Histoire De Zazie Films 連載⑫　　　　カンヌ映画通り、あるいは、夕飯の献立を考える。

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なんだか毎回濃い話が多くなってきたので、今回は“箸休め”回ということにしたいと思います。直接、配給宣伝してきた映画から離れて、カンヌ映画祭滞在中の話題です。

コロナが無ければ今頃はカンヌも終わって帰国し、時差ボケも癒えてきた頃でしょうか？会社を設立した翌年の90年から毎年通い続けているので、去年でちょうど30回参加したことになります。5月中旬から下旬にかけて毎年不在だったので、こないだオンライン飲み会で他業種の友人に、「この季節の日本は良い陽気だね～。毎年今頃カンヌにいたから知らなかった～」と無邪気に言ったら、“ケッ”という顔をされました。友達減りますね。

今回のコロナ禍における【Help!The映画配給会社】プロジェクト。“配給会社とは何をやっている会社なのか？”を可視化する、というのも大きな目的なのですが、“配給会社ってこんな仕事してるのかな？”と、ある程度情報をもっている方の中には、もしかして「カンヌ行って、赤絨毯歩いて、美味しいもの食べて、スターと遭遇して」みたいな華やかなことを想像する方もいらっしゃるかもしれません。だから友人は“ケッ”という顔をしたのかもしれません。しかし…。そんなに華やかなものではありません。もちろん、映画祭がそうした華やかな顔を持っているのは否定しません。が、うちのような小さな会社にはほぼ無縁の世界なのです。

カンヌでの私の毎日は、というと、日中はマルシェと呼ばれる映画見本市の会場で各国のセールス会社とミーティングをし、気になった作品を見つけると、スケジュールを調べて試写をする、という流れ。それをほぼ10日間繰り返す、という感じで、試写を観て気に入った作品があれば、その作品を扱っているセールス会社のブースに出向いて、買付けの交渉をします。が、ザジで配給する新作は年に2本がせいぜいなので、雷に打たれるぐらいの（また雷かよ。笑）出会いでないと、なかなか買付け交渉にまでは行きつきません。

その雲をつかむような仕事の合間になにをしているかというと、ザジの場合はクラシック作品の掘り起こし。これも映画見本市の合間に行います。しかしながら先方のセールス会社は、新作を売りに来ているので、たいていの場合、新作よりも単価の低いクラシック作品を、しかも何本かのパッケージではなく、1本で買おうとするなど、ほとんど嫌がらせ行為とみなされます（笑）。嫌な顔をされながら、コツコツとミーティングをこなす。それがザジにとってのカンヌ国際映画祭なのです。

出張経費もバカになりません。最近でこそ、民泊も増え、経費を抑える方法も考えられるようになってきましたが、元々カンヌ映画祭は、ホテルがバカバカしいほど高く、そこそこのレストランは油断すると一人日本円で一万を超えてしまうような店もざら。うちのような弱小が毎晩レストランでシーフードを食べて、ワインのボトルを開けていたら、今頃会社はなくなっていたでしょう。

ではどうしているのか？と言いますと、答えは簡単、自炊です。ここ10数年は毎年同じアパートを借り、そこで私、うちの社員1名、そして外部の方1名の計3名で、合宿生活のような日々を送っているのですが、朝昼晩ほとんどアパートで食べています。始めのうちはストレス発散も兼ねて料理をしていたのですが、だんだん経費削減がメインの目的になり、今や滞在期間10日の間に、外食するのは昼1，2回、夜1回というところ。夜は同業他社の友人たちや、取引先の方々も招いての和食三昧。期間中、米は7，8キロ消費。うちの社員は、毎年滞在後半になると「たまにはパンが食いたい」と贅沢なことを言い出します。

書いてみると何だか楽しそうですが（笑）、これが結構大変。夕方ミーティングをしていたり、試写をしたりしていると、だんだん時間が気になってきて、「夕飯何にしようかしら？生姜焼き？肉じゃが？」、などと献立を考え、「帰りにスーパーに寄ってアレ買わなきゃ、コレ買わなきゃ」と、ほぼお母さんな状況に陥ります。

アパートで自炊している方は他にもたくさんいて（ここまで徹底している会社はないと思いますが）、映画祭が終わりに近づく頃には、アパート自炊派の方々と余った食材を持ち寄って“食材一掃パーティ”を行うのも毎年恒例行事になっています。やっぱなんだか楽しそうです…。来年もカンヌに行ってご飯が作れるよう、コロナに負けずに頑張って仕事しなきゃ。

※中段の餃子の写真は、弊社・餃子職人O作成のカンヌ餃子。

※下段は“食材一掃パーティ”の一部。

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