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Histoire De Zazie Films

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会社の成り立ちを振り返る、連載記事『Histoire de Zazie Films』。
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Histoire De Zazie Films 連載㉑    プレイス・イン・ザ・ハート、あるいは、イーストウィックの魔女たち

------------------ 前回の記事はこちら☞ 連載⑳ ニュー・シネマ・パラダイス ---------------- 20回に渡って書き綴ってきた“Histoire De Zazie Films”。厳密には時系列ではなかったですが、それでもだいたい会社の設立前夜から設立の1989年、そして現在に至る31年の歩みをひと通り振り返ることが出来ました。途中から“終活”をしているような気分にもなりつつ(笑)、自分自身も今までの道のりを整理できた気がします。ひと月の間、

Histoire De Zazie Films 連載⑳    ニュー・シネマ・パラダイス、あるいは、そこにお客様はいるのか?

---------------- 前回の記事はこちら☞ 連載⑲わたしは、幸福(フェリシテ) ---------------- 今回の20回を区切りに最終回にしようと思っていたのですが、そういえば特集上映、レトロスペクティブについて、ジャック・タチフィルムフェスティバルの回以降、ほとんど言及していないことに思い至り、最終回前に1回追加です。先日行われた横浜ジャック&ベティでのトークショーでも、「どうやってリバイバル上映作を決めているのか?」というようなご質問も頂きました。何を

Histoire De Zazie Films 連載⑲    わたしは、幸福(フェリシテ)、あるいは、アニエス・ヴァルダ監督との別れ

---------------- 前回の記事はこちら☞ 連載⑱趣味の問題 ---------------- ザジフィルムズ、栄光の(笑)31年の歴史を辿る連載も、そろそろ最終回が近くなってきましたので、お約束通りアニエス・ヴァルダ監督についてのお話の続編です。 岩波ホールが今週末から劇場を再開することになり、3月から上映中断を余儀なくされたり、4月以降に予定されていた作品を来年に公開延期にした各配給会社の旧作を、6月13日から“岩波ホールセレクション”と銘打って順次公開し

Histoire De Zazie Films 連載⑱    趣味の問題、あるいは、35周年のイラストは誰にお願いしよう?

------------------ 前回の記事はこちら☞ 連載⑰アジアン・ビート ---------------- 連載4回目でポスターやチラシのビジュアルデザインについて語りました。自分の趣味嗜好をデザインに反映させたくなるのは、それはにんげんだもの、当然の欲求なのですが、ビジュアル作りで大事なのは、どう差し出せば狙ったターゲットの観客の興味を惹くことが出来るのか?ってこと。そこがまず第一なので、自分の“好み”が優先されることは、ほぼありません。 その日々のストレス

Histoire De Zazie Films 連載⑰            アジアン・ビート、あるいは、特定の会社との特定の付き合い(笑)。

---------------- 前回の記事はこちら☞ 連載⑯イタリアは呼んでいる ---------------- 今週末、関東地方は、11日のルシネマ、13日の岩波ホールの再開をもって、ほとんどの封切り館が営業を再開することになります。長かった! 弊社も来る6月27日㈯から、シアター・イメージフォーラムにおいて、ツァイ・ミンリャン監督作『あなたの顔』が公開初日を迎えます。ツァイ・ミンリャン監督の映画を配給するのは初めてですが、長編デビュー作『青春神話』から心酔してきた監

Histoire De Zazie Films 連載⑯           イタリアは呼んでいる、あるいは、最後はなぜかうまくいくイタリア人。

---------------- 前回の記事はこちら☞ 連載⑮欲望の法則 -------------- 社名もフランス映画由来だし、草創期にゴダールを連打したイメージからか、扱っている作品はフランス映画が中心だと思っている方も多いザジフィルムズなのですが、実は海外との取引でここ十数年、一番多いのはイタリアの会社。かつてフェリーニ映画祭を開催した時は、その時点で10作品以上のフェリーニ監督作を扱っていたし(あの頃は、うちも景気が良かった。泣)、ベルトルッチ、ヴィスコンティ、

Histoire De Zazie Films 連載⑮    欲望の法則、あるいは、本編観たくなる予告作りを目指して。

---------------- 前回の記事はこちら☞ 連載⑭マラソンマン -------------- 今回は予告編作りのお話です。 普段映画館で、本編の上映前に何気なく見ている予告編ですが、我々、独立系配給会社が配給する、いわゆるミニシアター系作品に関しては、日本版の予告編が完成して上映されるまでに、配給宣伝スタッフ、予告編のディレクター、そしてメインで上映してくださる劇場の担当者の、何度にも渡る話し合いが行われています。編集は一発OK、ということはほぼ無く、修正に修

