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Histoire De Zazie Films 連載⑪    H story、あるいは、「これ、恋だと思う。」

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前回の記事はこちら☞ 連載⑩雨の午後の降霊祭
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遂に原田知世さんについて語る回がやってきてしまいました。私を知る人にとっては、「ああ、また始まった」という感じだと思いますが、今回このHistoire De Zazie Filmsを読んで初めてザジフィルムズという会社を認識した方々にとっては、新鮮な話だと思います。たぶん(笑)。

ここはあくまでも会社の歴史を振り返る場所なので、私の知世さんファン歴を語るところではないことは重々承知しています。なので出会いについてはサクッと(結局書くんですね…)。82年、テレビドラマ「セーラー服と機関銃」でデビューした際、すでに「この子は誰?」と気にはなっていましたが、本格的に意識し始めたのは(笑)、83年夏、渋谷パンテオンで行われた『時をかける少女』完成披露試写会に当選し、上映前知世さんが登壇し、(おそらく口パクで)主題歌「時をかける少女」を歌うのを見てから。
その衝撃は「雷に打たれた」と表現しても差し支えないほどでした。以来『時をかける少女』は、劇場、テレビ、ビデオ、DVDで何度観たか分かりません。映画が始まると、オープニングの「不思議な星空ぁ~」からずっとぶつぶつ一緒にセリフを言っているあぶない人になってしまいます。

初めてお仕事でお会いしたのは、連載7回目で触れた『幸せになるためのイタリア語講座』の予告篇ナレーションの収録。録音スタジオの自動ドアが開き、知世さんが現れた瞬間は、ほとんど現実感を伴っていませんでした。もちろん何を話したかは全く覚えていません。

再びお仕事をご一緒させて頂くチャンスは、意外に早くやってきました。2004年に制作された竹中直人監督の『サヨナラCOLOR』はその年の湯布院映画祭で上映され、その後東京国際映画祭でも上映されました。が、配給がまだ決まっていないらしい、という噂を耳にしました。幸い、出資している会社さんと仕事上お付き合いがあったので、すぐに「うちでやります!」と立候補させて頂きました。しかしプロデューサーにとって、ザジフィルムズは未知の会社。うちはそれまで邦画の配給をしたこともありません。しかし何とか内覧試写を組んでくれることになり、本編を観せてもらえることになりました。が、その試写室には別の配給会社の面々も。邦画配給の経験も豊富な、中堅配給会社です…。

私の人生の恩人5人を選ぶとしたら、たぶんその中堅配給会社の社長を入れることになるでしょう。私は映画を観終わってダーダーと泣きはらして試写室を後にしたのですが、その中堅配給会社の社長はそんなことはなかったようなのです。そして晴れてザジフィルムズが『サヨナラCOLOR』を配給させて頂けることになったのでした!

サヨナラCOLORメイン

© 近代映画協会/NIKKEN INC/衛星劇場

命がけで宣伝しましたとも!(笑) 正式に配給を担当することが決まってからは、わずか4ヶ月半しか無かったのですが、やれることは全部やりました。パンフレットのプロフィールの原稿を、マネージャーが「詳し過ぎるので、もっと短くしてください」と言ってくることもありました。ご本人と交わした会話は、移動の車中で「クーラー弱めて頂けますか?」「はい!」、控室のドア越しに「お弁当いくつ用意しますか?」「4つお願いします」ぐらいでしたが、それでも私にとっては至福の日々でした。

8月13日お盆直前にユーロスペースで公開された『サヨナラCOLOR』は、初日舞台挨拶はもちろんのこと、11日間連続で全回満席になる大ヒットとなりました。当時渋谷の桜丘にあったユーロスペースさんが、移転のため閉館するまで、13週と2日間のロングラン興行でした。

『サヨナラCOLOR』以降も、知世さんには再び予告編のナレーションをお願いしたり(近々、この連載で語らせて頂く予定のオランダ映画『人生はマラソンだ!』)、デビュー35周年の2017年には、“原田知世映画祭”を企画させて頂いたり、記念ライブで使う映像のアイデアを出させてもらったり、37年前の自分に教えてあげたいようなお手伝いをさせて頂きました。

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が、何度もお会いしているのに、いまだにお会いすると頭が真っ白になってしまう私。何か話さなければ、と焦って、どうでもいいことを延々一人話し続けて、いつも後になって後悔しまくり。そんな時、いつも頭によぎる言葉は「口きけないだけが恋じゃないもの。恋したからしゃべり過ぎることだってあるんだもの。分かってない。梶川さん、ぜんぜん分かってない!」という、『早春物語』のヒロイン瞳のセリフ。客観的に見て、皆に“重症”だと心配されるのも仕方ないと思います。


(『サヨナラCOLOR』 © 近代映画協会/NIKKEN INC/衛星劇場)

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