会社”プロジェクトでご一緒して、ますますその誠実なお人柄に魅了されることになりました。

最後にミモザフィルムズM社長。M社長と初めてお会いしたのはいつだったでしょうか?気がつけば、いつの間にかとても仲良くなっていました。それは何といってもM社長の、あっけらかんと人に壁を作らないおおらかな性格ゆえ。人見知りをする私とは正反対なので、たとえば私は知らない方が多い飲み会などにはほとんど行きませんが、社交的なM社長はお知り合いを積極的に紹介してくれるタイプ。当初は私とは合わない、と私自身が勝手に思っているところがありましたが、いつの間にかこちらの壁も取り払われ、今では「そんな時期もあったよね」と言い合える関係です。日本人が私たち二人きりしかいない、海外の見本市出張でも楽しくやれるようになりました。

4人に共通するところがあるとすれば、それは《自分に正直》であるということ。もちろん長年社長業をやってきているワケだから、人知れず諦めたり、妥協したりしてることは沢山あると思いますが、そういう顔は見せずに、常に自分の信じる道を邁進する強さを感じます。まさに『プレイス・イン・ザ・ハート』。心を常に正しい場所に置いて、人からの評価よりも、自分自身が「やりたいことが出来ているか?」が大事。それを“頑固”とか、“思い込みが激しい”と言いたい人もいると思いますが(私)、言いたい人には言わせておいて、わが道を行ってほしいです。

今回の“Help!The映画配給会社”プロジェクトは、皆のそんな心意気を間近で感じられたのが収穫のひとつだと思っています。私が先に逝ったら、ぜひ葬式では、出棺の際に4人にお棺を持ってもらいたいです。足腰鍛えといてください。


*連載「Histoire De Zazie Films」は全話を下記マガジンにまとめています。

ザジフィルムズ配信見放題パック
ザジフィルムズ公式HP
ザジフィルムズ公式Twitter


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?