Histoire De Zazie Films 連載⑭    マラソンマン、あるいは、蛇の道はヘビ ~>゜)~~~

---------------- 前回の記事はこちら☞ 連載⑬ライトスタッフ -------------- 旧作、新作すべて、今までのザジフィルムズのLINE UPを客観的に眺めてみて、燦然と違和感を放っている作品が何本かありますが、私の中では全部の作品が何の違和感もなく仲良く並んでいます。昨年末配給した『ゾンビ 日本初公開復元版』もそうですし、3年前公開したイタリア映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』も「私がやらなければ!」という謎の使命感に燃えて買い付けた作品です。 で

Histoire De Zazie Films 連載⑬    ライトスタッフ、あるいは、再び人気業種に返り咲きはあるか?

---------------- 前回の記事はこちら☞ 連載⑫カンヌ映画通り -------------- 突然ですが、映画配給会社って一昔前は人気業種だったのをご存知ですか?もちろん今も大手の会社に新卒で就職するのは狭き門なのに変わりはないでしょうが、90年代後半頃はザジのような知名度の低い小さな会社でも、アルバイトを募集すると凄い数の履歴書が送られてきたものです。2003年には、いわゆる月9枠のドラマで「東京ラブ・シネマ」(江口洋介に財前直見!)なんて配給会社を舞

Histoire De Zazie Films 連載⑫    カンヌ映画通り、あるいは、夕飯の献立を考える。

-------------- 前回の記事はこちら☞ 連載⑪H story -------------- なんだか毎回濃い話が多くなってきたので、今回は“箸休め”回ということにしたいと思います。直接、配給宣伝してきた映画から離れて、カンヌ映画祭滞在中の話題です。 コロナが無ければ今頃はカンヌも終わって帰国し、時差ボケも癒えてきた頃でしょうか?会社を設立した翌年の90年から毎年通い続けているので、去年でちょうど30回参加したことになります。5月中旬から下旬にかけて毎年不在だっ

Histoire De Zazie Films 連載⑪    H story、あるいは、「これ、恋だと思う。」

-------------- 前回の記事はこちら☞ 連載⑩雨の午後の降霊祭 -------------- 遂に原田知世さんについて語る回がやってきてしまいました。私を知る人にとっては、「ああ、また始まった」という感じだと思いますが、今回このHistoire De Zazie Filmsを読んで初めてザジフィルムズという会社を認識した方々にとっては、新鮮な話だと思います。たぶん(笑)。 ここはあくまでも会社の歴史を振り返る場所なので、私の知世さんファン歴を語るところではない

Histoire De Zazie Films 連載⑩    雨の午後の降霊祭、あるいは、クソ邦題と呼ばないで。

-------------- 前回の記事はこちら☞ 連載⑨マイ・ライバル -------------- コピーライターではないし、大ヒット映画の後世に残る名コピーを作った実績があるワケではないけど、長年この仕事をしていると「これはイイ!」と、自分で自分を褒めてあげたくなる邦題やキャッチコピーが生まれることがたま~にあります。 『あの頃、君を追いかけた』(‘11)という台湾映画を配給宣伝した際の、“青春は、恥と後悔と初恋で作られる”というキャッチコピーは、後でテレビドラマのエ

Histoire De Zazie Films 連載⑨    マイ・ライバル、あるいは、すばらしき仲間たち。

-------------- 前回の記事はこちら☞ 連載⑧来る -------------- 何だか最終回のような、“大団円”感漂うタイトルですが、連載はまだまだ続きます。 映画配給業界に身を置く方々にとっては、おそらく不思議でも何でもないことなのですが、この業界、同業他社さんは競合相手でありながらも、協力し合う関係。たとえば1本の映画を共同配給という形で役割分担して買付け、公開したり、自社の配給作品の宣伝を、他の配給会社の宣伝スタッフに委託したり。このコラボレーションの

Histoire De Zazie Films 連載⑧    来る、あるいは、来なかった映画について。

-------------- 前回の記事はこちら☞ 連載⑦ハッピー・ゴー・ラッキー -------------- 今回は予告通り、ヒットしなかった映画たちのお話。「誰も知らない」だと、日本のどこかに存在している、ご覧になって、その映画たちを愛して下さっている方に失礼だと思い、改題しました。 映画の初日は、配給会社の人間にとって朝からキリキリと胃が痛くなる日。宣伝が上手く行って、前売り券の売れ行きも好調で「あら?なんだかヒットの予感…」ということも稀にありますが、たいていの